日本商工会議所の三村明夫会頭は21日の定例記者会見で、急速に進行している円安について、「中小企業にとって今の円安水準は悪い方に働いている」と述べた。「円安でも輸出もインバウンドも増えず、輸入額が増えているという構造上、明らかに足元の円安は日本にとって不利な状況だ」と危機感を表明。政府に対しては、「円安が日本にとって良いのか悪いのか、しっかりと整理して分かりやすく情報発信してほしい」と求めた。
三村会頭は、財務省が20日発表した2021年度の貿易収支の赤字が5兆円を超えた点について、「貿易赤字の背景は輸入額の増加だが、輸入数量の増加ではなく資源価格の上昇によるものだ」と指摘。資源価格については、「カーボンニュートラルを実現するために全世界が化石燃料に対する投資を絞ったところへ、ロシアのウクライナ侵攻が重なった」と述べ、上昇は長期化するとの見方を示した。
政府に対しては、現在の日本経済の実態、生産体制のグローバル化、今後の資源価格の高止まりなど、さまざまな分析が必要との考えを示し、「円安が日本経済全体にとって好ましくない、ということであれば、政策の変更を検討すべき」と強調。また、日商LOBO調査の付帯調査(4月速報値)の「円安進行が業績に与える影響」について、5割以上の企業が「デメリットが大きい」と回答したことに触れ、「中小企業にとって今の円安水準は悪い方に働いているという実感を持っている」と述べた。
中小企業三団体で取りまとめた「最低賃金に関する要望」については、昨年の最低賃金決定の議論の際に、政府の骨太の方針に配慮した結果、「最低賃金法が定める三要素(生計費、賃金、支払い能力)に基づいた議論がなされなかった」と指摘。議論の進め方に不快感を示した。
今回の要望で、政府方針を示す前に、労使双方の代表が意見を述べる機会を設定することや、中小企業・小規模事業者の経営実態を十分に考慮することなどを盛り込んだ点については、「中小企業者の本音であり、法に基づく当たり前のことを要求しているという認識だ」と強調。「これが守られないような議論では、最低賃金法は何のためにあるのかということになる」と述べた。
最低賃金の問題点については「セーフティネットであるが故に業績の良い企業も悪い企業も一律に強制的に適用されるところに問題がある」と指摘。「中小企業の実態に関する理解は進んでいる」と述べ、要望内容の実現に期待感を示した。
経団連と大学側でつくる産学協議会が取りまとめた報告書で、「一定の基準を満たすインターンシップで得た学生情報を採用活動へ活用できるようにすべき」としたことについて、三村会頭は、「今回の報告書で最低限遵守すべき要件を定めたことは歓迎すべき」と指摘。「学業の妨げにならないようなルールが定められたことは非常に良かった。中小企業も、ルールにのっとったインターンシップを積極的に活用して、採用に結び付けてほしい」と述べた。
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