世界の石油供給量の約2割が通過するホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖された。同海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海上交通の要衝にあり、毎日、石油2000万バレルを積んだタンカーが通っている。日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通過している。2018年の同海峡経由の各国の原油輸送シェアは、米国クリッパーデータによれば1位中国18%、2位インド16%、3位日本14%、4位韓国11%、5位米国8%となっている▼
イランによる同海峡封鎖は、米国や同盟国による経済制裁や軍事的圧力が強まる中でイランが自国の影響力を誇示するため取り得る最大の武器である。海峡封鎖という強力なカードは、エネルギー供給の要衝を抑えることで、相手国に経済的・政治的打撃を与える「抑止戦略」の一環と位置付けられる▼
具体的な封鎖手段としては、機雷の敷設、艦艇や高速ボートによる航行妨害、ミサイル配備などが想定される。この政策の中心的役割はイランの精鋭部隊であるイラン革命防衛隊が担い、非対称戦力を活用して優位に立とうとする戦略である。しかし、実際、ホルムズ海峡の全面封鎖はイラン自身にも大きなリスクを伴う。カーグ島から1200万トンの自国の石油輸出も同海峡に依存している。封鎖の仕方によっては自身も打撃を受ける可能性がある▼
また、海峡通行税の徴収などがなされれば、欧米諸国の軍事的圧力を招き、地域紛争が拡大する恐れもある。このように、ホルムズ海峡封鎖はイランにとって強力な交渉手段である一方、「もろ刃の剣(つるぎ)」でもあり、中東情勢と世界経済に深刻な影響を及ぼす可能性をはらんでいる
(政治経済社会研究所代表・中山文麿、4月8日執筆)