日本商工会議所の三村明夫会頭は3日、定例の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻について、「明確な国際法違反であり、何らかの手段でプーチン大統領を翻意させなくてはならない」と述べた。日本への影響については、「相当のマイナスの影響があることは覚悟しなければならない」と懸念を表明。「中小企業に影響が及ぶのは、電力価格や小麦粉などの原材料価格の上昇だ」との見方を示した。
三村会頭は、ロシアによるウクライナ侵攻について、「世界中が反対の声を上げる中で、ウクライナという独立国を力で屈服させる動きを強行したことは、本当に考えられない事態だ」と危機感を表明。日本企業の事業活動に与える影響について、「世界と歩調を合わせて、経済制裁でプーチン氏の考えを変える方向で協力することが求められている。日本にも相当のマイナスの影響があることは覚悟しなければならない」と述べた。
ウクライナ情勢を受けて、エネルギー価格や資源、穀物価格が上昇していることについて、「ロシアとのビジネスはリスクも多いため、直接取引をしている中小企業は少ない」と指摘。「中小企業に影響が及ぶのは、電力価格や小麦粉などの原材料価格の上昇だ」との見方を示した。
エネルギー価格の高騰については、環境問題への対応、火力発電の生産力低下、気候の影響による自然エネルギー供給の落ち込みなどが背景にあり、「価格が高騰していたところに、ウクライナ問題が発生し、需給ひっ迫がさらに進んだ」と指摘。「エネルギーは安定的に供給されることが極めて重要だ」と述べた「価格の高騰に対してその場しのぎの対応を考えるのではなく、その時々の国際情勢を見極めつつ、エネルギー政策全体を考えるべきではないか」との見方を示した。
東日本大震災からの復興状況については、「依然として被災地事業者の経営環境は厳しいという切実な意見が多い」とした上で、岩手県の国際リニアコライダー誘致、「福島イノベーション・コースト構想」の推進、DMOを核とした被災地域の観光連携体制の強化などの動きが活発化していると指摘。「将来を見据えて新しい動きが多数出てきており、非常にうれしく思う」と述べた。ALPS処理水の海洋放出については、新たな風評被害が発生しないような対策、地元事業者への十分な説明とともに、これに伴う被害が発生した場合の補償についての対応が必要との考えを示した。
今年の春闘については、「業績が好調な企業にはぜひとも賃上げしてもらいたい」と強調。「どの程度賃上げするかは、一律ではなく、企業の実情に合わせて判断されるべき」と述べた。