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テーマ別企業事例 グルメ・特産品・サービス… 地域の〝イチ押し〟でインバウンドを呼び込め!

事例2 ラグビーW杯×熊谷うどんで観光地・埼玉の火付け役にトライ!

熊谷小麦産業クラスター研究会(埼玉県熊谷市)

本州トップレベルの作付面積を誇る熊谷市の小麦。主な栽培品種の農林61号、あやひかりがうどんに適した中力粉になることに着目し、熊谷うどんを開発した

映画『翔んで埼玉』の大ヒットや、ラグビーワールドカップ2019TM(以下、W杯)の開催など、埼玉が勢いづいている。W杯の開催地の一つ、熊谷市は国内でも指折りの小麦の産地で「国産麦の聖地」とも呼ばれ、うどん生産量全国2位という「うどん王国」埼玉の旗振り役。ご当地グルメ「熊谷うどん」を国内外にPRするチャンスと捉え、地域を盛り上げている。うどんとラグビーという接点のない二つを1本の麺、いや線に結びつけ、インバウンド誘致に打って出る。

「熊谷うどん」を開発し地元ブランドに押し上げる

今年11月16日、17日の2日間、「第9回全国ご当地うどんサミット」(以下、サミット)が埼玉県熊谷市で開催される。スローガンは、「麺for ALL,ALL for 麺」。説明するのも無粋だが、ラグビーをあまり知らない人でも耳にしたことがあるであろう「ONE for ALL,ALL for ONE」になぞらえたものだ。

2017年に同市でうどんサミットが開催されたときから、すでにW杯を念頭に展開してきたのだ。サミットの実行委員長を務める熊谷商工会議所副会頭で松本米穀精麦の代表取締役社長、松本邦義さんはサミット開催に向けてこう語る。

「開催地は持ち回りで3年ごとに変わります。11年に滋賀県東近江市で始まり、愛知県蒲郡市、そして熊谷市で、今年が3年目の集大成であり、ラグビーW杯開催年です。次の開催地にノックオンせずパスできるように全力を尽くしたい」と意気込む。そしてこのサミット誘致を導いたのが、松本さんが会長を務める地元有志で結成した「熊谷小麦産業クラスター研究会」だ。会の発足は十数年前にさかのぼり、地元の若手数人で集っては、まちおこしができないかと地元の特産品や歴史を掘り起こしていったのが始まりだ。その時、目に留まったのが権田愛三(1850〜1928年)の名だ。麦生産の技術改良に成功し、国からも推奨されて全国の農家へと技術が広がり、国産小麦の技術改革を導いた、〝麦翁〟と呼ばれた地元の英雄である。熊谷市の小麦収穫量は現在も本州トップレベルで、うどん消費量も多い。同会は行政や流通業、生産者や麺加工業者、そして消費者を巻き込んでうどんの研究を重ねた。そして、05年に大里町、妻沼町、07年に江南町が同市に編入され、県北部初の20万人都市となったのを機に、JAくまがやの協力を得られたことで研究開発に弾みがつく。同年、熊谷産小麦を使った「熊谷うどん」が誕生した。

うどんやラグビーで前例のない人の流れを生む

同会では、熊谷うどんの普及に向けて三つの目標を掲げている。①地元飲食店への普及、②土産品の開発、③学校給食への導入。①の目標も今では熊谷うどんの赤いのぼり旗を立てる参加店舗や土産品のうどんを販売する店舗は約30店を数え、②③も実現させている。

市外での活動も活発だ。全国ご当地うどんサミットをはじめ、11年から秋田県で開催されている全国まるごとうどんエキスポ、香川県の全国年明けうどん大会に参加し、以来、熊谷うどんを全国に発信し続けている。

「それぞれ毎年10月、11月、12月にあるので、〝秋の三連戦〟と呼んでいます」と笑う。サミットの開催地に指名されたのも、こうした市内外への精力的な取り組みがあってこそだといえる。

算段もあった。同時期にW杯の開催地が熊谷市に決まり、会場もサミットの開催地である熊谷スポーツ文化公園内の県営熊谷ラグビー場となる。W杯時の来場者を想定した動線や人員、会場整備など、サミットはW杯のロールモデルに十分なり得る。W杯と関連付けたことで、熊谷商工会議所、熊谷市観光協会、熊谷市、そして埼玉県などの協力を得やすかったのも大きいという。サミットを軸にまちが一つにまとまった。

こうしてうどんとラグビーという接点のない二つが融合し、まちに人を呼び込む機運が生まれた。ここで意識し始めたのがインバウンドだ。

「トモダチガイド」で地元と観光客を循環させる

サミットでは外国人旅行者対象のうどん打ち教室を開いた。参加者は約100人に達し、連日好評を博す。昨年は、W杯時に熊谷で試合を行う6カ国のうち2カ国の駐日大使を招待し、「アルゼンチン賞」など国別のうどん賞を創設して、ラグビーとの接点強化と、海外への「UDON」の知名度向上を図った。うどんとラグビーの二大旋風で、まちに新たな人の流れを生み出していった。

「埼玉県は観光都市ではありませんし、なかでも熊谷市は川越や秩父などに比べて知名度はまだまだです。しかしそんな熊谷市が誇れるものの一つに、ボランティアが活発であることが挙げられます。サミットでも学生を含めて800人も参加してくれました。それに訪日外国人旅行者が埼玉に求める食べ物は断トツでうどんです。この機運と熊谷気質を生かしたインバウンド対策を目下進めているところです」と松本さんは語る。

次なる一手、それが観光協会と進める「トモダチガイド」だ。神奈川県にあるベンチャー企業、Huber.と提携したガイドマッチングサービスで、ローカルな生活者目線からガイドと二人一組で海外観光客を案内するというもの。資格不要で誰もがガイドになれ、地元で話題のスポットを巡るモデルコースをWeb公開するなど、新たな観光資源の発掘や、インバウンドを軸にしたまちの循環が期待できる。サミット、W杯を機に持続可能なインバウンドの展開へ。熊谷は観光地・埼玉を創出する風雲児になり得る勢いだ。

会社データ

団体名:熊谷小麦産業クラスター研究会(くまがやこむぎさんぎょうくらすたーけんきゅうかい)

所在地:埼玉県熊谷市宮町2-39 熊谷商工会議所内

電話:048-521-4600

代表者:松本邦義(松本米穀精麦)

会員:15人

HP:https://www.udon-summit-kumagaya.com/

※月刊石垣2019年6月号に掲載された記事です。

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