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地方創生に向けた取り組み加速求める 平成28年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望(抜粋) 経済好循環拡大へ 中小企業基本法見直しを

日本商工会議所は16日、「平成28年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を取りまとめ、公表した。意見書では、わが国が長期のデフレからの脱却という重要な転換局面にある今、経済好循環と経済成長を確実なものとすることが重要と強調。挑戦する中小企業の大胆な後押しや、「人口急減と超高齢化」「地方疲弊の深刻化」の克服に向け、地方創生を加速させることなどを求めている。関連記事はこちら

基本的な考え方

わが国は、20年にわたる長期のデフレからの脱却という重要な転換局面にある。経済好循環を実現し、中長期的な経済成長を確実なものとするためには、企業がこれまでの貯蓄主体から転換し、本来の投資主体として行動するとともに、資本蓄積、労働力、生産性の3要素の改善により潜在成長率を引き上げるサプライサイドの政策が必要である。

一方、わが国が直面する「人口急減と超高齢化」「地方疲弊の深刻化」という大きな構造的課題の克服に向けて、地方は、その持てる力を総動員し、地方創生の実現に向けた取り組みを加速させていくことが急務である。

わが国の雇用の7割を担い、付加価値の5割を生み出す中小企業は、まさに国が目指す経済好循環の原動力であり、さらに地方においては雇用の6割を担う地方創生の中核である。わが国経済が持続的に発展するためには、挑戦する中小企業を大胆に後押しすることで、中小企業がそのダイナミズムを存分に発揮することが極めて重要である。中小企業がわが国の経済発展や地域経済の活性化に果たすべき役割を検証し、企業の成長段階や業種などに応じた、きめ細かな支援の一層の強化を図るとともに、生産性向上、競争力強化の観点から、中小企業基本法などの見直しを検討すべきである。

【経済好循環の原動力である中小企業の活力強化を】

今こそ、「デフレからの脱却」という好機を捉え、中小企業の設備投資・技術開発の促進、国内外の販路開拓、人材確保支援を通じて、商品・サービスの高付加価値化、事業の生産性向上に力強く挑戦する中小企業を後押しすることが、経済好循環拡大の鍵である。

【地方創生の中核を担う中小企業の活動基盤の強化を】

国と地方、民間事業者が総力を挙げて、創業や事業承継の加速、地域資源を活用した産業創出、中小企業のイノベーションを後押しする新たな産業集積の促進、小規模企業の経営力強化、効果的・機能的なまちづくり・社会資本整備の推進に取り組む必要がある。

【東日本大震災からの本格復興と福島再生に向けた不断の支援を】

多くの地域で復旧・復興が進展しつつあるものの、その進捗(しんちょく)に差が生じている。福島県では、今なお多くの住民・事業者が避難生活を強いられているほか、深刻な風評被害や住民の健康管理、除染・汚染水処理の問題などに直面している。一刻も早い復興の実現に向け、国は必要な財源を確保し、取り組みを加速すべきである。

【2020年オリンピック・パラリンピック東京大会のレガシー創出に向けた、地方と中小企業の魅力・技術などの世界への発信を】

折しも、2020年には、オリンピック・パラリンピック東京大会の開催を迎える。世界が注目するこの大会を、地方の文化や中小企業の優れた技術などを世界にアピールする絶好の機会と捉え、官民を挙げてそのための準備を万全にすべきである。

【中小企業がわが国の経済発展に果たす役割の検証による中小企業基本法などの見直しを】

中核企業をハブとした地域の産業集積の競争力強化、中小サービス事業者の生産性向上、成長を阻害する「負担増」への対応、地域経済や中小企業への波及効果が大きい中堅企業の成長を後押しする新たな法的措置など、生産性向上、競争力強化の観点から中小企業基本法などの見直しを検討すべきである。

