わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、全国に設置され、電話やメール、ウェブサイトにより無料で相談できる「下請かけこみ寺」(本部:公益財団法人全国中小企業振興機関協会)に実際に寄せられた「親事業者の4つの義務と11の禁止行為」に関する問い合わせの中から、参考になる事例をQ&A形式で解説します。
今回は「内示」について紹介します。
Q.A社(資本金:1000万円)は、自動車のエンジン制御装置部品を親事業者であるB社(資本金:5億円)から委託されています。
B社からは、毎月初めに3カ月分の発注数量が内示されますが、その種類や数は絶えず変動し、その月の最終的な発注数量は、当月の末に確定することになっていました。
そのため、A社はB社からどのような部品がどの程度発注されたとしても、絶えず迅速に対応できるように、一定数の部品在庫を常に準備していました。
上記の状況の下、B社は、何らの予告もなく、取引を停止する旨の通告を行ってきました。
このような場合、在庫について、B社は何も言えないのでしょうか。
A.A社とB社との取引は、下請法の資本金区分基準を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請法が適用される取引と考えられます。
内示については明確に発注があったとはいえませんが、例えば、親事業者の内示によって下請事業者が製造に着手せざるを得ないような取引をしている場合には、内示した時点が発注と解されることもあり得ますので、そのような場合には、内示の時点で3条規則に定める事項を記載した書面を交付しなければなりません。
上記の場合、発注があったといえるかどうかは不明ですが、少なくとも相談者が一定の在庫を持つことは相手方にとっても利益となっており、また、そのことについて相手方も承知していたと考えられます。
よって、在庫の引き取りについて十分な協議の上、交渉してみるとよいでしょう。交渉の結果をきちんと文書・書面化することが大事です。
なお、それでも解決できない場合には、無料弁護士相談などを活用することも検討してください。
最新号を紙面で読める!