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テーマ別企業事例 特集1 新たなビジネスを生み出すもうかる農商工連携

高齢化や人手不足に悩む日本の農業だが、品質や安全性など国産農産物ヘの信頼性は高い。地域の〝農〟と連携することで、お互いの強みを生かしながら新たなビジネスを展開する地元企業の成長戦略に迫った。

印刷会社が契約農家の米を売る工程管理と土壌改良で相互に刺激

秋田印刷製本 秋田県秋田市

米作農家の伊藤巧一さんが作る「フルーティー米」の収 穫風景。廃棄されるリンゴと柿を肥料として利用している。米の袋を開けるとフルーティーな香りが広がる

印刷会社と農家が「農商工連携」して秋田県のブランド米「あきたこまち」を売る。一見、米の生産とパッケージの印刷という農と工の役割分担に思えるが、このケースでは印刷会社が通信販売を利用した商の役割まで担っている。

友人農家からの米の購入話をプロジェクトに昇華

秋田市の秋田印刷製本はビジネスフォーム(事務処理用の書式の決まった帳票)印刷では、県内一といわれる設備と技術を持ち、自治体の顧客も多かった。ところが県が積極的に推進した平成の大合併により、69市町村から、平成18年には25市町村へ大きく減ったことで、同社も多くの優良顧客を失ってしまった。 そのころ、同社社長の大門一平さんは20年来の友人で米作農家の伊藤巧一さんから「米を会社で買ってくれないか」と相談を受けた。減反と買い取り価格の下落により、厳しい状況に追い込まれていたためだ。同じような境遇の中で独自の販路拡大を目指す友人に共鳴した大門さんは、会社で米を買っても先が続かないと考え、「一緒に売っていこう」と商の部分へ踏み込んだ提案をした。それはなぜか。大門さんは「商品を売るためのパンフレットを印刷するだけでは競合他社との価格競争にさらされますが、商品の販売支援まで行えば価格競争が起きない」と説明する。 連携の話は19年から動き出し、最初は「知り合いの社長たちに試験販売をして反応を見ました。すると一様にうまいと言ってくれたのです」。米の販売には地元農協との兼ね合いもあったが、折しも20年7月に農商工等連携促進法が施行されたことで環境が整った。早速、社内に米プロジェクトチームを設置して、少量販売に向けた企画の立案とパッケージの開発に着手した。なぜ少量販売なのかと問うと、スーパーで販売されている米は5㎏袋と10㎏袋が中心だが、高齢者などが持ち帰るには重すぎるという声があった。また、東京と仙台で4回実施したアンケートの結果、米に対する評価は「おいしい」だったが、買いたいではなく、「もらったらうれしい」という回答が多かったのだという。「そこで、まず米をギフトとして販売する方法を考えたのです」と、大門さんは当時を振り返る。 21年になるとブルーを基調とした紙筒のパッケージが完成した。1本に2合ずつ真空パックした米が3個入る。筒ごと冷蔵庫の飲料水ポケットに入るので新鮮なまま保存できる。この筒を詰め合わせた「あきたこまちセット」を販売したところ、大きな反響を呼んだ。 「需要はある」そう判断した大門さんは22年、伊藤さんと共同で農商工等連携事業の事業計画を東北経済産業局へ申請し、認定された。事業計画名は「包装開発と地元農家米の栽培管理により高付加価値化した『単一農家米』の販路拡大」で、県内では7件目の認定だった。認定基準は①農林漁業者と中小企業者の有機的連携、②お互いの経営資源の有効活用、③新商品・新サービスの開発等を行う事業、④お互いの経営改善が実現することだが、先の計画名に、その全てが盛り込まれていた。

自己流の農業に品質管理を取り入れる

しかし農家との関係が深まるにつれ、大門さんは大きな衝撃を受ける。「製造業の私たちにとって品質・工程管理は当たり前です。農家も米を作る製造業なのだから徹底した管理を行っていると考えていたが、全然違った」。農協に言われるがまま肥料を与え、農薬をまき……という勉強不足の農家もあった。大門さんは、このような農家と企業の商品に対する姿勢の違いを、農商工連携を計画する上での注意点として挙げている。 農商工連携プロジェクトに協力している河辺・雄和地区の5軒の契約農家は前向きだったが「それでも最初のうちは手の内を明かしたがらず、情報交換をしないのです」。それほど農家は自分のやり方にこだわりを持っていた。しかし大門さんが中心となり勉強会を重ねるうちに、各農家の姿勢が変わってきた。農林水産省が農業の改善活動として取り組む「農業生産工程管理」に興味を示したり、栽培方法の改善や土壌改良に取り組んだ。「土壌改良には長い時間がかかるのですぐには結果が出ませんが、より高品質の米が生産されるようになるはずです」。5軒が生産する化学肥料未使用・減農薬で天日干しした特別栽培米・あきたこまちの目標は、魚沼産『こしひかり』のようなブランド化だ。

