当社は創業以来、江戸時代から続いている伝統産業「伊勢木綿」(織物)を製造しています。国内最高級の純綿糸を、そして明治時代から受け継がれる豊田自動織機を使用し、当時と変わらぬ製法です。
伊勢木綿はハレの日用ではなく普段着の着物・庶民の日常着として愛用されてきました。しかしながら、戦後、化学繊維の発展や着物文化の変化を受けて、伊勢木綿の需要は激減。現在では、伊勢木綿の作り手は当社一社のみとなりました。
当社も売り上げがピーク時の半分以下にまで落ち込み、言葉では言い表せないほど大変厳しい状況もありました。そんなつらいときも見捨てることなく、温かく手を差し伸べてくれたのが、津商工会議所です。その時その時の当社の経営状況に応じた支援はありがたいです。
伊勢木綿の生地は、綿とは思えないほど温かく、しわになりにくいのです。伝統的で美しい縞模様や格子模様が特徴で、洗えば洗うほど風合いが出てきます。当社では、伊勢木綿の商標を登録し、類似品の防止と品質の保持に努めています。三重県の指定伝統工芸品、地域資源にも登録されています。でもだからといって、飾っておくだけでは意味がなく、使ってもらってなんぼだと思っています。 また、「まちかど博物館」として展示・公開し、文化に触れる機会を提供しています。臨場感あふれる織機の動きや職人の技、その背景にあるストーリーを多くの人に味わってもらい、日本のモノづくりのすばらしさを伝えていきたいです。
伝統工芸が見直されるとともに、平成25年に行われた伊勢神宮式年遷宮などを追い風に、受注は増加傾向にあります。最近は雑誌や通販サイトでも注目されるようになりました。伝統工芸に新たなデザインなどを加えることで、新規の引き合いにもつながっています。自分たちのテイストで本当によいものをつくり続けていきたい――。今後は海外展開も視野に入れていきたいと考えています。
会社データ
社名:臼井織布株式会社
代表取締役:臼井 成生氏
所在地:三重県津市一身田大古曽67
電話:059-232-2022
※月刊石垣2017年3月号に掲載された記事です。
担当者からひと言
ご相談は最寄りの商工会議所までお気軽にどうぞ!
社長の臼井さまとのお付き合いは古く、私どもの先輩経営指導員から脈々と引き継がれている支援先です。バブル崩壊、リーマンショックなど厳しい経営環境の中で、繊維産業を守り続けることは容易ではなく、ご苦労もあったと伺っております。津商工会議所としてはそういった状況に寄り添い、長年、金融、施策活用、販路開拓といった幅広い支援を行ってきました。
近年では、伊勢神宮式年遷宮や伊勢志摩サミット効果もあり、伊勢木綿を使ったコラボ商品が数多く作られるようになりました。当所では、平成27年7月に認定された経営発達支援計画に基づく伴走型支援を加速させた計画認定の支援、補助金制度活用など、今後も臼井社長を応援していきたいと思います。
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