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テーマ別企業事例 ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた戦略 観光NEXTの仕掛け人

事例2 日本文化を紡ぐ観光まちづくりで地域全体を活性化

バリューマネジメント(大阪府大阪市)

「日本文化を紡ぐ」をテーマに、歴史的建造物や古いまち並みといった歴史的資源を、観光などに活用して残すビジネスを展開しているバリューマネジメント。2005年の設立以来、数多くの歴史的資源を宿泊施設やレストランなどにリノベーションし、人やお金が循環する仕組みを構築して、まち全体の活性化を目指している。

大洲城下に広がる歴史的な邸宅や町家を改修し、分散型ホテルとして展開している「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」

価値ある歴史的資源を活用して残す

史跡や神社仏閣、古いまち並みや古民家といった歴史的資源は、全国に約100万棟あるとされる。長年、国や自治体、法人や個人が所有してきたこれらの資源は、価値や魅力がある半面、維持・保存コスト、固定資産税や相続税、修復費捻出などの問題を抱え、遊休施設となっているケースが少なくない。バリューマネジメントは、地域に眠るこうした資源を民間の力で再生し、それらを活用した観光まちづくりで地域を活性化する事業を展開している。

社長の他力野淳さんが同社を設立した当時、すでに空き家・空きビル問題は日本全体の課題としてクローズアップされていた。しかし、その一部である歴史的資源の維持や活用については、さほどスポットが当たっていなかったため、周囲からは「何でそんな事業を始めたの?」と散々言われたという。他力野さんが建物やまちの再生にこだわるのには理由があった。

「僕は神戸で育ち、阪神淡路大震災を経験しました。活気にあふれたまちが一瞬にして壊れ、明日も当たり前にあると思っていた生活がなくなってしまいました。それがいかに尊いものであったか、失って初めて気付いたんです。もともとまちづくりに興味がありましたし、地域にとって大切な文化を残す仕事がしたいと思ったんです」

1泊100万円の「城泊」で究極の非日常を演出

同社のビジネスモデルはこうだ。まず、さまざまな歴史的建造物を所有者から賃貸またはサブリースした上で修復し、文化財でない建造物は文化財登録を行って価値を高める。さらに建造物の歴史的背景やストーリーを考慮しながら、観光やレストランなどに活用して維持・保全するというものだ。

大阪城西の丸庭園のケースを例にとると、遊休施設だった庭園内の大阪迎賓館をレストランに改修し、同社が運営する。各種会議やイベント、婚礼などに幅広く活用して、その収益で家賃や建物の保全費を捻出する。京都・平安神宮も同様で、同社が平安神宮会館の婚礼事業部門を直営で運営し、その収益が施設の維持管理に役立てられている。

まち全体をホテルとして再生した事例では、愛媛県大洲(おおず)市のケースが注目を集めた。城下町に残る町家や古民家を宿泊施設として再生し、国内外から観光客を呼び込んで、地域内の経済を循環させる観光まちづくりのモデルだ。目玉は、大洲城の木造復元天守に泊まれる日本初の「城泊」で、宿泊費用は2名1泊100万円と破格だが、甲冑(かっちゅう)を身に着けての入城、伝統芸能鑑賞、国の重要文化財に登録された「臥龍(がりゅう)山荘」での食事などの文化体験が満喫でき、究極の非日常が味わえる。「大洲市から依頼をいただいたとき、正直迷いました。大洲城は魅力的ですが、そのほかに大きな特徴を感じられず、何といっても交通アクセスがよくありません。しかし、市長や地元の人たちの『まちを何とかしたい』という熱意に心を打たれて、やるからには全力でまちの活性化に寄与しようと思いました」

近年、地域の歴史的資源を活用した観光まちづくりの取り組みは増えており、同社が手掛けたものでは兵庫県・篠山城下町や竹田城下町、千葉県・佐原商家町などがある。古いまち並みを丸ごと保存して再生した佐原では、観光入込客数が大幅に増えたほか、UターンやIターンしてくる事業者も現れているという。

いかに選ばれる場所になれるかが復活の鍵となる

2016年、同社は「ジャパンベンチャーアワード」で日本文化再生特別賞を受賞した。これは革新的かつ潜在成長力の高い事業を行っている企業の経営者をたたえる表彰制度で、同社の「日本文化を紡ぐ」をテーマにしたビジネスモデルが高く評価された。今では全国各地からさまざまな依頼が舞い込み、自治体や建物所有者、まちづくり会社などと連携しながら、その地域に合った歴史的資源の活用法を提案している。

昨年は新型コロナウイルスの影響でインバウンドが激減し、日本人も満足に旅行ができなかったが、他力野さんは今後の観光をどう見ているのか。

「コロナ禍は観光や飲食業全体に大きなダメージを与え、二極化が進んだと感じます。客足が遠のいてしまったところがある一方、変わらず盛況なところもある。この状況下でも行きたいのは、やはりなじみの店やお気に入りの場所でしょう。つまり、特徴のない地域が削られて、特別なところが残る。アフターコロナで人々が自由に往来できるようになったとき、いかに選ばれる店、泊まりたい宿、行きたいまちになるかが復活の鍵となるでしょう」

他力野さんは今後も、歴史的資源を活用したまちづくりの動きを全国に広げ、それぞれの魅力をまとめてプロモーションしていきたいという。さらに、ハイエンドを強化して単価のとれるコンテンツを整備し、雇用を生み出して、まち全体の発展に貢献できれば、と将来を見据えて語った。

会社データ

社名:バリューマネジメント株式会社

所在地:大阪府大阪市北区大深町4-20

電話:06-6371-2700

HP:https://www.vmc.co.jp/

代表者:他力野淳 代表取締役

従業員:877人

※月刊石垣2021年6月号に掲載された記事です。

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