一つの連携事業から新ビジネスが生まれる

同社が取り組んだ一連のプロジェクトは、社員にどのような好影響を与えたのだろう。 社員教育の一環として農作業の手伝いを取り入れたことで、商品に対する知識・愛着が深まった。プロジェクトチームの人員を定期的に交代させて全部署の社員に経験させることで、「商品」や「販促」に対する知識が深まった。それは本業の印刷物の制作に反映されている。 販売ルートは主にネット・通信販売である。商品戦略の基本は、「米へのこだわり」だ。消費者が秋田に抱く県産品のイメージは「きりたんぽ」「稲庭うどん」「いぶりがっこ」なので、米と組み合わせてギフト商品とした。続いて秋田の日本酒を扱い、アレルゲンのない米粉麺や県内のパティシエに依頼して米粉スイーツも完成させた。これらの商品を扱う販売事業部(通販部門)の社員から「アンテナショップが欲しい」という声が出ているため、10月をめどに市内に取扱商品を展示したカフェをオープンする予定だ。新ブランドを立ち上げる計画もある。そして来春、自社で企画した日本酒の販売にも乗り出す。 「このように一つのアクションが次につながっていることが農商工連携が長続きしている理由です。それに来春販売を開始する日本酒には自社でデザインしたラベルを貼ります。その評価が楽しみですね。好評価をいただければ、酒造会社に提案できますから」 同じ時期、通販部門が独立して新会社に移る。「ようやくここまできました」という大門さんの次の仕事は、農商工連携から生まれた事業を、同社グループの柱に育てることだ。

会社データ

社名:秋田印刷製本株式会社

所在地:秋田県秋田市御所野湯本2-1-9

電話:018-839-7554

HP:http://www.akitainsatu.co.jp

代表者:代表取締役社長 大門一平

従業員:51人

栽培農家との連携深め世界市場を目指す

ルミエール 山梨県笛吹市

ルミエールワイナリーショップでは、ワインを試飲して選ぶことができる。ショップ限定ワインが並ぶこともあるため、定期的に訪れるファンも多い

ワインづくりには、醸造用ブドウの栽培が欠かせない。全量を自社栽培するワイナリーもあるが、多くは契約農家が育てたブドウを使用する。つまりワインづくりの分野では、昔から、それも広範囲な地域で農商工連携が当たり前に行われてきた。

数々のKOJの活動が関係者に自信を与えた

山梨県笛吹市に本社とワイナリーを置くルミエールは、降矢醸造所として明治18年に創業した。県内で最も古いワイナリーの一つであり、ワイン生産者と農家の農商工連携は130年を超える歴史を持つ。木田茂樹さんは創業120周年を迎えた平成17年に社長に就任、現在は山梨県ワイン酒造協同組合理事長でもある。 県内のワイン生産者と農家の長い連携の歴史は、常に順調だったというわけではない。例えば10年ごろに起こったワインブームの後、ワイン生産者と農家は過剰在庫・栽培という問題を抱えた。しかし、それを教訓として受け止める絆の強さを発揮、ブームに左右されない高品質なワインづくりへと一致団結する。 その一環として15年から国産ワインコンクール(27年から日本ワインコンクールに改称)を開催したり、関係者や行政などで構成する山梨ワイン産地確立推進会議を立ち上げたり、ブドウの高品質化、醸造技術の高度化に取り組んだ。 さらにEU(欧州連合)を中心とした世界市場進出を目標にワイン生産者、甲府商工会議所、先の協同組合などがKOJ(Koshu of Japan、委員長は木田さん)を21年に組織、ワイン情報の発信地・英ロンドンなどでプロモーション活動を行っている。 KOJの活動はワイン生産者に自信を与えたと、木田さんは言う。「私たちワイン生産者は本場フランスのワインに近づける努力を重ねてきました。それは技術向上に必要なことだったのですが、ヘルシー志向の欧米の人たちの評価は甲州ワインは日本食に合うというもの。そうか、私たちは和食に合うワインをつくればいいのだと、目からうろこが落ちる思いでした」

