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各県商工会議所連合会会長が語る 東日本大震災から10年 ~未来へのメッセージ①~

発災から10年を迎えた東日本大震災。各県連会長にこれまでの10年を振り返ってもらいつつ、未来に向けた取り組みの展望などを語ってもらった。

高速交通網で物流効率化

岩手県 岩手県商工会議所連合会会長盛岡商工会議所会頭 谷村 邦久

岩手県商工会議所連合会会長盛岡商工会議所会頭 谷村 邦久

ILCで世界につながる

東日本大震災津波被害に際しまして、日本商工会議所はじめ全国の商工会議所から多大なご支援を賜わっていることに対し、あらためて感謝申し上げます。

発災から10年という節目を迎えましたが、復興はまだまだ道半ばであります。被災事業者に対し、今後とも息の長い支援を続けてまいります。

岩手県では、三陸沿岸を結ぶ復興道路、沿岸と内陸を結ぶ復興支援道路が年内に全線開通の見込みとなっております。これら高速交通網の充実による交流人口の拡大、物流の効率化による経済波及効果が期待されます。

誘致・実現に取り組んでいる国際リニアコライダー(ILC)は、岩手県と宮城県に跨る北上山地が世界の候補地となっており、地方創生の起爆剤になると期待しております。昨年の復興庁設置法の一部改正における国会審議におきまして、ILC計画が科学イノベ―ション創出による「新しい東北に資する計画」として復興庁は関係機関と連携・協力することとの付帯決議がなされたことは、私どもの活動の大きな後押しとなりました。

ILCは、科学技術創造立国を目指す日本にとって、自らが主体となるアジア初の大型国際科学技術研究拠点となり、人口減少や少子高齢化が進む東北にとっては、人材育成や技術革新、世界中の頭脳の集積、民間投資などをもたらす絶好の機会になるものと考えます。

震災からの復興の完遂と、ILC誘致・実現により、東北、日本の未来創造、世界につながる新たな地方創生を目指している私どもの活動に対しまして、全国の商工会議所の皆さまからの熱いご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

被災企業の自立支える

宮城県 東北六県商工会議所連合会会長/宮城県商工会議所連合会会長/仙台商工会議所会頭 鎌田 宏

東北六県商工会議所連合会会長/宮城県商工会議所連合会会長/仙台商工会議所会頭 鎌田 宏

未来志向で地域経済再生

本年3月11日で東日本大震災から10年の節目を迎えます。

三村会頭をはじめ皆さまには商工会議所のネットワークを利用した「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」や「販路回復・開拓支援事業」など、さまざまなご支援・ご尽力をいただきましたことに、この場をお借りし改めて厚く感謝申し上げます。

私自身、昨年11月から12月にかけて沿岸部被災地域を訪問し、復興状況視察と現地商工会議所関係者との意見交換を行いました。ハード事業はおおむね完了しているものの、復興状況には地域差があります。沿岸被災地の被災企業には、震災で失われた販路回復や輸入規制の問題、漁獲量の激減のほか、ALPS処理水の海洋放出の動向など被災地は複雑な課題が立ちはだかり、さらには新型コロナウイルス感染拡大への対応が各地域に追い打ちをかけています。そのような苦境の中でも未来志向で各地会議所が地域をけん引していることに大いに感銘を受けたところです。

この10年はあくまで通過点にすぎません。今後も被災企業の自立を支えるとともに、4月から9月までの半年間実施されます「東北デスティネーションキャンペーン」や、東北の重要な観光資源でもある四季折々のお祭りなどを通じて交流人口の拡大を推進するなどしながら、地域経済の再生・復興の完遂を果たしてまいりたいと存じます。

今後も東北六県商工会議所連合会として政府には復興が遠ざからないよう地域企業の支援に向けてあらゆる政策を実行していただくよう、働き掛けを行ってまいります。皆さまには引き続きご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

