政府は、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と定め、発注側企業と受注側企業の価格交渉、コストの価格転嫁促進の取り組みを強化している。原材料などの上昇分を下請中小企業が適切に取引先に価格転嫁できるようサポートするため、昨年度より年2回実施。広報・周知を図っている。岸田文雄首相は8月29日、ビデオメッセージで「原材料費の値上がりで下請事業者の仕入れ価格が高騰しているが、その分を適正に価格転嫁できず多くの事業者が困っている。岸田政権では下請Gメンの倍増、10万社規模の緊急調査を皮切りに、価格交渉・転嫁の実態把握を進めており、親事業者から「不公正な取引」を強いられている事業者は相談窓口に気軽に相談してほしい。岸田政権は、中小企業の適切な価格転嫁を目指す」と述べた。
価格交渉促進月間では、発注側企業に対して、経済産業大臣名で、7月に改正した下請中小企業振興法(下請振興法)「振興基準」にのっとり、受注側中小企業との間での価格交渉や価格転嫁に積極的に対応するよう要請。受注側企業に対しては、9月中旬以降、発注側企業との価格交渉の状況についてのフォローアップ調査を実施する。
調査は、受注側中小企業15万社程度を対象としたアンケート、および下請Gメンによる2000社程度への重点的なヒアリングを行うもの。同調査結果に基づき、良い事例・問題のある事例や親事業者の対応の順位付けを公表するとともに、価格転嫁や価格協議の実施状況が良好でない個別の発注側企業の経営者に対し、「指導・助言」による注意喚起を実施。独占禁止法や下請代金法の違反が疑われる事案については公正取引委員会と中小企業庁が連携して対処する。
また、価格交渉促進月間の期間中は、価格交渉や下請代金支払遅延等防止法(下請法)に関する講習会、セミナーなども全国で開催。企業・団体などへの周知を図る。
前回(3月)のフォローアップ調査結果では、受注側中小企業の約6割は協議に応じてもらえたものの、1割は全く価格交渉できておらず、2割は全く価格転嫁できていない。同調査の結果を踏まえ、今回の価格交渉促進月間では、フォローアップ調査を充実させるとともに、7月に抜本改正した下請振興基準を活用し、指導・助言の対象企業を拡大。価格交渉促進月間の実施と改善サイクルを強化し、交渉と転嫁が定期的になされる取引慣行の定着を目指す(図参照)。
併せてサプライチェーン全体の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推進。実効性の確保とともに未参加の企業の宣言を呼び掛ける。
詳細は、https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220824002/20220824002.htmlを参照。
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