以上の観点を踏まえ、日本商工会議所は、「平成28年度中小企業・地域活性化施策」に関して、下記事項の実現を強く要望する。

Ⅰ 経済好循環の原動力である中小企業の活力強化を

1.高付加価値化・生産性向上に挑戦する中小企業の後押し

(1)中小企業の生産性向上に向けた設備投資・技術開発の促進

(ⅰ)中小企業の技術力を生かした新製品開発の促進

①設備投資、技術開発を促す支援策の拡充

②「SIP」を活用した、中小企業と地方大学との共同研究開発の促進

③大学など研究機関や大企業が有する特許の中小企業への提供促進による新製品開発の支援

④知的財産の取得・維持と戦略的な活用、侵害対策への支援

(ⅱ)中小サービス業における商品の高付加価値化、事業の効率化に向けた支援

①生産性向上に向けたロボットやIT、ビッグデータなどの導入・活用への支援

②サービス産業の生産性向上に向けた諸施策推進

(ⅲ)中小企業の新陳代謝(新分野進出、廃業など)に対する金融機関の積極的な対応の促進

①事業拡大に向けたニューマネーの供給

②官民連携によるリスクマネーの供給

③金融機関の事業再生・経営改善への主体的な取り組みの促進、円滑な廃業に向けた支援

④民間金融機関における「経営者保証ガイドライン」に沿った融資の一層の促進

⑤資金繰りへの万全な対策

⑥自治体の損失補償付制度融資などにおける求償権放棄などに係る対応

⑦信用保証制度の在り方に係る検討

⑧ゆうちょ銀行の預入限度額見直しへの慎重な対応

⑨バーゼル規制など国際的な規制強化への適切な対応

(2)国内外の販路開拓支援の強化

(ⅰ)地域資源や中小企業の優れた技術を活用した製品・サービスの販路開拓支援

①地域資源を活用した製品・サービスの販路開拓支援

②中小企業の優れた技術・製品の販路開拓支援

(ⅱ)海外市場の獲得に向けた販路開拓支援

①海外への販路開拓支援の継続・拡充

②ODAにおける中小企業の活用推進など

③海外日本企業のビジネス環境整備に向けた民間活動への支援の推進

④中小・中堅企業の海外展開に資する、TPPなどの広域経済連携協定の早期締結

⑤知的財産の取得・維持と戦略的な活用、侵害対策への支援[再掲]

(3)中小企業の人材確保とわが国の労働力不足への対応

①中小企業の人材確保への支援

②当面の労働力人口の確保に向けた環境整備と制度の見直し

2.中小企業の収益力向上を妨げるコスト負担の軽減

(1)消費税、原材料価格などの適正・円滑な価格転嫁と中小企業の仕事確保など事業環境整備の推進

①原材料価格などの円滑な価格転嫁を図るための「転嫁対策パッケージ」の一層の推進

②消費税率引き上げに伴う価格転嫁対策の徹底

③中小企業の官公需受注機会の確保と確実な実行・推進

④民法(債権関係)改正法案の早期成立と中小企業への周知の徹底

⑤「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」の普及・推進

⑥経営力向上につながる専門家相談・派遣の拡充

(2)電力コスト、社会保険料負担の軽減など

(ⅰ)電力コストの軽減

①「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の早期抜本的見直し

②安全が確認された原子力発電の順次速やかな運転再開

③中小企業の省エネ支援策の拡充

(ⅱ)社会保険料および税負担の軽減など

①社会保障給付の重点化・効率化の徹底・加速、被用者保険から高齢者医療への過大な拠出金負担の軽減

②国際競争力強化のための法人税率の引き下げ

③外形標準課税の中小企業への適用拡大などは断固反対

④複数税率・インボイスは導入すべきでない

(ⅲ)中小企業のマイナンバー制度などへの円滑かつ適切な対応に向けた支援

(ⅳ)中小企業におけるサイバーセキュリティー対策への支援の強化

Ⅱ 地方創生の中核を担う中小企業の活動基盤の強化を

1.創業や事業承継の加速、地域資源を活用した地域の産業創出

(1)創業、事業承継の加速

(ⅰ)創業支援

①業支援策の安定的・継続的な実施

②創業者向け融資制度の拡充

③創業手続きのワンストップ化の推進

④創業希望者を増やす取り組みへの支援

⑤創業支援施策の成果の検証に向けた開業届・廃業届などのデータの活用

⑥創業時の負担軽減(税、社会保険料)