風評・風化問題で道半ば

福島県 福島県商工会議所連合会会長/福島商工会議所会頭 渡邊 博美

福島県商工会議所連合会会長/福島商工会議所会頭 渡邊 博美

ロボット・水素で世界へ

未曽有の被害をもたらした東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年が経過しようとしています。福島県内は着実に復興が進んでおり、昨年3月に帰還困難区域の一部で避難指示が解除されました。産業創出の動きとしては、国家プロジェクトである「福島イノベーション・コースト構想」の具現化が加速しており、昨年には構想の中核拠点となるロボット研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」が全面開所、世界最先端の実験が繰り広げられております。

また、世界最大級の水素製造実証拠点「福島水素エネルギーフィールド」が開所し、研究フィールドで製造した水素を活用した発電も始まっており、延期となった東京オリンピックでは今後、聖火台や聖火リレー用のトーチの燃料に使用される予定です。

インフラ整備では、東北中央自動車道「相馬福島復興道路」が今春には全線開通する予定で、これにより物流の促進や救急搬送、観光交流人口の拡大などの面で効果が期待できます。 一方で今も3万6千人を超える住民が避難生活を強いられており帰還に向けた環境整備が課題となっているほか、いまだ廃炉・処理水対策や風評・風化の問題など課題は山積しており、復興はまだ道半ばです。

さらに昨年から猛威を振るっている新型コロナウイルスは、依然として収束が見えず、産業のあらゆる分野に深刻な影響を及ぼし、感染拡大や福島県沖地震など自然災害についての新たな課題も突き付けられています。

このような状況の中、第2期復興・創生期間においても、原子力災害からの復興を確実に成し遂げる前提となる風評払拭(ふっしょく)および風化防止対策についても、県内10商工会議所が一丸となって要望活動をはじめ、事業活動を引き続き積極的に行ってまいります。

新たな産業の創造

青森県 青森県商工会議所連合会会長/青森商工会議所会頭 若井 敬一郎

青森県商工会議所連合会会長/青森商工会議所会頭 若井 敬一郎

縄文の魅力を世界へ

多くの尊い命とかけがえのないものを奪った東日本大震災から10年、被災地の復興・復旧への全国からの多大なご支援に感謝申し上げます。また、犠牲になられた多くの方々のご冥福を謹んでお祈り申し上げますとともに、今もなお避難生活を余儀なくされ、不自由な生活を送られている皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

さて、青森県商工会議所連合会では東日本大震災後、急激に落ち込んだ地域経済の早期回復に向け、観光やビジネスでの交流人口の拡大などに向けた国内外からの誘客促進事業や、農林水産物などの風評被害の払拭(ふっしょく)に向けた要望活動などを関係団体と共に実施し、青森県の復興への着実な歩みを支えてまいりました。

今後は、企業や地域経済の持続的な発展には安定したエネルギーの供給と環境に配慮した取り組みが今後ますます重要になるとの考えの下、核融合研究開発の拠点づくりや洋上風力発電をはじめ、再生可能エネルギー施設の導入促進支援などを通じ、新たな産業の創造などに努めてまいります。

さらに、世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、世界に誇れる東北地方の魅力の一つです。これまで登録に向け関係団体と連携して国内外へその価値や魅力を伝える活動を行ってまいりましたが、東北地方に新たな世界文化遺産を誕生させることができれば、世界からの注目を集め、東日本大震災からの完全な復旧・復興の後押しになると強く思っておりますので、その実現に向けても引き続き支援してまいります。

最後になりますが、多大な被害を被った太平洋沿岸地域では、今なお復興に向け多くの課題を抱えております。早期の復興・創生の実現に向け全国の皆さまからの熱いご支援を引き続きお願い申し上げます。

