基本的な考え方
・ コロナ禍の長期化に加え、資源・原材料価格の高騰などによる物価上昇が中小企業経営に大きな打撃。また、人材確保・維持に向けた防衛的な賃上げを余儀なくされている。中小企業の売上高経常利益率は約3%、労働分配率は約7割、損益分岐点比率は約9割。コスト上昇の中、価格転嫁が困難な中小企業は収益が圧迫、成長投資を行う原資を確保できず、大変厳しい経営環境に直面
・ 今、わが国は停滞から変革への大転換期を迎えており、中小企業は生き残りを懸けて、設備投資、研究開発などによる付加価値拡大に向け、自己変革力を最大限発揮していかなければならない。また、人口減少に直面する地方では官民協働による地方創生への取り組みが求められている。「中小企業の自己変革への挑戦」と「地方創生の取り組み」を税制面から強力に後押しすることが必要
・ 中小企業は、わが国企業数の99・7%、雇用の約7割、税や社会保険料支払額の約5割を占めるなど、雇用、生産、消費、財政などの面で大きな役割を果たしている。地域に目を向けると、地域住民にとって必要な生活インフラとしての機能や、コミュニティ活動、まちづくりを進めるプレーヤーなど、中小企業は大きな役割を果たし、地方創生に欠かせない存在となっている。地域経済の好循を構築するためにも、中小企業の意義を再認識し、成長の源泉として位置付ける必要がある。中小企業の活力強化なくして、日本および地域全体の成長はあり得ない
Ⅰ 中小企業の自己変革への挑戦を後押しする税制
1.中小企業の設備投資などの挑戦支援
(1) 中小企業経営強化税制の延長・拡充
(2) 中小企業投資促進税制の延長
(3) 中小法人の軽減税率は税率15%のまま確実に延長・恒久化すべき
(4) 償却資産に係る固定資産税の廃止・特例措置の継続や新たな措置による負担軽減
(5) 商業地等に係る固定資産税の負担軽減措置の継続
(6) 欠損金の繰越期間(10年間)の無期限化
(7) 「パートナーシップ構築宣言」の登録企業に対する税制上のインセンティブ付与
(8) 建物などの償却資産における減価償却方法の見直し
(9) 納税猶予に係る延滞税の免除
2.中小企業のイノベーションやDX・GXへの挑戦支援
(1) 研究開発税制・中小企業技術基盤強化税制の延長・拡充
(2) DX投資促進税制の延長・拡充
(3) デジタル化投資を促す少額減価償却資産特例の拡充・恒久化
(4) 中小企業のデジタル化促進に向けた税制措置の創設
3.中小企業の人への投資による人材の確保・定着支援
(1) 足元の業況が厳しい中でも賃上げに取り組む中小企業が活用できるよう、中小企業向け賃上げ促進税制の繰越控除措置の創設など
(2) 中小企業による従業員教育や後継者教育を促進する税制措置の創設
(3) リカレント教育やリスキリングを後押しする税制措置の創設
4.創業・スタートアップの促進
(1) 創業へのインセンティブを高める業績連動給与の適用対象の拡大
(2) 地域における起業・創業の促進
①創業後5年間の法人税の減免措置
②創業資金に係る贈与税非課税枠の創設
(3) スタートアップの促進
①ストックオプション税制の拡充
②オープンイノベーション促進税制の拡充
③スピンオフ税制の拡充
④エンジェル税制の拡充・手続き簡素化
⑤国外転出時課税制度の見直し
⑥事業成長担保権(仮称)の創設に伴う措置の実施
(4) 暗号資産に係る期末時価評価課税の見直し
Ⅱ 消費税インボイス制度の導入延期を含めた対応
(1) 政府による十分な「検証」の実施
(2) 政府による事業者への普及・周知の徹底
(3) インボイス制度導入の影響最小化策の実行(徹底的な申告書の簡素化など)
(4) 検証結果や中小企業経営の実態、免税点制度の創設趣旨などを踏まえた制度導入時期の延期
Ⅲ わが国のビジネス環境整備などに資する税制
1.中小企業の成長や経営基盤強化を阻害する税制措置への反対
(1) 外形標準課税の中小企業への適用拡大には断固反対
(2) 留保金課税の中小企業への適用拡大には断固反対
(3) 新規開業や立地促進、賃上げなどを阻害する事業所税の廃止
(4) 時代に即していない不公平な税制である印紙税の速やかな廃止
(5) 事業者の納税事務負担を増加させる個人住民税の現年課税化には反対
(6) 二重課税の見直し
(7) 地方自治体における法人への安易な超過課税・独自課税導入には反対
(8) リース会計基準の見直しにより中小企業の税務へ影響を及ぼすべきではない
(9) 外国人労働者に対する個人住民税の特別徴収義務の強化には反対の対応が望まれる
(10) 「経済と環境の両立」の観点から具体的・現実的なカーボンプライシングの議論を
2.デジタル化への環境整備
(1) 改正電子帳簿保存法による電子取引のデータ保存義務化の見直し
(2) 中小企業のバックオフィス業務のデジタル化に向けた措置の実施
(3) 電子申告・電子納税などの行政手続きのデジタル化推進
改正電子帳簿保存法の周知・PRなど
3.納税環境整備・納税協力負担の軽減
