消費者の選択肢が広がった年
10月1日にスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」は、12月で2カ月が経過し、登録加盟店数86万店、登録申請数95万店を突破しました。当初の予想を大幅に超える多くの中小・小規模事業者など(中小小売店など)に対してキャッシュレス決済導入を後押しすることができ、また消費者がキャッシュレス決済を積極的に利用する姿を「当たり前の光景」として目にする機会が増えつつあり、裾野の拡大と認知度の一層の向上を実感しています。2020年からは全国各地で消費者向けの講座を開催します。
制度開始後に発生した登録待ち状況はおおむね解消されつつありますが、まだ個別の事情により時間のかかっている申請案件もあります。引き続き、より多くの店舗に速やかに参加いただけるよう、決済事業者と連携して円滑な登録手続きを進めます。
振り返れば、「未来投資戦略2017」において、わが国のキャッシュレス決済比率を当時の20%から40%へ倍増させる目標を掲げて以来、政府も多くの自治体も普及促進に取り組んできました。そして、2019年はポイント還元制度を通じてキャッシュレス決済の認知度が大きく向上するとともに、数々の新サービスが誕生したことで消費者に対する「導入や利用の選択肢」が広がりました。
こうした普及拡大の一方で、さまざまな課題も顕在化した年でした。例えば、中小小売店などで従来からいわれてきた「三つの壁」(手数料・導入コスト・入金タイミング)に加え、不正利用の防止など安全・安心への配慮、システム障害なく利用継続できる安定性、年齢・生活習慣・地域性などの違いから生じる情報格差など、新たな課題として浮き彫りになった年でもありました。
地域の課題解決につながる
2020年は東京オリンピック・パラリンピック大会の開催でインバウンド観光客の増加が見込まれており、キャッシュレス決済の一層の普及とグローバル化の進展が予想されています。キャッシュレス決済については、さらにその先を見据える年になると思われます。単なる「現金に代わる支払い手段」と捉えるにとどまらず、店舗運営におけるさまざまな場面で業務効率化のきっかけとして、キャッシュレス決済の導入や活用を検討いただければと思います。
また、「会計はレジでするもの」という概念自体がなくなるかもしれません。例えばスマホで事前注文し、決済まで済ませて実店舗で商品などを受け取るモバイルオーダーや、セルフレジ、無人レジなど、キャッシュレスであることが前提の業務設計が考えられます。
特にキャッシュレス決済のデジタルデータを蓄積・分析することで新市場を創出するなど、今後の経営戦略を考える上でとても重要なツールになると思われます。キャッシュレス決済を基軸にした、地域の課題解決、ひいては連携強化・発展へとつながることを期待します。
過去に最先端だったインフラが今では当たり前となり、生活の一部になっている事例が数多くあります。例えば、手紙やはがきは電子メールやSNSに取って代わり、鉄道切符が交通系電子マネーに代わるなど、その変化のスピードはますます加速しています。私たちの将来の生活をより効率的で便利にするツールとして、キャッシュレス決済を活用いただければ幸いです。(一般社団法人キャッシュレス推進協議会) =おわり