先の衆議院選挙で大勝した高市総理は、施政方針演説で「希望を生み出す政治を進める」と述べた。希望とは、将来が今よりも改善するという、人々が抱く将来への見通しである。政治が希望を掲げるのであれば、実現までの道筋を明らかにしなければならない▼
第2次安倍政権は経済政策によって人々の意識を変えようとした。デフレからの脱却を目指し、日銀を通じて市場に出回る資金を大量に増やしたが、人々のインフレ期待を十分に高めるには至らなかった。その一因は、既存の経済学とは異なるリフレ派の政策が人々に十分理解されなかったことにある。政策の意図が社会に共有されなければ、期待は形成されない。期待のないところに意識や行動の転換はないのだ▼
米国でも政策の意図が人々に共有されない状況が続く。反リベラルの旗印を掲げて勝利したトランプ政権は「偉大なるアメリカ」の再興を目指しているが、打ち出される政策に対する専門家の批判が強い。違憲判決の出たトランプ関税や地球温暖化規制の緩和などは、長年積み上げられてきた学問的な知見に反するとの指摘がある。科学的知見を軽視した政策は社会の予見可能性を損なう。見通しの立たない社会に希望は生まれにくい▼
希望とは、単なる楽観ではない。実現に向かう道筋を人々が確信し、各人が行動を変える環境が整うことで生まれる。だとすれば、希望を生む政治とは、人々の間に共通の認識を醸成し、それに向けて歩みを進めることができる制度や仕組みを築くことである。政権が希望を創出できるか否かは、政策意図が社会に十分に共有されるか、専門的知見を土台に社会の予見可能性を高められるかどうかにかかっている
(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)