道路整備で冗長性確保

秋田県 秋田県商工会議所連合会会長/秋田商工会議所会頭 三浦 廣巳

秋田県商工会議所連合会会長/秋田商工会議所会頭 三浦 廣巳

洋上風力で東北に新風を

秋田県は、幸いにも東日本大震災による大きな被害はなかったものの、最大1571人、一時避難を含めると2531人の被災者を受け入れました。

当所でも青年部による支援物資供給や炊き出し、被災地商工会議所への経営指導員派遣のほか、自粛ムード払拭(ふっしょく)を目的に実施した震災チャリティー食事券の収益で長期避難者をB級グルメフェスティバルなどに招待するなどの支援を行いました。

震災発生直後、秋田港や能代港が太平洋側港湾の代替機能を担って救援物資や応援部隊の中継拠点となり、東北地方整備局の「くしの歯作戦」で確保された救援ルートを利用して太平洋側の被災地へ輸送しました。そこで得られたリダンダンシー(冗長性)確保の観点から、この年で日本海沿岸東北自動車道の建設および秋田自動車道の4車線化などが進みました。

震災を契機に脚光を浴びた再生可能エネルギーでは、良好な風況と遠浅な海岸線を背景に、本県沖の3区域が洋上風力発電の「促進区域」に選定されたほか、秋田港・能代港の港湾区域内では、既に洋上風力発電の拠点化へ向けた整備が進められています。

また、震災以降、東北六県で持ち回り2015年に本県で開催された東北六魂祭の精神を引き継ぎ、翌年から始まった「これが秋田だ!食と芸能大祭典」は、県内の祭りなどが一堂に集う春のイベントとして定着しました。 さらに、秋田市中心市街地の広小路を歩行者天国にした「広小路バザール(仮称)」や千秋公園の堀に咲く蓮を生かした「千秋蓮まつり(仮称)」の実施に向け、準備を進めております。東北デスティネーションキャンペーン、アフターコロナに向けた新たな観光コンテンツとして育て上げ、秋田から東北の元気を発信していきます。

安全安心な地域づくり

山形県 山形県商工会議所連合会会長/山形商工会議所会頭 矢野 秀弥

山形県商工会議所連合会会長/山形商工会議所会頭 矢野 秀弥

5月の絆まつりで元気発信

東日本大震災から10年が経過しました。

当時の山形県は、大震災の直接的被害は免れたものの、県内7商工会議所の会員の中には被災地に取引先を持つ企業も多く、部品、材料、資材などの調達や供給の停滞、自粛ムードや風評被害などで厳しい経営を強いられました。その状況を打破するため当連合会では、7商工会議所連携の下、多岐にわたる事業の実施と産業基盤の整備促進など、数多くの提言・要望活動を展開してまいりました。この活動で感じたことは、高速交通網を中心とした道路整備の必要性でした。道路整備は、地域産業の発展や観光振興といった経済面のみならず、大規模災害発生時の避難や救援活動、支援物資の輸送、救急医療といった地域の安全安心を確保する上でも不可欠であると感じたからです。日本海沿岸東北自動車道と東北中央自動車道の整備は着々と進んでいます。

しかし、大震災後、太平洋側と日本海側を結ぶという重要な役割を担った横軸路線については、酒田から新庄経由で石巻を結ぶ地域高規格道路(通称:ウエストライン)をはじめ整備の遅れが目立っており、今こそ、東北の均衡ある発展のため、リダンダンシーにも配慮したネットワークの構築を促進していただきたいと願うものであります。その実現が、地域経済を支える中小企業の新たな意欲と活力創出を図るものと思っております。

当連合会といたしましても、未来に向けて地域の多様な可能性の実現と安全安心で元気な地域づくりに取り組んでまいりたいと考えております。 本年5月22、23日の2日間「東北絆まつり2021山形」の山形市開催が決定しました。今回は約5000席を設ける有料観覧席からのパレード観覧に限定するなど、新型コロナウイルスの感染対策を講じた上での開催ですが、東北の元気を全国にお届けしたいと思います。