(ⅱ)事業承継支援

①「事業引継ぎ支援センター」によるM&Aの促進、後継者不在の事業者と創業希望者とのマッチング

②事業承継を契機とした事業の見直し・経営革新の取り組み促進

③金融機関の事業再生への主体的な取り組みの促進、円滑な廃業に向けた支援[再掲]

④自治体の損失補償付制度融資などにおける求償権放棄などに係る対応[再掲]

(2)地域資源を活用した産業の創出

(ⅰ)農林水産資源をはじめとする地域資源の活用促進

①農商工連携・6次産業化などによる農林水産資源の活用促進

②農林水産物など地域資源を活用した商品・サービスの販路開拓支援の拡充[再掲]

③地域団体商標制度に係る料金減免制度などの支援の拡充

(ⅱ)観光産業の育成

①地方公共団体と地域の事業者が一体となって取り組む観光商品開発への支援の拡充

②地方都市におけるインバウンド促進に向けた受け入れ環境の整備など

③観光関連産業の育成・強化に向けた規制緩和など

(ⅲ)地熱やバイオマスなど地域固有のエネルギーを活用した実証発電プロジェクトと関連ビジネスの拡充

(ⅳ)高齢者の地方移住の促進に向けた、地域の介護など生活支援サービスに関する情報の一元的な提供

(ⅴ)多様な主体と連携した地方版総合戦略の策定・実行に向けた後押し

①地方版総合戦略の策定に向けた「RESAS」の拡充

②少子化対策、交流人口拡大に向けた地域の取り組みへの支援

(3)中小企業のイノベーションを後押しする新たな産業集積の促進

①地域の中堅・中小企業グループが連携して取り組む、成長分野への参入事業の支援

②国内の産業集積地と海外の産業集積地との交流・販路開拓への支援の拡充

(4)小規模企業の経営力向上と、商工会議所を中核とした支援体制整備の推進

①小規模企業の経営計画策定・実行支援の充実

②「経営発達支援計画」を実行する商工会議所への予算の拡充

③「小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)」のさらなる拡充

④経営指導員の支援力向上に向けた連携体制の構築

⑤補助金などの支援策へのアクセスにおける公平性の確保

⑥事業者向け補助事業における十分な公募期間の確保

⑦「施策マップ」の活用促進

2.地域中小企業の活動基盤であるまちづくり・社会資本整備の推進

(1)人口減少下での効果的・機能的なまちづくりの推進

①中心市街地における空き地・空き店舗の利活用促進

②まちづくりの中核となる人材の確保・育成と推進機関の機能強化

③まちづくりと一体となった地域公共交通網の形成促進

(2)老朽化・防災対策の推進、観光振興などに資する社会資本の整備

①老朽化・防災対策の推進と、インバウンド促進や国際競争力強化に向けた交通インフラ整備

②「低価格・シンプル・安定的」かつ「人と物の流れを最適化」する高速道路の料金制度の構築

③まちづくりと一体となった地域公共交通網の形成促進[再掲]

Ⅲ 東日本大震災からの本格復興と福島再生に向けた不断の支援を

1.平成28年度以降における復興交付金や復興特区制度などによる十分な支援の継続

2.復興加速の基盤となる生活・産業インフラ整備の着実な実施

3.復旧・復興のステージに応じた中小企業の早期経営再建への支援

①グループ補助金など被災事業者の経営基盤強化に向けた支援

②被災事業者の販路拡大支援

③被災中小企業と産業の復興を担う商工会議所への支援

4.福島再生に向けた取り組みの確実な実施と支援の強化

①除染や風評被害などに関する具体策の確実な実行

②避難者の帰還や地域全体の再生に資する取り組みへの支援

③原子力損害賠償の確実な実施

Ⅳ 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会のレガシー創出に向けた、地方と中小企業の魅力・技術などの世界への発信を

1.東北六魂祭の東京開催など地方文化の海外発信による地方へのインバウンド観光客の誘導

2.義肢装具の制作技術など中小企業の優れた技術・製品の海外への発信

Ⅴ 中小企業がわが国の経済発展に果たす役割の検証による中小企業基本法などの見直しを

中核企業をハブとした企業連携・産学官金連携など地域の産業集積による競争力の強化、中小サービス事業者の生産性向上などの観点から、中小企業基本法などの見直しを検討すべき。