内閣府はこのほど、政府の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に提出した「中長期の経済財政に関する試算」で、基礎的財政収支(PB)黒字化時期を2026年度とした。政府が骨太方針に基づく取り組みを継続した場合、黒字化は1年程度の前倒しが可能との見方を提示。岸田首相は、財政健全化目標の25年度を堅持する考えを表明した。
「中長期の経済財政に関する試算」(こちらを参照)では、財政健全化の指標となる国と地方のPBが黒字化する時期について、政府目標の高い成長を前提とした「成長実現ケース」と、足元の低成長で推移する「ベースラインケース」で試算。成長実現ケースでは、21年度中にコロナ前の水準を回復した後、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長率が実現するシナリオを想定した。
このシナリオは、「成長と分配の好循環」に向け、中長期的に「科学技術立国の実現」「デジタル田園都市国家構想」「経済安全保障」を三つの柱とした大胆な投資や、働く人への分配機能の強化などの推進により所得が増加し、消費に結び付くとともに、政策効果の後押しもあって民間投資が喚起され、潜在成長率が着実に上昇することを前提としている。
この高成長を前提とした成長実現ケースでは、名目GDP600兆円の達成時期は、24年度頃。PBについては、足元では、感染症に対応するための補正予算による歳出増などから一時的に悪化するが、中長期で見れば、歳出自然体の姿で、25年度に対GDP比で0・3%程度の赤字となり、黒字化は26年度を見込む。また、骨太方針に基づく取り組みを継続した場合、「黒字化は1年程度の前倒しが視野に入る」との見方を示した。
一方、ベースラインケースでは、経済成長率は中長期的に実質1%程度、名目1%程度。財政面では試算期間内のPB改善は緩やかなものにとどまる。
今回の試算を踏まえ、岸田首相は「現時点で財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にはないことが確認された」と25年度の目標を堅持する考えを表明。一方で、「新型コロナウイルス感染症の影響をはじめ、種々の不確実性が払拭(ふっしょく)できない状況」であることを認め、「引き続き、内外の経済情勢などを注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行う」と述べた。
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