地域産業資源事業で本格発泡酒を開発

同社の新たな農商工連携の取り組みとしては、「農商工等連携事業」と対をなす「地域産業資源事業計画」の認定を20年6月に受けて実施した「山梨県産食材の魅力を最大限に引き出す本格スパークリングワイン」の開発事業がある。このプログラムは地域の「強み」となり得る農林水産物や産地の技術、観光資源などを活用した新商品・サービスの開発・市場化を、関係機関が連携して総合的に支援する施策だ。 当時、新しい高品質ワインの開発を検討していた木田さんは「甲州種の柑橘(かんきつ)系のさわやかな味わいがスパークリングワインに適している」と考えた。契約農家の協力を得て甲州種を使った和食に合う本格スパークリングワインの開発に着手。当時、一般的に行われていた炭酸ガスを混入する製法ではなく、仏シャンパーニュ地方の伝統的な製法である瓶内二次発酵製法(発酵で生じる炭酸ガスをボトル内に閉じ込める方法)を用いた。開発段階で事業に手応えを感じ、認定の申請をした。認定に先立ち、中小企業基盤整備機構(中小機構)のハンズオン支援や地域活性化パートナー事業を活用して展示会などに出展し、自社と商品の認知度向上に役立てた。 この事業からは大きな成果が得られた。中小機構によると売り上げは認定期間終了までの5年間で、累計で約1億円に及んだ。事業を通して得られた技術はさらに磨き上げられ、和食に合う本格スパークリングワインとして看板商品に育っている。 同社ではブドウにとどまらず、野菜や畜産農家からも商品を仕入れている。22年に開設した地産地消をコンセプトとしたレストラン「ゼルコバ」では、地元で採れた野菜・肉・魚を食材に使用、ワインに合う「ヤマナシ・フレンチ」を提供している。地元産の食材を使った「ヤマナシ・フレンチ」の評価は高く、今年5月から運行が始まったJR東日本の「TRAIN SUITE(トラン スイート) 四季島」の〝深遊探訪(しんゆうたんぼう)〟メニューの「里山・棚田・ブドウ畑などのぬくもりのある風景や、その地に息づく工芸品の粋を味わう旅」コースに採用された。同社を訪れた乗客は、コンシェルジュによるワインセミナーと甲州ワインを中心としたテイスティング、ゼルコバ総料理長の広田昭二シェフによるカナッペが味わえる。レストランを開業する際に中小機構から県内食材を取り扱う業者とのマッチング支援を受けたことも成功の一因だ。これも農商工連携の成果がJRに採用されたケースとして注目を集めそうだ。

生産者と農家は〝共同経営者〟

同社のさらなる成長のためには農家とのより深い連携が不可欠だ。自社畑3haを保有しているものの、収穫量はとても足りず、契約農家に醸造用ブドウの生産を委託している(総面積は)。「当社と農家とは何代にもわたる付き合いのため、共同経営者という意識です」と木田社長は言う。自社の畑では「草生栽培」と呼ばれる下草を刈らず、除草剤も一切使わない栽培法を取り入れている。契約農家でも環境保全型農業を目指す「エコファーマーの認定を取る農家さんが増えています」(同社輸出部長で夫人の木田和さん)。 ワイン業界には追い風が吹いている。酒類の消費量が減少する中、ワインの消費は拡大しているのだ。25年の国内ワイン市場(出荷量)のシェアは輸入ワイン70%、国産30%。そのうち山梨県産は6%を占め、5年前(20年)の12%に比べると半減している。これは市場の拡大により相対的にシェアが縮小したことが原因だ。全国の仕込量は5259t(20年)から6232t(25年)と増えている(山梨ワイン産地確立推進会議「山梨ワイン産地確立推進計画」)。だが、世界市場の厳しさを知る木田さんは「約80社あるワイナリー(国内のワイナリーの約3割)の醸造技術の底上げが必要」と考えている。農家の高齢化・後継者不足問題も深刻なため、県や関係団体がさまざまな施策を打っている。その成果が出た時、「ヤマナシ」は世界に知れわたるワイン生産地になる。

