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事例4 “訪日外国人の役に立ちたい”という姿勢がリピーターを呼ぶ

唐津ボランティアガイド(佐賀県唐津市)

今年はクルーズ船が12隻入港予定で、KVGにとって忙しい年になりそうだ

「唐津ボランティアガイド(以下KVG)」は、佐賀県唐津市を訪れる外国人旅行者に対して、無償で通訳案内などを行っている団体だ。1988年の設立当初から、「九州の小さなまちを旅先に選んでくれたことへの感謝の気持ち」で活動を展開し、年間550人余りの外国人を接遇。今では同団体を頼りに訪れる観光客も多い。

せっかく来ても言葉が通じなくては楽しめない

唐津城や虹の松原などの名所を擁し、夏には「国際渓流滝登り」、秋にはユネスコ無形文化遺産にも登録された「唐津くんち」が開催されるなど、観光資源に恵まれた唐津市。近年、それらを強みにインバウンド誘致に力を入れている。しかし、そのはるか前の1988年、日本語に困っている外国人旅行者のサポートを目的に設立されたのが、KVGだ。

「きっかけは、唐津市が西九州国際観光ルートに指定されて、外国からの観光客や企業訪問の増加が予想されたことです。わざわざ九州の小さなまちに来て、言葉が通じないのは不便だろうと。そこで通訳のボランティア団体を立ち上げるということになったんです」と、KVGの三代目会長を務めた田中丸昌子さんは説明する。

集まった創始メンバーは、戦争体験を経て通訳の仕事に就いた初代会長をはじめ、旅館のおかみ、英語教室の先生、専業主婦など、年齢も職業もバラバラの7人だ。組織化するにあたって唐津商工会議所内に事務局を置き、市報を通じて会員を募集した。特に資格は問わず、「状況に応じて簡単な通訳ができること」を条件にしたところ、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、オランダ語ができるという37人が集まり、活動を開始した。

“小さな親切心”がモチベーション

KVGに大きな活躍の場が訪れたのは、発足翌年に同市で開催されたヨットの世界大会だった。15カ国から140人が参加するビッグイベントを成功させるため、通訳としてサポートすることになった。「来日する外国人向けに英語のパンフレットを作成したり、宿泊施設の手配を手伝ったり、ヨットハーバーで飲み物を提供したり……。人数が多く滞在期間も長かったので大変でしたが、いい勉強になりました」(田中丸さん)

その後も、来港したクルーズ船への市内観光案内や、祭りやイベントに来る外国人の通訳案内、国際交流活動の支援など、年に5~6回のペースで活動機会があった。依頼は基本的に事務局に入り、客の要望に合わせて接遇する。会員に活動費の補助はなく、団体からの謝礼はあるものの、個人客から受け取るのは交通費や昼食代などの実費のみ。まさにボランティアだ。

「われわれは依頼を受けて出動するので、コンスタントに出番があるわけではありません。活動のない時期が続いて、会員のモチベーションが下がったこともありましたが、それでも会を解散しようと考えたことはないですね」とKVGで長年事務局長を務めてきた吉田伸二さんは振り返る。

彼らを支えているのは、純粋に訪日外国人の役に立ちたいという“小さな親切心”だ。それをモチベーションに、月1回の研修会を行いながら、市内の名所や特産品などをどう説明するか、日本語のシナリオを英訳してガイドスキルを高めたり、唐津くんちに関する説明書きを4カ国語に翻訳したり、それを基に観光パンフレットを作成するなど研さんを積んだ。

まちを訪れた人への感動の懸け橋に

2009年以降、ヨットの世界大会が再び開催されたことや、東アジアからのインバウンドが増えてきたことで、活躍の場が増えていった。彼らのたゆみない活動は、日本政府観光局(JNTO)が推進する「善意通訳普及運動」で、度々「優良善意通訳(グッドウィルガイド)」に認定されたほか、県や市などからも表彰されている。

近年、インバウンド誘致において“おもてなし”は一つのキーワードになっているが、彼らは首をかしげる。

「外国人旅行者はおもてなしがあるから来るわけではないし、もてなしを受けようと来る人もいないと考えています。もてなしの姿勢は当たり前で、ただ、まちに来た人に感動してもらう懸け橋になろうとしているだけ。それが結果として心地よく感じてもらえているのではないでしょうか」と、この春、四代目会長に就任した古賀博文さんは分析する。実際、2度目のヨット世界大会の開催は、初回のKVGの接遇に選手たちが感激して実現したともいわれている。今ではKVGのガイドを指名してくるリピーターも多い。

それにしても30年もの間、民間の通訳ボランティア団体として活動が続いてきた秘訣は何なのか。 「よくも悪くも“緩い”からじゃないですか。皆、唐津が大好きなので、わがまちに来た外国人を案内するのが楽しくてやっているんです」と田中丸さんは振り返り、こう続ける。「そして、事務局がしっかりしていること。普通、無償でガイドをするというと警戒されますが、商工会議所が窓口という信用があることが大きいですね」

近年、県の誘致活動が実り、唐津港に600人規模のクルーズ船が入港するようになった。博多港ほど大きな船は接岸できないが、小型船は旅行コストが高い分、客も富裕層が多い。しかし、基本的に船に宿泊するため、まちの滞在時間が短く、あまりまちなかで消費してくれないことが課題だ。

「今後は富裕層の好む唐津焼などのガイド技術に磨きをかけて、次は個人旅行で再訪してもらえるようにしていきたい」と古賀さんは今後の展望を語った。

会社データ

団体名:唐津ボランティアガイド(からつぼらんてぃあがいど)

所在地:佐賀県唐津市大名小路1-54 唐津商工会議所内

電話:0955-72-5141

代表者:古賀博文

会員数:75人

※月刊石垣2019年6月号に掲載された記事です。

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