チョコレートの原料となるカカオ不足が指摘されて久しい。地球環境の変化、耕作地の減少などが理由とみられるが抜本的な対策を期待するのは難しく、高値が続く恐れがある。今年のバレンタインデー商戦ではカカオ代替チョコを前面に出す百貨店も登場した。また、こうした流行を反映したチョコをすぐに商品化するブランドも少なくない▼
一方で「チョコの原料はあくまでもカカオ」とこだわり「納得したおいしいものを消費者に届ける」という海外発の有名ブランドもある。関係者によれば、今も経営に携わる創業者がそうした信念を決して曲げないというのだ。日本でもファンの多いこのブランドショップには、季節にかかわらず数多くの顧客がいる▼
流行に左右されない姿勢は立派だが、確固たる顧客層がいるからだとも考えられる。「それは違う」と老舗ブランドに詳しい経済団体幹部は反論した。いったん顧客に行き渡った名声を守るのは容易なことではない。カカオの例で分かる通り、経済情勢が変化すれば、必要な原材料を許容範囲の価格で確保するだけでも難しい。そもそも食品、衣料品をはじめ個人が消費するモノは顧客層の加齢に伴い好みが変わっていく可能性がある。まして世代を超えて継続してファンでいてくれるかどうかは全く分からない▼
「主力商品の特長は維持しながら、環境や顧客の変化を見て、微調整することが重要だ」と先の幹部は主張する。あからさまに流行に迎合したと評価されれば、むしろ古くからの顧客が離れていきかねない。新規の顧客を獲得するには多少の新機軸を打ち出す必要もあるだろう。伝統を持つ企業にはベンチャー企業とは異なる苦労があるといえそうだ
(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)