Q 最近パワーハラスメントの相談が増えてきています。会社としてパワーハラスメント防止対策を行っていく必要性を実感していますが、パワーハラスメントの予防について、どのように行ったらよいか教えてください。
A 企業としてパワーハラスメントの予防に主体的に取り組む上で、企業としてハラスメントは許さないという姿勢をとり、社員とその方針を共有する必要があります。併せて就業規則にパワーハラスメントを防止する規定を策定し、万が一、パワーハラスメントを行った場合は、懲戒処分の対象となる旨もあらかじめ規定しておきましょう。また、相談対応のための窓口・担当者をあらかじめ定めておき、相談を受けたら、事実確認を行い、解決につなげましょう。
パワーハラスメント(パワハラ)を予防するために、企業が取り組むポイントについて厚生労働省資料「パワーハラスメント対策導入マニュアル」においては、次のポイントを挙げています。
トップのメッセージ
企業として「職場のパワーハラスメントを許さない」という方針を、トップのメッセージとして従業員に向けて発信し、企業全体としてパワハラに対する方針を共有することが大切です。組織としての方針が明確になることで、パワハラを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題点の指摘や解消に関して発言しやすくなり、パワハラの予防にもつながります。
社内ルールを決める
就業規則などに関係規定を設けるなど、予防・解決についてのルールを決めましょう。就業規則には、職場の服務規律においてパワハラ禁止を明記し、パワハラを行っていた者については、懲戒規定に基づき厳正に処分する旨も明記します。また、パワハラ防止についてより詳細な規定を定めたい場合は、別途パワハラ防止規程を定めることも有効です。
実態把握
自社のパワハラの実態を把握するため、アンケートを実施します。アンケートの項目は、パワハラの有無や従業員の意識の把握などが挙げられます。調査方法には、紙や電子ファイルでの実施に加え、インターネット上で無料または低額で実施できる仕組みもあります。また、パワハラの予防の効果を把握するため、予防対策を実施した後に定期的にアンケートを行い、効果について検証するとよいでしょう。
周知を図る
パワハラの防止に向け、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口やその他の取り組みについて周知を図ることが必要です。トップ、役員、部長など経営に近い立場にいる者が、定期的に「パワハラ防止・撲滅など」の発信を行うことが効果的です。また、人事部門や組織長による具体的取り組み内容の説明会の実施が望まれます。
相談窓口の場の設置
相談対応のための窓口・担当者をあらかじめ定めておきましょう。相談に対応する制度を設け、内容や状況に応じて外部機関に相談への対応を委託するようにします。相談を受けたら、事実関係の確認などを行い、解決につなげます。パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うことが必要となります。
再発防止のための取り組み
事実確認ができた場合は、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うようにしましょう。
また、意識啓発のための研修や講習などを改めて実施するとともに、職場環境改善のためにコミュニケーションの強化や長時間労働対策を行いましょう。
なお、パワハラに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申し出を行うことができるようになりました。 (社会保険労務士・吉川 直子)
お問い合わせ
会社:Supported by 第一法規株式会社
住所:東京都港区南青山2-11-17
電話:03-3796-5421
最新号を紙面で読める!