会社データ

店名:株式会社ルミエール

所在地:山梨県笛吹市一宮町南野呂624番地

電話:0553-47-0207

HP:http://www.lumiere.jp

代表者:代表取締役社長 木田茂樹

従業員:31人

生産事業に観光を付加36年連続黒字で年商100億円超

サラダコスモ 岐阜県中津川市

教育観光型・野菜生産施設「ちこり村」。今年4月28日には施設内に「ベーカリーちこり」がオープンし、新たな客を呼び込んでいる

もやしの製造販売を主力に年商100億円以上の業績を上げる、岐阜県中津川市の「サラダコスモ」。人口約8万人のこの地に同社がオープンさせた教育観光型・野菜生産施設「ちこり村」には、年間30万人が訪れる。高齢者雇用、休耕地の活用、食料自給率向上などに貢献し、成長し続けている同社の秘密とは——。

特産品も観光スポットもないからこそ〝つくる〟

岐阜県の南東部に位置する中津川市は良質な栗の産地で、栗きんとんの名店が多いことでも知られている。だが、観光資源は乏しく、馬籠宿も平成17年に編入されるまでは長野県であり、同市の観光地としての知名度は高くなかった。 そこに、今では地元はもとより、県外にも広く知られた観光スポットができた。18年に誕生した「ちこり村」だ。マイカーだけではなく、大型観光バスも押し寄せ、連日大勢の人でにぎわう。自社生産や地場産の野菜をふんだんに使ったランチバイキングが人気の「バーバーズダイニング」や、ここでしかない、買えない地域特産品が店頭に所狭しと並び、スタッフが快活に働く姿と丁寧な接客に、好感と親近感が湧いてくる。 「うれしい、楽しい、役に立つ。この3つの要を軸に展開しています。これは訪れる人だけではなく、働く人も対象です。さらに、従業員の7割が60歳以上というのもここの特徴です」 そう語るのは、ちこり村を運営する「サラダコスモ」代表取締役社長の中田智洋さんだ。「ちこり」とは、食物繊維が豊富な発芽野菜で、ヨーロッパでは高級食材として知られている。これにいち早く注目し、国内初の大量生産・販売加工にこぎつけた。そもそもちこりに注目したのも、もやしの製造販売をなりわいとする中田さんだからこその着眼点で、ちこりの生産、販売の場としてのちこり村のPR効果は絶大だ。 一袋数十円のもやし生産から、加工・販売まで事業を拡大し、ちこりなどの発芽野菜の商品開発や、ちこり村のヒットで36年間連続黒字、年商100億円を超える。その飛躍的な発展に一般客以外にも、地方自治体や企業の視察、各メディアからの取材オファーもひっきりなしだ。

もやしの常識を破る無漂白・無添加製造

そんなサラダコスモの快進撃は、中田さんが家業を継いだ昭和53年、28歳の時から始まる。 「製紙工場に勤めていた父が、祖父と戦後間もなく豆腐屋を始め、その後すぐにソーダ水のラムネ工場を立ち上げました。もやし生産はラムネが売れない冬の副収入としての事業でした。私は大学卒業後に家業を手伝っていましたが、28歳の時に父が脳梗塞で倒れて、突然社長に就任することになったんです」 ここで中田さんは大手清涼飲料水メーカーの勢いが目覚ましいラムネから撤退し、もやし生産専業にかじを切る。しかも、もやしを漂白する当時の〝常識〟を疑問視し、業界初の無漂白・無添加のもやし製造に着手したのだ。 「当時から生きる極意、幸せの秘訣(ひけつ)は、人の役に立つことだと思っています。それをビジネスに置き換えると、お客さまに胸を張って届けられる商品であることが私にとっては常識であり、幸せの方程式です。とはいえ無漂白もやしは……苦戦しました」と苦笑する。 健康、安心をうたっても、すぐ茶色くなってしまうもやしは鳴かず飛ばず。そんなとき、「こういうもやしを待っていた」と生協から評価された。これを機に、大手スーパーやレストランなどへの直販・直送の販路を築き、常識を覆していった。 60年には無農薬のカイワレ大根の生産も始めた。中田さんが社長に就任してから16年の間に、売上高は2000万円から42億円へ伸びていった。

