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企業の力になる 検定試験 vol.5 簿記から受けた感動を伝えたい

芸能文化会計財団 理事長 山田 真哉さん

1976年、兵庫県生まれ。公認会計士・税理士。160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』をはじめ、『女子大生会計士の事件簿』シリーズなど会計関連の著書多数。2011年、芸能界専門で会計・税務支援を行う一般財団法人芸能文化会計財団理事長に就任。  

「今」を理解するために必要

大学で日本史を専攻する傍ら、予備校で現代文や古典を教えていました。卒業してから、簿記をはじめ会計や法律、経営の勉強を始めて、公認会計士の試験に合格しました。

簿記は、数字が出てくるので数学のイメージがあるかもしれませんが、むしろ歴史に近いと思います。資本と負債を足したものが資産であり、そこから費用を賄い、収益を生んで資本を蓄積するという流れは、因果関係がつながったものであり、これは歴史の作業と同じです。今の世の中を理解するためには歴史を知る必要があるように、現代の経済を知るためには簿記を学ぶ必要があります。

「簿記を知らなくても財務諸表は読める」という声もありますが、それでは本当に理解したとは言えません。

サッカーに置き換えると、戦術を学ばなくてもボールを蹴ってゴールすることはできますが、戦術を知っていればより良いプレーができますよね。

一番便利なモノサシ

ルネサンス期(14世紀末~16世紀初頭)に簿記が生まれ、それが発展して会計になり、現代の資本主義経済につながっています。簿記の誕生によって、それまでの物々交換の時代から、お金の貸し借りが可能な貨幣経済に移ったのです。

簿記は経済の基礎であり、文字に匹敵する大発明だと思います。〈国民所得=消費+投資〉という計算は、簿記の基本である〈資産=負債+資本〉の応用です。世の中のあらゆる問題は、簿記を使って解決できます。

言い換えれば、簿記を使うことのできない問題が、未解決の課題になっているわけです。例えば、環境問題は、温暖化によって「将来どのような影響が発生するか」が貨幣に換算しきれないために、具体的な対応が決まらず解決できないのです。

このように、簿記は非常に重要な役割を果たしているのですが、簿記の価値を世の中に発信している方はあまりいらっしゃいません。私が簿記や会計をテーマに本を書く最大の理由は、簿記のすごさ、素晴らしさから受けた感動をお伝えしたいからです。

せっかく簿記を学んだら、会計ソフトを使うだけではなくて、「世の中を見るための一番便利なモノサシ」として使っていただきたいと思います。

簿記の問題をつくる方や教える方が、簿記が生まれた経緯など歴史を踏まえていただくと、興味を持って学ぶ人が増えるのではないでしょうか。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』をはじめ、これまで私が書いた本の読者の皆さんには、会計に興味を持っていただけたのではないかと思いますが、会計は簿記を発展させたものです。今後は「簿記は経済や会計の基礎」であることを、メディアを通して面白おかしく伝えたいですね。

簿記のことをまったくご存じない方に発信するのは難しく、今はまだ道半ばですが、いつか必ず「簿記がいかにすごいか」をお伝えしたいと思います。

ビジネスの視界が広がる

簿記は「技術」だと考えている方が多いと思います。私自身、2級を取るまでは簿記の神髄を理解していたわけではなく、パズルのように捉えていました。しかし、簿記は本来、物事の根本についての考え方、哲学なのです。

大切なことは、資格を取るための勉強ではなく、簿記の考え方を身に付けることです。そうすれば簿記の勉強は楽しくなりますし、いつか必ず、簿記というシステムの「すごさ」を実感する時が来ます。

社会人であれば、仕事の多くは、「収益を増やすため」か「費用を減らすため」のいずれかであり、まさに簿記の世界です。簿記を学ぶと自分の仕事の見え方が大きく変わります。

よく、「簿記を勉強すると経済のニュースがわかるようになる」と言われるのは、どのニュースも、「収益が伸びた」「費用がかさんだ」など、資産、負債、収益、費用、資本という、簿記の5つの要素で分類できるからです。これらの要素と貸借対照表、損益計算書を理解すれば、もやもやしていたビジネスの世界の視界が、大きく開けてきます。この感動を、ぜひ大勢の方々に味わっていただきたいと思います。

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