「小鯛寿司」は古くから食べられている和歌山県の郷土寿司で、同県を代表する名物土産の一つ。コダイの尾を付けたまま握った形が、ふくら雀のように見えることから、別名「雀寿司」ともいう。地元で“チャリコ”と呼ばれる紀淡海峡のコダイを、丸ごと秘伝の合わせ酢で締めて握った。艶のある白い皮にほんのり紅色が差す身は、上品で美しく、高級和菓子のようにも見える。
寿司は八角形の容器に放射状に並べてあり、中心には五匹の尾が花びらのように重なり合っている。塩味を利かせてコダイの甘みを引き立てる昔ながらの調理法。しょうゆは付いておらず、そのまま食べる。コダイ本来の味を知ってほしいという熱い思いが伝わってくる。
ふわりと柔らかく握ったシャリと、しなるような歯応えが特徴のコダイとのハーモニーが絶妙だ。下に敷いた笹葉の香りもほのかに感じられる。確かに、調味料など邪魔になるほど完成した味である。
食べ応えたっぷりの小鯛寿司だが、コダイを三枚におろした「小鯛雀寿司」もあり、駅弁でも大人気。こちらは1898(明治31)年から販売する超ロングセラー商品。食べ比べてみるのも楽しい。
Data
社名:株式会社和歌山水了軒(わかやますいりょうけん)
所在地:和歌山県和歌山市太田1-14-6
電話:073-475-6150
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