農商工連携には〝カルチャー〟が必須

「手形が不渡り寸前になって黒字倒産しかけたこともありました。でも、一番のアクシデントは平成8年8月のO–157事件報道です。カイワレ大根が原因とされ、瞬く間に注文も融資も止まりました。1週間で70万パックを従業員が泣きながら焼却処分する光景は、今でも忘れられません」 だが、先行きが見通せない状況下で、中田さんは従業員を集めてこう言い切る。 「解雇も給料カットもしない。ボーナスも昨年同様だから心配しなくていい。辞める必要は全くない」と。持ち金が尽きるまで社員を守ろうとする姿勢に、社員が自主的に商品開発や販路獲得に動き、資金を切り崩すことなく奇跡的に経営は持ち直していく。そしてこの経験から、もやし、カイワレ大根の2品種から少量多品種生産へシフトし、その一環でオランダの農業研修に行き、出合ったのがちこりだった。今ではちこりやスプラウト(ブロッコリーの新芽)など発芽野菜を15種類まで増やし、ちこり関連商品を次々に開発している。 「中津川市は平坦な土地も少なく、傾斜地を開墾した田畑は、後継者不足で休耕地化するのも早いです。ちこり芋を休耕地で生産することで、雇用も食料自給率アップにもつながります。それにやってみて分かったのですが、農業と観光は非常に相性がよく、農商工連携に最適です。しかし、これに欠かせないのがカルチャー。非合理的で利益にならなくても、必須の要素です」と中田さんは説く。実際、ちこり村でも講演会や体験教室などを積極的に開催し、地域交流を促進している。自身も中津川商工会議所の月1回の常議員会に出席し、地元企業との交流を深めるなど情報収集には余念がない。 「企業経営は技術やノウハウではなく、一番大事なのは理念であり、経営者の人生観です。人と人との交流を大切にし、本当に役立っているか、幸せにつながっているのか自問して事業を進めています。近年売り上げは順調に伸びていますが、もうけ優先ではありません」 地域が抱える問題にビジネスとして取り組み、地域、そして日本全体を元気する。活路を開く先を、中田さんは常に見据えている。

会社データ

社名:株式会社サラダコスモ

所在地:岐阜県中津川市千旦林1-15

電話:0573-66-5111

HP:http://www.saladcosmo.co.jp

代表者:代表取締役社長 中田智洋

従業員:680人(うちパート・アルバイト495人)

「世界一のジビエは高知にあり!」おいしいから始まる地域振興

ヌックスキッチン 高知県高知市

肉そのもののおいしさを引き出すべく、オリーブオイルやマスタードなどのシンプルな味付け。フランスやイタリアの食の専門家も「臭みがなく、食感がやわらかいのはなぜ?」と驚くクオリティーだ

「害獣」と呼ばれて久しいシカやイノシシが、農作物に与える被害は年200億円近くにのぼる。一方、日本でもジビエ(野生鳥獣の肉)料理は近年、人気上昇中だ。この二つの流れをつなぎ、地域と連携しながら問題解決を模索する料理店が、高知市中心部にある。「害獣」ではなく、「食材」として魅力を伝えるようと奮闘する女性経営者がいる。

日本で捨てられる肉が海外では高級食材

シカやイノシシの駆除に向け、国を挙げて外食や学校給食、ペットフードなどへの利用拡大が検討されている。その背景にはシカやイノシシなどの鳥獣害の深刻な問題がある。環境省の調べでは、ニホンジカ(エゾシカは除く)やイノシシがこの10年でそれぞれ2・3倍、1・3倍と増えた。農作物の被害は年200億円、高知県内でも3億円前後にのぼるという。だが、「害獣対策として食べるのではなく、おいしいから食す。シカやイノシシの肉の食材としての魅力をもっと広めていきたい」。 そう真っすぐな瞳で語るのは、ジビエ料理専門店の「ヌックスキッチン」のオーナーシェフ、西村直子さんだ。平成26年7月に開店し、テーブル12席、カウンター6席の週3日営業の小さなお店ながら、オープンしてわずか半年で高知県民が選ぶ「『高知家の食卓』県民総選挙2015」で上位にランクイン。翌年は投票総数2万5478票、県民イチオシ店舗として高知県総合第1位に輝く快挙を果たした。今や予約必須店で、地元客だけではなく、県外や海外、さらには著名人も訪れる。シカやイノシシの肉は硬い、臭い。そんなイメージは、ここで一品オーダーすれば一瞬で払拭(ふっしょく)できる。 「20歳から世界60カ国以上を旅しました。海外で暮らしたいと27歳の時に調理師免許を取ったのが料理の道に入ったきっかけです。世界中のローカルな食文化に触れ、ニュージーランドやオーストラリアで12年ほど料理人として働きました。シカ肉料理は人気が高く、牛や鶏の肉と同等、いえそれ以上の高級食材です。それが日本では厄介者で、ほぼ全量捨てられている。このギャップに驚きました」

