政府は3月5日、第36回未来投資会議を首相官邸で開催した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、自身が座長を務める経済産業省の「価値創造企業に関する賢人会議」の中間報告について説明。取引価格の適正化など、大企業と中小企業との共存共栄の構築に向けた着実な取り組みを求めた。安倍晋三首相は、「中小企業を含めた幅広い賃上げの実現には、取引価格への転嫁を進めることが不可欠」と述べ、関係閣僚に具体化へ向けた検討を指示した。
会合で三村会頭は、「大企業と中小企業の関係を修復・再構築すべき時期にきている」と強調。第一の課題として「取引価格」を挙げ、「製造業において、20年以上にわたり、大企業にとって有利な取引価格の状況が続いてきた。その結果、中小企業が生産性を向上させても、不利な取引価格により付加価値が目減りし、設備投資や人件費の引き上げが困難になっている。働き方改革や最低賃金、年金など、負担が累積的に増加しつつある中、この状況を何としても正さねばならない」と強く訴えた。
取引価格の適正化に向けた取り組みとして三村会頭は、個社による自主行動宣言と下請「振興基準」の強化を要請。個社による自主行動宣言については、「特に大企業の経営者による、購買部門を含めたコミットが重要」と指摘し、「これまでも、リーマンショック、超円高など、経営環境が著しく悪化した際に取引価格のシワ寄せが強まった。今般のコロナ問題によって同じ状況に陥ることを防がなければならない」と主張した。
二つ目の課題として、従来の「大企業けん引モデル」において、大企業が2次部品メーカーであるティア2以下を含む系列全体の生産性向上を自らの課題と考え、特にデジタル技術の実装に関して、技術や人材の支援を行うことを挙げた。三つ目として、企業系列や業種を超えた、事業者同士がオープンイノベーションを通じて価値創造を試みることを挙げ、その際の取り組みとして、中小企業の知財保護が極めて重要である点を強調した。
安倍首相は、新型コロナウイルス感染症の影響が深刻になる中、「先般の経済対策の早期執行、本予算の早期成立を図るとともに、こうしたときこそ、経済の下押しリスクを乗り越えるためにも、引き続き賃上げの流れの継続が重要」と述べ、賃上げの実現に向け、取引価格の転嫁を進めていく考えを表明。関係閣僚に「関係省庁と連携しながら大企業と中小企業の共存共栄に向けた取り組みをしっかりと進めてほしい」と指示した。
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