このコーナーでは、下請取引に関する「かけこみ寺」に相談があった事例を参考に、中小企業の取引上のトラブルや疑問点の解決の基本的な考え方や留意点を解説します。今回は「下請代金支払遅延等防止法(下請法)関係」の「受入検査と返品」についての相談事例をご紹介します。
「返品」ルールに注意を
~受入検査省略時は不可~
Q.A社(資本金1億円)は、B社(資本金100億円)から製品の部品の製造を受託しています。A社が製造する部品には、B社が全数受入検査を実施するものと、検査が省略されているものと2種類があります。B社は、受入検査では発見できなかった部品の瑕疵(かし)について、納品から1年を経過しても返品してきます。また、受入検査を省略しているものについても同様に返品してきます。B社のこのような行為に対してどのように対応すればよいのでしょうか。
A.A社とB社の取引は、「製造委託」に該当し、B社の資本金は3億円を超え、A社の資本金は3億円以下(1億円)であることから下請法の資本金基準(3億円基準)を満たしており、下請法が適用されます。B社の行為が下請法の「返品の禁止」(法4条1項4号)に該当するかが問題となります。返品することのできる期間は、B社が受け入れ検査を行っている場合、直ちに発見できない瑕疵(かし)について、その瑕疵が下請事業者に責任がある場合は受領後6カ月以内であれば返品することができます。ただし、一般消費者に対して品質保証期間を定めている場合は、その保証期間に応じて最長1年以内であれば返品することを認めています。B社がたとえ一般消費者に対して1年を超える品質保証期間を定めていたとしても、最長1年しか返品は認められないので、いずれにしても下請法の「返品の禁止」(法4条1項4号)に違反します。
次に、受入検査を省略した部品については、受入検査を放棄したとみなされ、返品は認められません。このため、受入検査を省略した部品については、いかなる返品も許されません。従って、この点においてもB社は下請法の「返品の禁止」に違反することになります。B社に対し、このような行為は、下請法に違反することになるので、見直してもらうよう交渉してはいかがでしょうか。 〈留意点〉A社としては、まず、B社に対して下請法上許されない返品であることを告げることが考えられます。しかし、直接交渉することが難しい場合や交渉に応じてもらえない場合には、下請かけこみ寺に相談して下さい。
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