元気が出る中小企業経営 “対応力”で勝負! ~チャレンジ精神で存在価値を発揮~

山内致雄社長(右)と後継者の山内理之業務課長。手にしているのは、自社の経営理念などを記したクレドカード

今号は、中小企業ならではの強みを生かして価値を生み出している事例をご紹介します。

小回りを利かせて競合の大手企業に対抗

静岡県浜松市に、自動車・バイクの試験装置を製造する新日本特機という企業があります。同社が扱うのは、ブレーキやトランスミッションなど、駆動関連のデータを計測する試験装置が中心です。自動車・バイクメーカーの試験目的・用途に合わせた測定装置など、独自の設計・製造のノウハウが必要とされます。

この業界はニッチ市場であるものの、設備投資の負担や技術力のある人材確保など相応の企業体力を必要とするため、競合相手には大手企業も存在します。試験装置という製品の特質上、顧客のニーズもさまざまで、個別生産が中心です。細かな仕様の変更や短納期への対応など、手間の掛かる仕事が多いのも特徴といえます。

同社は、大手の競合企業があまりやらないような案件の依頼に対しても、小回りを利かせた「対応力」が強みです。条件の厳しい難易度の高い注文に対してもチャレンジ精神を発揮し、地道に対応してきました。これが独自のノウハウ蓄積につながり、同社の45年にわたる業歴を支えてきたのです。

浜松市を中心とした県西部地方では〝未知の事柄にも怯まず挑む〟気概を「やらまいか精神」と呼ぶそうです。同社はその典型例といえるでしょう。

一方、専門性の高い業種であるため、設計・加工・組み立て・調整・サービスなど、ライン部門は多岐にわたります。そのため自部署の業務に特化しすぎて、部署間の意思疎通が弱くなる傾向がありました。そこで、業務課長で山内致雄社長の長男・理之さんは後継者としてテコ入れを図るべく、部課長職の全員で徹底的に社内研修や討論を実施。企業の根本的な存在価値を探っています。

一人一人が全社的な視点を持って行動

自社が提供するコア・バリューとして、納入先に対しては〝信頼〟、エンドユーザーには〝快適な車社会〟を掲げ、その実現に向けた5つの行動基準を策定。全社的なベクトル合わせを行いました。これらは「SNTクレド」という小型のカードに落とし込まれ、92人の全社員がこのカードを保持しています。専門性の高い企業に陥りがちな〝セクショナリズム〟からの脱却を図っているのです。

経営資源上は不利な中小企業でも、顧客志向のチャレンジ精神と対応力をフルに発揮すれば、大手との差別化を図れることを教えてくれる事例です。

坂本 篤彦(さかもと・あつひこ) 昭和39年東京都生まれ。平成3年東京商工会議所に入所。退職後にビジネス・コア・コンサルティングを設立し、代表に就任。創業・ベンチャーの事業展開支援など、実践型のコンサルティングを行っている。また、中小企業大学校で教壇に立つ傍ら、北は北海道から南は沖縄まで、年間約200回の講演・セミナーを精力的にこなす。

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