(1) 行政の効率化、中小企業の納税協力負担の軽減による社会全体での生産性向上
(2) 納付加算税の軽減
(3) 個人事業主に対する青色申告のインセンティブ拡充
(4) 租税教育と簿記・会計教育の実施
Ⅳ 地方創生と内需拡大を後押しする税制
1.地方創生と内需の拡大
(1) 地域未来投資促進税制の延長・拡充
(2) 長期保有土地などに係る事業用資産の買い換え特例の延長・拡充
(3) 都市再生促進税制および市街地再開発事業等に係る特例の延長・拡充
(4) 地方拠点強化税制の拡充
(5) 社会課題解決に資するクラウドファンディングの活用促進
(6) 飲食需要の喚起に資する交際費課税の見直し
(7) 複雑で過重な自動車関係諸税の抜本的見直し
(8) 内需拡大に資する住宅関連税制の延長
(9) 低未利用地などの利活用促進のための税制措置
(10) 不動産特定共同事業等に係る税制措置の延長
(11) 土地譲渡益重課制度の課税停止の延長
(12) 優良住宅地造成などのために土地などを譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減措置の延長
(13) まちづくり会社などの活動基盤の強化に資する税制措置の創設
(14) まちづくりに資する不動産税制の延長
(15) 不動産流通課税の見直し・多重課税の排除
(16) 地域企業主導によるPFI事業の推進に向けた固定資産税などの特例措置の拡充
(17) まちづくりの重要な担い手である芸術文化施設などに対する税負担の軽減措置の創設
(18) 商店街振興組合の基盤強化に資する支援措置の検討
(19) 地域活性化に資する寄付金の損金算入限度額の拡充
(20) 地域公益に資する事業を実施する商工会議所などへの寄付などの全額損金算入の実現
2.防災・減災への対応
(1) 中小企業防災・減災投資促進税制の延長・拡充
(2) 災害ハザードエリアからの移転促進のための特例措置の延長・拡充
(3) 防災・減災対策を促す税制措置の創設
Ⅴ 円滑な事業承継の実現に資する税制
1.事業承継税制の見直し
(1) 書類の一本化・書類の提出先のワンストップ化
(2) 制度適用対象の拡大
(3) 制度適用後の不安解消
(4) 事業承継税制のさらなる周知・PR
2.事業承継の円滑化に資する税制
(1) 贈与税の暦年課税制度と相続時精算課税制度の在り方の見直し
①贈与税の暦年課税制度の維持・見直し
②相続時精算課税制度の見直し
(2) 経営承継円滑化法における民法特例(遺留分の特例)の適用対象範囲の見直し
(3) 相続時精算課税制度を利用した者に対する特例事業承継税制の適用
(4) 信託を活用した株式の納税猶予制度の適用化
(5) 経営者個人が保有する事業用資産の会社への売却に係る税負担の軽減
(6) 担保提供している個人の事業用資産の評価方法の見直し
(7) 分散株式の集中化のための税制措置など
(8) 取引相場のない株式の評価方法の抜本的見直し
(9) 純資産価額方式における株式評価の改善
(10) 現物出資など受入れ評価差額に係る規定の撤廃
Ⅵ 中小企業の活力強化と経営基盤強化を後押しする税制
1.中小企業の活力強化と経営基盤強化
(1) 欠損金の繰戻し還付の対象期間の拡充
(2) 地方税における繰戻し還付制度の創設
(3) 賞与引当金、退職給与引当金の損金算入制度の復活
(4) 中小企業向け租税特別措置の適用制限の見直し
(5) 中小企業の国際化支援に資する税制措置
(6) 研究開発型スタートアップの支援に資するパテント・ボックス税制の創設
(7) 私的年金の普及・拡大
(8) 研修旅行や従業員レクリエーション旅行の非課税要件緩和
2.消費税制度の見直し
(1) 軽減税率制度は将来的にはゼロベースで見直すべき
(2) 消費税の滞納防止、事業者の経理事務負担の軽減措置
(3) 消費税の非課税取引における事業者負担の軽減措置
(4) 免税手続カウンターにおける特定商業施設要件の緩和
3.事業再生・再編の後押し
(1) 協議会関与の下での事業再生などの私的整理が無税償却の対象となることの明確化
(2) 企業再生税制における適用要件の拡大
(3) 資産の評価損益の計上要件の緩和
(4) 経営者の私財提供に係る特例の要件などの緩和
(5) サービサーによる債権買い取りに係る債務免除益の繰り延べ
(6) 青色繰越欠損金の繰越期限の停止、期限切れ青色繰越欠損金の損金算入
(7) 保証債務を履行するために土地建物等を譲渡した場合の特例の柔軟な運用
(8) 再生計画に基づき新規取得した固定資産に係る固定資産税の軽減
(9) 経営者保証に関するガイドラインによる一体型整理の場合の無資力判定の明確化
(10) 事業承継・事業再生一体型計画の場合の特例措置の創設
(11) 計画期間中の納付税額の軽減および延滞税の免除
(12) 特別清算による債権の切り捨てに係る貸倒損失の損金算入
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