ご当地グルメやフェスでシカ肉もまちも大注目

ずっと海外で暮らすつもりだった西村さんだが、大けがと病気が重なり、21年に一時帰国する。そのとき、たまたま同県香美(かみ)市にある「べふ峡温泉」のシカ肉商品開発担当者募集のチラシを目にする。自分の経験が少しでも役に立てばと応募したことから、その後の人生が大きく変わっていった。 「当時、ご当地グルメが流行していました。とはいえ、マイナスイメージの強いシカを前面に出しても、敬遠されるだけ。そこで、食通で自然志向の女性をターゲットに開発したのが無添加のシカ肉ソーセージを使った『シカドッグ』です。地元野菜をたっぷり使いました」 これが大当たりし、23年に開催された「第3回土佐の食1グランプリ」という高知県のグルメイベントで、2位を大きく引き離して優勝する。べふ峡温泉エリアのシカ肉だけでは足りなくなり、他の地区や県外のシカ肉加工場に依頼することで、加工場とのネットワークが一気に広がっていく。一時帰国のはずが3年の月日が流れ、西村さん自身も一エリアの取り組みではなく、もっと大規模にジビエを軸とした地域貢献がしたいと考えるようになっていた。そこへ、長岡郡大豊町の観光施設「ゆとりすとパークおおとよ」のマネージャーにならないかという話が舞い込む。大豊町でも森林や農作物を荒らすシカやイノシシが年間1000頭廃棄されており、ジビエ料理で観光資源化を図りたいというのだ。 24年、悩んだ末に引き受けた西村さんはイベントやレストランメニューを全面的に見直す。SNSなどの活用で認知度向上に努め、数カ月で例年比の集客3倍、売り上げ2倍に押し上げる。従業員と成功体験を積み重ねた後に、同年11月、自ら企画して「四国ジビエグルメフェスタ2012」を開催した。人口2000人のまちに2000人以上が押し寄せるという快挙に、まちが沸いた。

独り勝ちではなくお金が巡る仕組みをつくる

「狩猟解禁日やボージョレ・ヌーボーの解禁日をからめ、外国人シェフにも出店してもらうなど、デザインとストーリー性を織り込みました。さらに鳥獣害の勉強会を開いて社会性も加えたんです」 また、活動を通じて日本のシカやイノシシのおいしさ、狩猟・解体技術は海外でもトップレベルにあると確信した西村さんは、外国人観光客の誘致も「勝機あり」と夢を広げる。だが今の観光施設までのアクセスは車が主で、インバウンドのハードルは高い。そこで高知県庁に相談すると、提案されたのが市街地での店舗経営だった。 「経営は全くの素人ですが、やる価値ありと思いました。そこでべふ峡温泉のころからお世話になっていた高知商工会議所に相談して、以来、私の描くビジョンをどうしたら具現化できるか、実務的なサポートを的確かつ親身にしてもらえる強力なアドバイザーです」 高知商工会議所の茂井康宏さんも当時を振り返りこう語る。 「店舗の形態、オープン後の運営状況など明確なビジョンを持っていました。その熱意に圧倒されたのを覚えています。今では熱狂的なファンの一人です(笑)」  茂井さんをはじめ、西村さんの周りはジビエ料理のおいしさに共感し、応援したいという人が多い。一人で始めた店も、思いを共有するスタッフが6人に増え、来店客も誰かを誘って再度訪れ、誘われた人がまた別な人を誘う。肉の加工場の人も来店し、料理のクオリティーや求めている肉質の理解を深めて、肉加工の精度を高めるなど、交流の輪は大きく広がっている。 「何もかも一人でやりきるのではなく、連携することで地域にお金が巡ります。ジビエが中山間地域や里山の活性化、日本の食文化につながるように、まちぐるみ、地域ぐるみで活動していきたいです」

会社データ

店名:Nook’s Kitchen(ヌックスキッチン)

所在地:高知県高知市本町3-2-48 鍋島ビル1階

電話:080-3920-7471

HP:http://www.nookskitchen.com

代表者:西村直子

従業員:6人

営業日:木、金、土 18:00〜23:00

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