大船渡市は、断崖、奇岩が連なる三陸復興国立公園の南部に位置し、岩手にしては珍しく、冬場にもほとんど積雪のない地域です。親潮・黒潮の交わりが生み出す豊かな漁場に恵まれ、1年を通じ新鮮でさまざまな海の幸が味わえるまちでもあります。東日本大震災では壊滅的な被害を受けましたが、現在では新しいまち並みと商店街区ができ上がっています。その一画には大船渡商工会議所が所有する復元した千石船「気仙丸」が陸揚げ展示されていて、まちの新しいランドマークとなっています。
わが社は、祖父の代までは精麦業を営んでいましたが、「貧乏人は麦を食え」の池田勇人元首相の舌禍に象徴されるように、食卓の主役が麦から白米に代わっていく時代の中、1961年、父の代にボランタリーチェーン「主婦の店」に加盟し、スーパーマーケットを創業しました。79年には、本店を5階建ての「ショッピングプラザマイヤ」として総合量販店化しましたが、3・11の大津波では本店を含め6店舗と2施設が全壊してしまいました。
これを機に、総合量販店から食品スーパーへ事業資源を集中。「暮らし提案」「全員参加」「グッドカンパニー」を掲げ、現在、岩手、宮城に20店舗を展開しています。また、2014年には山形、青森、福島の同規模スーパーと統合し、4社で持ち株会社マークスホールディングスを設立しました。現在、ホールディングス全体としては、東北各地に97店舗を展開し、売上高も統合当初に比し1.5倍ほどになっており、東北においてはある程度のプレゼンスを得ているものと思っています。「透明性のあるガバナンス」「トップ相互の個人的信頼による各社の事業経営の尊重」「スケールメリットの追求」を共通理念として4社フラットな関係を築き上げています。今後も地域に密着し地方色を鮮明にしながら、大手中央資本に何とか伍していけるようにと考えています。
「企業はトップの器以上には大きくならない」という言葉が、決断のたび心に引っかかり、自分を叱咤(しった)するものとなっています。器を大きく、懐を深くするには、遊びも大いに大事です。ゴルフは月に最低3回と心掛け、旅行、音楽鑑賞、ワインを楽しむ会と、社員からはよくそんなに時間が取れますねと不思議がられています。後期高齢者となりましたが、サミュエル・ウルマンの「青春とは心の若さである」という詩のごとくと思っています。
最新号を紙面で読める!