テーマ別企業事例 地域の力を結集してコロナなんかで倒れない! 稼げる農商工連携で逆境を乗り切る

事例2 栽培、加工、販売まで手塩にかけた自家製ソースで笑顔を広げる

森本研究所(岐阜県中津川市)

趣味でつくった自畑産の唐辛子とニンニクたっぷりの激辛ソース「大辛ファイヤー!®」。知人、友人へと「おいしい」の輪が広がり、商品化するとファンが一気に増えた。原材料の栽培から加工、販売まで手掛け、オリジナルの農商工連携のスタイルを確立する「森本研究所」の手腕に迫った。

和洋中どんな料理にも合う「大辛ファイヤー!®」。2022、23年度は4000個、5000個の生産を見込む

つくれば売れるを繰り返し本格的な製造加工へ発展

「道楽でつくり始めたソースが、まさか事業の柱になるとは思ってもいませんでした」

そう言って森本研究所代表取締役の森本正則さんは、屈託のない笑顔を浮かべた。森本さんが開発した自家製激辛ソース「大辛ファイヤー!®」は、2020年度の関連売り上げが140万円、21年度は210万円を見込む、今や同社の事業を支えるヒット商品だ。ソースの完成はさかのぼること12年前の10年、「もっと欲しい」の声に押されて、少しずつ量産し、百個単位から千個単位になってもつくっては売れた。この勢いに乗って、原材料の唐辛子やニンニク栽培にも乗り出し、敷地7000㎡のうち4000㎡を開墾して、土づくりから丹精込める。

「うちは農家ですが、他と違うのは『もりのいえ』という事業ブランドで手づくり弁当の製造販売や、ゲストハウスの運営もしていることです。お客さまの笑顔を目にすると、もっと喜んでもらうにはどうしたらいいかを考えるようになります。ソースづくりもその一環です」

18年、本格的に「大辛ファイヤー!®」の製造をスタート。翌年には商標を登録した。栽培から加工、販売の体制を整えると、出店するイベントやゲストハウス、自社の通販サイトでリピーターが右肩上がりに増えた。「これが農商工連携だと後から気付きました。それも人に教えられて」と森本さんは笑う。

経営不振や不運を経た先に見いだした活路

農商工連携では商品のプロモーションや販路開拓が農家の課題としてあるが、森本さんは自己完結型の農商工連携を実現させている。なぜか。その理由の一つに森本さんが農業以外の視点やキャリアを持つ一風変わった農家なことがある。

森本さんは家族とともに05年に岐阜県中津川市に移り、築150年の古民家で暮らし始めた。それ以前に経営コンサルタントとして事業開発やまちづくり研究に携わっていた経験があり、ISO9001(品質)、ISO14001(環境)、ISO22000(食品衛生)の審査員資格を有している。06年の会社設立後も、しばらくは資格を生かして都市部で収入を得ながら、古民家のゲストハウスの運営や自社の通販サイト開設を進めた。だが苦戦続きで預金残高200円を切るまでに。その状況を打破したのが料理家である妻の理恵さんの手づくりオーガニックスイーツだ。有名ブロガーに紹介されると注文が殺到し、一気に生計が上向く。宿も自社主催のイベントやワークショップを取り入れた宿泊プランが当たり、毎週末、全国から大勢が集い、にぎわった。宿では理恵さんの料理が人気を博し、スイーツはイベント販売でも売れに売れた。

だが13年の夏、理恵さんが交通事故に遭い、九死に一生を得る。そこで森本さんは、自身が開発した「大辛ファイヤー!®」に本腰を入れたのだ。

多彩なスキルと人脈、行動力で販路を切り開く

理恵さんの復帰後、お弁当とソースの売り上げは順調に伸びたが、夫婦二人の生産体制には限界がある。また山深い里で暮らしても、売れるのは都市部で、老後や子どもたちの進学を考えると商圏に近いエリアの新拠点開拓が必要になってきた。そこで、新商品開発やスタッフ補充も念頭に計画を立てていた矢先、猛威を振るったのが新型コロナウイルスだ。出店予定のイベントは軒並み中止となり、宿泊客も途絶えて売り上げは前年比で88%ダウンする。

だが事業計画は止まらない。その潤滑油になったのが恵那商工会議所のアドバイスで活用した小規模事業者持続化補助金制度だ。岐阜県の補助金を辛さ控えめの「大辛ファイヤー!® ミックス」の開発費に、国の補助金を新拠点のテークアウト店舗とオープン型飲食スペースの開設費に充てた。

「県からは209万円以上の補助対象となる事業費に150万円の補助。加えて中津川市の補助もあり、自己資金35万円で商品開発ができました」

培ってきた幅広い人脈を生かしてパッケージデザインや撮影をプロに依頼し、チラシやショップカード、ウェブサイトを統一感あるデザインに一新。年間2000個が限界だったソースも製造マニュアルを作成し、スタッフを増員して生産増の道筋をつけた。

さらに中津川市と恵那市の生産者らの直販ブランド「恵那山麓野菜」に仲間入りし、地元のサービスエリアや道の駅でのソース販売も始まった。追い風が吹く中、新拠点では目下、井戸掘りが進行中だ。「地域の憩いの場になればと思って」と声を弾ませる森本さん。コロナ後のビジョンにはすでに〝お客さまの笑顔〟が広がっている。

会社データ

社名:株式会社森本研究所(もりもとけんきゅうじょ)

所在地:岐阜県中津川市加子母2220番地

電話:0573-67-7198

HP:「もりのいえ」はこちら

代表者:森本正則 代表取締役

従業員:2人(ほかにパート5人)

【恵那商工会議所】

※月刊石垣2021年8月号に掲載された記事です。

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