経済産業省は8月31日、2024年度予算概算要求・税制改正要望を発表した。このうち、中小企業対策費は1336億円を計上。「物価高、人手不足などの厳しい経営環境への対応」「環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者などに対する成長支援」「事業承継を通じた変革の推進」「社会課題解決をはじめとした地域における取り組みへの支援」など四つの柱で23年度当初予算に比べて246億円を上積みしている。
中小企業庁では、「令和6年度中小企業・小規模事業者・地域経済関係概算要求等のポイント」を発表。「物価高や、構造的な人手不足など、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者などに対する価格転嫁対策や資金繰り支援、省人化投資支援などに万全を期すとともに、持続的な賃上げに向けた環境整備を図る」とする対応の方向性を示した。
その上で、GX/DXなどの産業構造転換が進む中、中小・小規模事業者の成長に向けた取り組みを支援するため「予算・税などの政策手段を総動員する」考えを提示。地域の社会課題解決に向けた取り組みや企業立地を促す工業用水道の整備など地域経済活性化に必要な予算も盛り込まれている。
原材料価格などのコスト上昇分の適切な価格転嫁をはじめ、中小企業の取引適正化を支援する「中小企業取引対策事業」では36億円(23年度当初予算24億円)を要求。下請取引の改善指導などの立ち入り件数増や下請Gメンによるヒアリング強化により、価格交渉と価格転嫁が定期的になされる取り組み慣行の定着を目指す。
また、「価格交渉促進月間」(9月・3月)を実施するほか、下請振興法に基づく「指導・助言」、企業名公表を通じた実効性向上、下請Gメンによるヒアリング、「パートナーシップ構築宣言」の実効性の向上にも取り組む。
中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援などを実施する「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」には223億円(同157億円)を計上。民間ゼロゼロ融資の返済が本格化することなどを踏まえた再生計画策定件数の増加、サプライチェーン事業承継の促進などによる支援センター対応案件数の増加が見込まれるため、前年度から大幅に増額している。
賃上げに向けては、構造的・持続的な賃上げの実現に向け、赤字の状況などでも賃上げに取り組む中小企業などを対象とした繰越控除措置を創設。省人化投資支援に向けては、 令和4年度の補正予算に計上した「中小企業生産性革命推進事業」で設備投資、IT導入、販路開拓などの補助を通じ、中小企業・小規模事業者の生産性向上などに向けた取り組みを支援するほか、「事業再構築補助金」で新分野展開、業態転換などの事業再構築に挑戦する中小企業などを支援する。
「地域の中堅・中核企業の経営力向上支援事業」では27億円(同25億円)を計上し、専門家・企業間のネットワーク構築や「地域の人事部」の取り組み支援や地域での即戦力DX人材を育成。大学などと連携して行うものづくり基盤技術や高度なサービスに関する研究開発支援、「イノベーション・プロデューサー」を通じたイノベーションの創出支援を行う「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)」では、134億円(同133億円)を要求している。
事業承継の円滑化に向けては、法人版・個人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限の延長や、中小M&A準備金税制の延長などを実施。後継者同士の切磋琢磨できる 場を創出し、既存の経営資源を生かした新規事業アイデアを競うイベントを開催する「後継者支援ネットワーク事業には、5.5億円を計上した。
ソーシャルビジネスを支援する地域の関係者を中心としたエコシステムを構築するため社会課題解決事業モデルを実証する「地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム 構築実証事業」は新規に6.7億円を要求。激甚化する災害などへの対応のための強靱化や、重要な産業の立地に伴う水需要への対応のための新設などを進める「工業水道事業費 補助金」には47億円(同20億円)を計上している。
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