日本商工会議所の三村明夫会頭は9月30日、定例の記者会見に臨み、岸田文雄首相が閣議で策定を指示した総合経済対策について、「足元の円安や物価上昇などによる困窮者に対する支援策」「潜在成長率の底上げに向けた対策」「円安対策」の3点の必要性を指摘した。取引適正化のさらなる進展に向けては、「経営者のモラルとそれを担保する仕組みが必要」と強調。「パートナーシップ構築宣言」の実効性確保のために、BtoBの動きがBtoCにも波及し、「商品の価値に見合った適正な価格で取引するという雰囲気を醸成しなくてはならない」と述べた。
三村会頭は、政府が取りまとめる総合経済対策に向け、「日商として各地の声を踏まえ政策要望を公表する予定」とした上で、「困窮者支援」「潜在成長率の底上げ」「円安対策」の3点の必要性を強調。1点目として、「足元の円安や物価上昇により、真に困窮する方々に対する支援が必要」と述べ、「人流を回復させる対策」に加え、「物価高騰への対策としては、パートナーシップ構築宣言のさらなる推進による円滑な価格転嫁に向けた環境整備が求められる」と指摘した。
「日本の潜在成長率の底上げに向けた対策」については、「先行きの不透明感が高まる中で、需要を拡大し、企業の成長期待を高めるような対策が求められる」と強調。「円安対策」については、「為替介入のみで現在の円安のトレンドを反転させることは難しい」と述べ、「円安を逆手にとって、例えばインバウンド観光の推進や、中小企業の輸出拡大など日本経済を活性化する方向での活用が求められる」と指摘した。
政府の財政出動については、「本来、マーケットメカニズムで決まるべき価格を政策によってコントロールすることについては簡単に結論が出る問題ではない」と指摘。「本当に困っている人々に給付を行う政策が一番好ましいのではないか」と述べた。
取引適正化の進展に向けては、「経営者のモラルとそれを担保する仕組みの両輪が必要」との考えを示すとともに、「宣言が実効性を持つためには、経営者のモラルに訴えるだけでなく、行政指導などの措置も必要だ」と指摘。「これからもパートナーシップ構築宣言に心を入れる運動が展開されることを期待したい」と述べ、実効性確保のためには、「魅力的な商品・サービスを生み出し、付加価値に見合った適正な価格で取引することやデジタル化によるコスト削減などが必要だが、最も効果的で直接的な方策は価格転嫁だ」と強調した。
10月11日から始まる「全国旅行支援」については、「コロナ禍で途絶えた首都圏から地方への人の流れを再開し、大きな観光需要を生むことが見込まれるので大歓迎だ」と述べるとともに、「同じタイミングで水際対策が緩和されるので、インバウンドも本格的に再開することが期待される」と強調。一方で、コロナ禍の3年間で観光関連事業の従事者が減少している点に触れ、「急激に回復する観光需要に対応するのが難しい、という新たな問題も起きている」と指摘し、「コロナ前の水準まで経営の状況が回復するには時間が必要であることから、息の長い支援をお願いしたい」と述べた。
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