テーマ別企業事例 地域の力を結集してコロナなんかで倒れない! 稼げる農商工連携で逆境を乗り切る

事例4 農業や地域との連携をベースに新たな健康的な食の提案に取り組む

マルヤナギ小倉屋(兵庫県神戸市)

日本初の「蒸し大豆」をはじめ、煮豆や昆布佃煮、もち麦などの製造・販売を行っているマルヤナギ小倉屋。農業が抱えるさまざまな課題を解決し、おいしくて体に良い伝統食材の栽培を維持・拡大するため、生産農家、JA、自治体、研究所、商業者などと広く連携。地産地消による地域活性化にも取り組んでいる。

大豆のおいしさと栄養価値を併せ持ち、洋風メニューにも使いやすい「蒸し大豆」

「もっと大豆を食べてほしい」と生産農家と連携する

マルヤナギ小倉屋は昨年、一般社団法人食品産業センター主催の「食品産業優良企業等表彰」において、食品産業部門の最高賞である農林水産大臣賞を受賞した。同社が長年にわたって農商工連携を推進しながら、新商品の開発を通じて地域農業の振興や地域活性化に取り組んできたことが評価されたものだ。

同社は、大阪の老舗昆布商「小倉屋」ののれん分けとして、1951年に創業した食品メーカーだ。昆布佃煮製造からスタートして、後に大豆も扱うようになり、日本初の甘さを抑えたレトルト煮豆を世に送り出した。2004年には独自の蒸し技術を生かして、「蒸し大豆」の開発にも成功する。こうして常においしい食材を追求してきた同社にとって、生産農家との連携はごく自然な流れだった。

「当社では北海道産の大豆を使用していて、生産農家との交流を深めてきました。その中で、蒸し大豆に適した大豆が農家にとってつくりにくい衰退品種だと知り、何か策を講じなければ原料調達がままならなくなると危機感を覚えました」と同社社長の柳本一郎さんはきっかけを振り返る。

そこで大豆の契約栽培を維持・拡大するために、独自の奨励金(マルヤナギ出資)を創設する。同時に、消費者に安全安心な食材を提供し、環境に優しい農業を実現するため、減農薬・減化学肥料の特別栽培を奨励。こうして生産農家と連携を図りつつ、商品の販路を地道に開拓していき、蒸し大豆は現在70億円の市場規模にまで成長を遂げた。

自治体や研究機関とも連携し「日本一健康なまち」を目指す

海の昆布と畑の大豆。日本の伝統食材であるこの二つには“食物繊維が豊富”という共通点がある。近年、その健康効果に注目が集まっているが、日本人の食物繊維摂取量は恒常的に不足している。その解消につながればと、着目したのがもち麦だった。15年に、蒸し技術を用いて「蒸しもち麦」の開発に成功したが、当時はほとんどが海外産の輸入原料だった。そこで、同社はもち麦の国産化に取り組み始める。

「もち麦で一番おいしいとされる『キラリモチ』の種を国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構からいただき、北海道の農家で栽培して増やしてもらいました。さらに生産農家を探したところ、当社工場がある兵庫県加東市のJAみのりさんが手を挙げてくれまして。その後、順調に栽培面積を拡大し、相応の収穫量を確保できるようになりました」

加東市は酒米・山田錦の産地として有名だが、それに続く特産品を模索していたこともあり、同社と「地域活性化、市民の健康増進、農業振興」に関して連携協定を締結する。その上で同社は、地元農家とともに地産地消でもち麦栽培を進めながら、「加東市を日本一健康なまちにしよう」をスローガンに、市民を対象とした食育健康セミナーを開催するなど、〝体に良い〟もち麦食の啓蒙(けいもう)活動を展開している。

「さらに昨年、加東市と国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と当社で、もち麦の健康に与える影響を調査・研究する協定を結びました。もち麦は、血糖値の上昇を抑えて生活習慣病予防に役立つとされる水溶性食物繊維を多く含んでいるので、その効果を科学的に検証して、地域の健康増進に生かすのが狙いです。『蒸しもち麦』については、水溶性食物繊維を豊富に含んでいることからさまざまな健康効果が期待できますが、特に、食後血糖値の上昇を抑える効果については、機能性表示が認可されています」

一緒にWin-Winの関係を築くために商品を売る

今後も同社では、主力の昆布や大豆製品とともに、もち麦の普及に力を入れていく予定だ。現在、加東市内に自社実験農場をつくり、先端的な栽培技術の研究を行いながら、契約農家への減農薬・減化学肥料栽培を推進している。

「私たちはおいしくて安全安心な農作物を目指していますが、農家としては手間が掛からず、病気に強くて反(たん)収のいい農作物をつくりたいのが本音。そのギャップを埋めてもち麦栽培を推進するために、通常の購入代金以外に別途奨励金を出しています。今では隣の市からも『生産したい』という声が届いていますよ」

さらに、農家の抱える課題を共有し、その労に報いる意味を込めて、商品に「マルヤナギ with 日本の農家さん」というブランドロゴを掲げている。農と工が寄り添って、一緒にWin-Winの関係を築こうという姿勢の表れだ。

もち麦は商品として流通する以外にも、市内の学校給食に採用されたり、飲食店やパン屋などの事業者に使われたりと活用の場が広がっている。こうしたさまざまな取り組みが話題を呼び、認知度が上がっている。

「今後も農家の方に頑張ってもらうために、私たちも商品を売らなければなりません。蒸し大豆は一定の市場規模を獲得していますし、もち麦への期待も極めて大きい。それはただ体に良いというだけでなく、やはりおいしいからだと自負しています。今後も人と人とのつながりを大切にしながら普及に努めたい」と、すでに十分な手応えを得ているようだ。

会社データ

社名:株式会社マルヤナギ小倉屋(まるやなぎおぐらや)

所在地:兵庫県神戸市東灘区御影塚町4-9-21

電話:078-841-1456

HP:https://www.maruyanagi.co.jp/

代表者:柳本一郎 代表取締役社長

従業員:480人(パート含む)

【神戸商工会議所】

※月刊石垣2021年8月号に掲載された記事です。

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