テレビの準キー局で採用を担当する女性の話を聞いて驚いた。「来春新卒の採用活動は昨年末に終わった」というのだ。民放の採用活動が早いのは知っていたし、インターンシップで目立つ学生に内々定を出すのなら分かるが、全体の採用も終了していた。就活の前倒しが進んでいる実態を垣間見た気がした▼
ところが早めに採用を決めた新入社員もすぐに退職するケースが少なくない。厚生労働省の調査では、新規大卒就職者のうち、3分の1以上が3年以内で離職している。高卒を含め、企業規模が小さくなるほど離職率が高まる。苦労して採用した若手に辞められては中小企業経営者も落胆するばかりだろう▼
中小企業の求人活動を支援するキャリアフォローアカデミーの藤塚優子代表取締役は、人材の定着には「同期のつながり」が重要だと指摘する。若手研修を実施する企業は多いが、藤塚氏は福利厚生制度などの枠内で「業務時間内に同期のランチ会を補助する」ことを提案する。上下関係に基づく研修会よりも、肩の凝らないランチ会の方が同世代の頑張りを実感しやすいからだ。若手従業員の資格取得を支援する仕組みをつくり「この会社なら自身のキャリアアップにつながる」と思わせる方法も有益という。いまひとつ大事なのが若手を褒めること。ミスの指摘や改善策の助言も大切だが、褒める行為は相手をよく見ていないとなかなかできない。部下を褒めて実力を伸ばすことが「管理職を評価するポイントではないか」と藤塚氏は指摘する▼
企業の採用活動は今後本格化する。他社と遜色ない初任給を提示するだけでなく「働きやすさ」「キャリア支援」を支える姿勢を企業側が示すことも考えたい
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)