民間主導型の人財育成&創業支援への挑戦
一般社団法人グロウイングクラウド 代表理事 三部 香奈(さんべ・かな)
福島県の復興のために吉兆を届けたい
東日本大震災から2年がたち、息子が幼稚園に通い始めた2013年、私は郡山市で開催された「まちぐるみ読書会」という対話型イベントの開催に関わりました。そこは市内外から多様な立場や世代の違う約90人が集い、自分がまちのために何がしたいのかを真剣に語り合う場でした。それまで、まちづくりは人ごとだった私が、震災後の福島県が抱える深刻な人口減少や風評被害という課題と向き合い、「自分が暮らす地域のために何ができるのか」を自分事として考えるきっかけとなりました。
地域をより良くするためには、次世代を担う人財育成と創業支援という仮説の下、「未来は予想するものではなく、自分の力でつくるもの。そのために行動する人財を応援します」というミッションを掲げ、14年3月、一般社団法人グロウイングクラウドを設立。社名は日本語にすると「彩雲」で、吉兆を意味します。私たちの活動を通して、地域が震災前より豊かなまちになるよう、吉兆を届けたいという願いを込めました。
まず取り組んだことは、コワーキングスペース「co-ba koriyama」の開設です。当時の地方では「コワーキング(場所の縛りがない環境で働く人たちのワークスタイル)」を認知してもらうことに一苦労しました。読書会や交流会、起業セミナーなどを自社で企画開催し、「対話を通して学びや気づきを得る場」をつくることで、地域に潜在していた「自分で行動を起こしたい」と思っていた人たちとの接点が生まれ、少しずつ利用者が増えていきました。
私たちは、単なる働く場所(空間)を提供するだけではなく、多様な人々が集い、学び合い、新しい価値が生まれる場を意識しながら、コワーキングスペースを育てています。その結果、女性起業家などでつくる「スペシャリスト女子会」、若手クリエイターたちが集う「しろくまギルド」、アクティブシニアのサードプレイス「ハーベストカフェ」など、さまざまなコミュニティが生まれました。
地域の「共育」プラットフォームを目指す
これまでの活動を通して、全ての根っこは「人」であり、人が成長するための「学びや気づきの場」の必要性はますます高まっていくと確信しています。これからも、「全体最適・未来最適」に向かって、地域の多様なプレーヤーたちが共創できる場として、地域になくてはならない人財育成のための「共育」プラットフォームをつくることが次なる目標です。
多様な価値観や働き方、文化が複雑に絡み合う時代の中で、SDGsの理念「誰一人取り残さない社会」の実現のために自分にできることは何かを常に問いかけながら、これからも新しい挑戦を続けたいと考えています。
会社データ
社名:一般社団法人グロウイングクラウド
所在地:福島県郡山市緑町16-1
電話:024-922-1377
創業:2014年
事業概要:コワーキングスペースの運営、起業家育成、人材育成の場づくり、各種セミナー・イベント・コミュニティの企画運営
HP:https://glowingcloudkoriyama.jimdofree.com/
【郡山商工会議所】
※月刊石垣2022年9月号に掲載された記事です。
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