日本商工会議所の小林健会頭は11月4日、記者会見で新政権への期待について、「経済の円滑な運営には政治の安定が不可欠。まずは、安定した政策推進が可能となる政治インフラを不断に整備してもらいたい」と求めるとともに、地域経済の活性化などに向けた対話の充実に意欲を示した。
要望の方向性については、「基本的にはこれまでと変わらない。デフレ経済からインフレの循環経済へと移行しつつある一方で、実質賃金の上昇が十分に進んでおらず、この実質賃金を着実に引き上げていくことが重要」との考えを表明。最も重要な政策課題として、「中小企業の〝稼ぐ力〟の強化」を挙げ、「中小企業の自己変革などに向けた取り組みを国がどのように支援できるかが鍵」と強調した。
価格転嫁については、「取り組みがある程度進んだ段階で、上昇カーブが緩やかになる、いわゆる『プラトー状態(一時的な停滞状態)』にあるのではないか」と分析した上で、「最終的には当事者の意識にかかっている」と強調。大企業の購買担当者や経営トップが強い意識を持つ重要性を指摘した。
外国人政策については、商工会議所調査において、中小企業の4社に1社が外国人を雇用しているとの結果が出たことに触れ、「日本はすでに外国人と一緒に働き、生活をしなければならない状況になっている」と指摘。「排斥は論外。日本社会に住む一員として法律を守ることは最低限のことだが、文化的な面も含めた共生社会の実現を図っていくことが必要」との考えを示した。
中小企業の賃上げ環境については、「当事者である企業経営者が頑張らざるを得ない。頑張って賃上げをしないと人を雇えないという現状は、政府や日銀が考えているよりも切実だ」と強調。「中小企業が身銭を切り、心血を注いで、一生懸命に賃上げを行うのだから、『賽(さい)の河原の石積み』にはならないようにしてほしい」と述べるとともに、政府に対し、政策の適切な調整と実行を強く求めた。
