今号は、中小企業だからこそ実現できる〝夢の力〟で従業員の活力を引き出している事例をご紹介します。
一人一人に目標を持ってもらう
群馬県高崎市に、コイルスプリング・板スプリングなどの企画・製造・販売を行う中里スプリング製作所があります。
現社長の中里良一さんが家業を継ぐために入社したのは昭和51年、24歳のときでした。しかし、特定メーカーの下請けとして、15人の従業員が夢を持たずによどんだ雰囲気の中で作業していることにがくぜんとしたそうです。
儲かるか・儲からないか、の軸だけで経営をするから卑屈になる。それに代わって好きか・嫌いか、を新機軸として打ち出しました。好きなものこそ、人は全力を傾けることができ、充実した日々を送れるはず。目指したのは「日本一楽しい町工場」でした。
中里さんは「47都道府県の企業と取引する」ことを目標に掲げます。従業員は半信半疑でしたが、1人の営業マンも雇わずに達成することを目指しました。
人的営業がない分、それを補う魅力が必要です。〝全国制覇〟を合言葉に従業員の力を結集し、新たな取り組みを開始しました。顧客の幅広いニーズに対応すべく6830種類のバネを規格化し、1~800万個のオーダーにも対応。午後3時までの注文は当日出荷の即納体制を構築したのです。
これらが結実し、一昨年に全国制覇を達成。当初10数社しかなかった取引先は、約1600社にまで拡大しました。次なる目標は、全国810の市・区の企業との取引だそうです。
お互いの夢を認識し達成に向けて切瑳琢磨
また、独自の取り組みに「夢会議」があります。月に1回、全社員が自分の夢を自由に語り、その道筋を具体的に描いた夢年表を作成するのです。21人の全社員がお互いの夢を認識し、達成に向けて切磋琢磨する社風が息づいています。
他にも、ご褒美制度として年間最優秀社員は、①嫌いな取引先を切る権利②会社の材料・設備を使って好きなものをつくる権利、が与えられ、どちらか一方を行使することができます。①は特異に感じられますが、下請けであるが故に従業員を傷つけたくないとの中里社長のポリシーがベースとなっています。
社員が夢を持ち、仕事を通じて成長を実感できる機会を経営者が惜しみなく与えれば、人の能力は大きく開花することを教えてくれる事例です。
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