内閣府は2月28日、経済レポート「世界経済の潮流2023年Ⅱ~中国のバランスシート調整・世界的なサービス貿易の発展~」を公表した。「2023年後半の世界経済の動向」と「世界の貿易・投資構造の変化」の2章構成で、「欧米の景気」「中国の景気とバランスシート調整」「世界経済のリスク要因」「財貿易の動向」「サービス貿易・デジタル貿易発展の背景」「直接投資の動向」などについて考察。世界経済の動向については、「ユーロ圏や英国など一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している状況にあると考えられる」と分析している。
世界経済のリスク要因のうち、中国については、「不動産市場停滞が最大のリスク。住宅ローンなどの不良債権が証券化され、リスク拡散の可能性がある」との見方を示した。米国については、「金融引き締めを受け、商業用不動産価格が下落。商業用不動産ローンの返済延滞・不履行が増加した場合、中小銀行の資産を毀損(きそん)する可能性がある」と分析。緊迫する中東情勢のリスクについては、「スエズ運河を回避し、喜望峰周りとなる動きが増え、物流コスト上昇の動き」を指摘している。
また、24年は世界各国で選挙が予定されていることから、「貿易・投資を通じて各国の経済に影響を与える可能性など、国際政治情勢の変化が世界経済に与える潜在的なリスクについて注視する必要がある」との見解を示した。
今後の財貿易については、「GVC(Global Value Chains)における米中の関係性は深く、米中貿易摩擦のさらなる高まりは両国にも大きな影響が生じる可能性がある」と指摘。また、「米中貿易摩擦は輸出規制などの強化が継続するものの、その規制対象の明確化が進む」として、「米国では経済安全保障の観点からの規制強化と経済活動の両立が図られる可能性」もあるとの見方を示した。
サービス貿易の動向については、「サービス部門に競争力のある国においては伸び率が高く、引き続き各国の成長をけん引することが考えられる」と分析。「データローカライゼーションをはじめとしたデータ流通規制は程度の差はあれ強化する傾向の国・地域が多く、今後のサービス貿易の伸びを抑制する可能性がある点には留意が必要である」と展望している。
今後の直接投資については、「米中貿易摩擦の継続に加え、国内回帰やフレンドショアリング、ニアショアリングが進められる中、全体の伸び率が低下傾向となるとともに、半導体など戦略的分野における地域的分断化が進行しており、今後もそうした流れは継続する可能性がある」と指摘。今後の貿易・投資構造の変化を踏まえ、従来の財中心の貿易から、サービス貿易のフロンティアを開拓し、「各国の競争力を活用したサービス輸出」「サービス輸入を活用することで他国の競争力を取り込み、自国の経済活動の生産性向上や高付加価値化を高めていくことが望まれる」との考えを示している。
詳細は、https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa23-02/sa23.htmlを参照。
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