最適なものづくり体制を目指して各種施策を積み重ねた結果、「3年間で自社製造能力を約1・5倍に引き上げることができました」と、北海道美唄市に本社を置く道央メタル社長の海老原達郎さんは言う。しかし手綱を緩めることなく、長期的には、同社独自の中小企業のものづくり管理システム「MID」の実現を目指すという。
複合的な施策により生産効率と勤務時間を改善
金属部品製造の道央メタルは、顧客から要請された各種部品類・構造物を製造するほか、新製造技術および新製品の開発に取り組んでいる。同社は典型的な多品種少量生産型中小企業(月間製造品目4700点、製造個数15万個余)で、その生産体制を支えているのが各種施策である。海老原さんと管理部長の大橋弘昌さんによると、各種施策とは、 ①工程計画 ②進捗管理 ③加工時間実績値(+目標値)の活用 ④生産機械の稼働状況管理 ⑤受注計画・実績の対比 ⑥クラウドによる勤怠情報管理 を指すという。
①工程計画では、溶接がボトルネック工程となっているため、これを基準に生産計画を立てている。「溶接計画リストを全工程で共有しています。溶接計画が決まると、前工程にさかのぼり計算をしてリードタイム(発注から納品までに必要な時間)を短縮、各工程別の生産計画リストを作成します」(海老原さん)
そして、溶接計画リストと生産計画リストを用いて、全リーダーが参加して毎日13時から10分間の打ち合わせをする場を設けることで、「井戸端会議と称していた班長間の個別打ち合わせが不要になり、JIT(ジャストインタイム)生産の効率が上がり、中間仕掛品が半減して生産性が向上しました」(大橋さん)
②進捗管理には、バーコード読み取り方式を採用している。「主要工程では作業員が加工着手指示、加工完了時に製造指図書のバーコードを読み取ることで、進捗状況をリアルタイムで把握できる仕組みです」(海老原さん)
③加工時間の実績値(+目標値)の活用とは、過去のデータの活用である。「品番マスタに蓄積している過去の加工時間を活用して、新規注文にかかる時間の予測をして生産計画を立てる試みをしています」(海老原さん)
④生産機械の稼働状況管理を行っているのは、現段階ではLANでつながっている最新のレーザー複合機とプレスブレーキ。稼働状況を事務所のパソコンで見ることができるが、「今はまだリアルタイムではないので、今後はIoTを活用したリアルタイム管理を目指しています」(海老原さん)
⑤受注計画・実績の対比の把握は会社として重要だ。そこで進捗状況をグラフで毎朝掲示したところ、「営業も工場も実績情報を共有することができモチベーションが上がった」(海老原さん)という。実際、「今年度上半期は8月を除いて計画を達成、半期累計比で23%アップとなっています」(大橋さん)
⑥クラウドによる勤怠情報管理の導入は、ペーパーレスの実現に役立った。タイムレコード管理はICカードか指紋認証、外出中の営業員についてはスマートフォンのGPS位置情報で管理している。「このシステムにより、働き方改革にも適応しやすくなりました」(海老原さん)
IT化推進で中小企業が陥っている迷路から脱出
では同社は今後、IT化をどう進めていくのか。取り組みテーマは3項目ある。
1.時間値管理による生産計画を全工程に適応させ、負荷の平準化を図り、ムリ・ムダ・ムラのない効率的な生産を実現
2.サイコロ型デバイスなどのIoT機器の活用による自動日報の作成(電子サイコロの向きを変えるだけで、作業内容や時間を簡単に記録することができるデバイス)
3.AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション=ソフトウエア型ロボットによる事務作業の効率化)
これらを実現することで、海老原さんは「長期的には中小企業のものづくり管理システム『MID』を実現していきたい」と目標を語る。MIDとは同社の造語で、Mは中小企業(Minor)、迷路脱出など、IはIT、改善・向上(Improve)、完成・統合(Integrate)など、Dは道央メタル、脱出、発展・開発(Develop)などを意味する。つまり、IT活用により道内の中小企業の迷路脱出の先例となり、技能・技術で応えるものづくり企業への脱皮を目指しているわけだ。
会社データ
社名:株式会社道央メタル
所在地:北海道美唄市東5条南6丁目7番28号
電話:0126-62-6921
代表者:海老原達郎 代表取締役社長
従業員:57人
HP:http://www.douou-metal.co.jp/
※月刊石垣2020年1月号に掲載された記事です。
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