今年度のYEGフラッシュは、商工会議所(親会)とYEGの良好な関係をご紹介します。タイトルの「藍と青」は、渋沢栄一翁の生家の家業が藍農家であったことから、藍を親、青をYEGとし、一般的にいわれる師弟のことではなく、「君子曰く、学は以て已(や)むべからず(学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されて優れたものになる)」という本来の意味に立って取材します。
7世紀に大和朝廷から100艘を超える水軍の大船団が遠征に来港したと、日本書紀に記された歴史ある地域・能代。良質な秋田杉を用いた産業で大いに栄え、近年は、バスケットボールのまちとしても名高い。この地で長く市民に愛される「のしろみなと祭り」を主催してきた能代商工会議所青年部と、それに寄り添う能代商工会議所の思いを取材し、未来の姿を探った。
親会からのグリーンライト「いいぞ、どんどんやってくれ」
取材班からの「能代商工会議所青年部(以下、YEG)の活動にブレーキをかける場面はありますか」という質問に、能代商工会議所(以下、親会)の佐藤肇治会頭は「ないですね」と言いながら笑った。「一度もないって、本当ですか」と問うと、YEGの秋元秀太郎会長に向かって「断ったことあったかな」と佐藤会頭が聞き、即座に「ないですね」と秋元会長も笑う。
2022年に佐藤会頭体制に代わってからも、親会は引き続きYEGの活動へのバックアップを惜しまない。「話が来たら、いいぞ、ちゃんと支えるからどんどんやってみなさいと。無茶(むちゃ)なことでなければ基本的にチャレンジさせるというスタンスです。うちはこれが普通だよね」という佐藤会頭の言葉を受け、秋元会長も「そうですね、YEGとしては伸び伸びできてありがたいです」と答える。佐藤会頭自身もYEGのOBであり、理解は深い。そして、両者が醸し出す空気感は終始自然体で穏やかだった。
YEGから親会への報告・連絡・相談は緻密に行われている。それが親会からの信頼を得るコツだと理解している秋元会長は、さまざまな情報を親会へ共有する。とりわけ対外的な事業については、佐藤会頭と事務局に事前に全て報告して意見を求めている。親会の常議員会にオブザーバーとして参加する秋元会長は、「われわれYEGは、親会の中の組織団体という位置付けです。だからこそ、親会にはささいなことも大きなことも報告するし、女性会とともに、互いに組織の一員として協力するのが普通なのです」と語った。親会の総会にはYEG会長が常に参加し、親会もYEGへ経営に関する情報を定期的に提供する仕組みがある。
そのような体制の中、YEGが主催するメイン事業として30回の節目を迎えた「のしろみなと祭り」は、親会の力強い後押しを受け、今年も新たな試みに挑んだ。
最終判断も任される主催事業の舞台裏
この祭りは、重要な地域資源である能代港を活用してまちを活性化させるため、当時のYEG委員長であり、現在は親会の清水証副会頭が市役所などと協議を重ねて始まった事業だ。今では地域に根差し、市民に愛されている。
今年の新たな試みは、能代港開港50周年記念事業として位置付けられたブルーインパルスによる展示飛行と、秋田県内の約40台ものキッチンカーの大集合だ。昨年は海上自衛隊護衛艦「のしろ」の艦内見学で大変にぎわったが、今回、陸海空の自衛隊がそろって参加してくれ、色とりどりのキッチンカーも来場の呼び水となった。会場はアルコール飲料全面禁止のルールも徹底され、子どもにも優しい。だが、ブルーインパルスを一目見ようと県内外から多くの来場者が殺到し、高速道路の出口から会場まで大渋滞となった。課題は残ったが、初夏の能代港には来場者の満開の笑顔が咲き誇った。
また、公共のバース(港湾施設内の停泊場)を2日間止めるのは大変なことである。この祭りには30年の歴史があるため関係各所の理解が深いことは大きな助けとなっているが、それ以上に助けとなり支えてくれるのは、親会の理解と支援だ。
2日目は朝から大雨となったため、一部事業を除いて中止を決定した。この最終判断を主体的に下したのはYEGだ。報告を受けた親会も、その決断を尊重している。秋元会長も佐藤会頭もそれが「普通」だと言うが、行政機関や自衛隊といった関係各所が大きく関わる事業で、開催の可否をYEGが単独で判断することは、なかなかできることではない。日頃から築かれている信頼関係のなせる業だろう。
笑顔を未来へつなぐには若い力の成長が鍵
今年のYEGは事業や会議への会員の出席率が高く、例年にも増して勢いがある。親会や女性会、OB会を交えた親睦会も開催され、親会とYEGの間の風通しはさらに良くなった。のしろみなと祭りも7月に成功を収め、YEGの活躍と成長した姿に佐藤会頭も目尻を下げる。
そうした親会だが、強い危機感を抱いているのは会員数の減少という課題である。15年前には約1800社を数えていたが、現在は1198社にまで激減してしまった。そこには、事業承継が難しいといった事情がある。対策は待ったなしの現状に、佐藤会頭は若い力に期待を寄せてこう語った。 「今は歴史と伝統文化があるけれど、いずれ人がいなくなってしまえば祭りもできなくなってくる。能代でやりたいことがあるなら、絶対にやった方がいい。若い人は伸びるのだから、われわれは絶対にそれを潰さない。バックアップしていくべきだし、どんどん若い視点で意見を出してもらいたい。人口や産業が減っている状況でも若い力が頑張ってくれれば、その先が必ずあるのですから。自分も会頭職を預かる身です。次にバトンを渡していかなければならない。われわれの世代は、次の世代が入ってきやすい雰囲気をつくることが大切だと思っています」
親会は、YEGが未来の能代をつくると確信している。 「のしろみなと祭りの来場者数は去年初めて1万人を超え、今年は2万5千人を大きく上回りました。経済効果も大きい事業です。課題を改善しながら、地域のためにもこの祭りを40回、50回と後輩につないでいきたいですね」と秋元会長は力強く語った。
【能代商工会議所】
会 頭 : 佐藤 肇治
会員数 : 1198人
設 立 : 1947年
住 所 : 秋田県能代市元町11‒7
HP:https://noshiro-cci.jp/
【能代YEG】
会 長 : 秋元 秀太郎
会員数 : 52人
創 立 : 1987年
スローガン :「Be Strong=強くあれ~最高の仲間と共に〜」
HP:https://www.noshiro-yeg.jp/
編集後記
恒次明宏(岡山YEG)
「のしろみなと祭り」が30年も続いていることに驚きました。伝統を大切にしながらも、ブルーインパルスやキッチンカーなど新しい試みを取り入れている姿勢は、私の地元、岡山の「うらじゃ祭り」と似ていると感じました。地域の絆を深めながら次世代へ受け継いでいく努力が見えて、とても共感できます。そして、地域が笑顔でつながるイベントをぜひ続けてほしいと思います。いつかこの祭りを訪れ、実際にその雰囲気を体感してみたいです。
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報☆ブランディング委員会 石垣チーム/写真提供:能代商工会議所青年部
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