Q 当社は、大手メーカーの系列会社A社(資本金4億円)の委託で電子部品を製造しています。零細企業の当社は、A社との取引で経営を支えていますが、納品から支払いまでの期間が長く困っています。この期間が短縮されれば、資金繰りが楽になると思っていたところ、ある従業員から「下請法で、支払いは2カ月以内に行わなくてはならないはずです」と言われました。A社に交渉してみたいのですが、本当でしょうか。
A A社との取引には下請法が適用されると考えられます。下請法では、下請事業者への支払期限を、給付を受領した日から起算して60日の期間内で定めるよう求めています。法令上の根拠があることを示して、早期の支払いを求めてみてはいかがでしょうか。
適用対象かどうかの見極めが必要
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、独占禁止法の特別法に当たります。建設業法などと相まって、親事業者による下請事業者への優越的地位の濫用を抑止し、取り締まる法律です。
下請法では、親事業者の義務や禁止行為が例示されています。今回従業員が指摘しているのは、下請代金の支払期日を所定の期間内と定めた下請法2条の2の内容です。
この他にも遅延利息の支払いや、買いたたき、購入・利用強制など、幅広い規制があります。契約当事者は、下請法の適用の有無をよく見極めて取引する必要があります。
親事業者と下請事業者の取引が規制対象となる
下請法が適用される取引は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」の4つに分類されます(2条1~6項)。さらに、前記4類型の取引のうち、親事業者と下請事業者間の取引が対象となります。
親事業者・下請事業者に当たるかどうかは、以下の場合分けで決まります(2条7、8項)。
まず、「製造委託」「修理委託」の場合です。資本金が3億円超の法人事業者が、個人または資本金3億円以下の法人事業者に委託するとき、親事業者・下請事業者の関係となります。また、資本金1000万円超3億円以下の法人事業者が、個人または資本金1000万円以下の法人事業者に委託する場合も同様となります。
これに対し、「情報成果物作成委託」「役務提供委託」は、資本金が5000万円超の法人事業者が、個人または資本金規模5000万円以下の法人事業者に委託する場合。また、資本金1000万円超5000万円以下の法人事業者が、個人または資本金規模1000万円以下の法人事業者に委託する場合に親事業者・下請事業者の関係となります。
なお、「トンネル会社規制」(2条9項)と呼ばれるものもあります。これは支配関係のある会社を間に挟み再委託した場合でも、規制に抵触するというもので、注意が必要です。
支払期日は60日以内
今回の事例は「製造委託」であり、A社の資本金が3億円超で、質問者が零細企業です。従って、親事業者と下請事業者間の下請取引に当たります。そうなると、A社の取り扱いは「下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(中略)から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」(2条の2第1項)の規定違反となります。従って、A社に取引条件の改定を求めることは法律上の根拠があります。仮に、A社に法令遵守の意識が乏しかったとしても、A社の親会社が知れば、看過できない状況と判断されるでしょう。
下請法に関して困ったときは、公正取引委員会の企業取引課や下請課、中小企業庁の「下請かけこみ寺」などの窓口も活用できます。当事者同士の交渉で成果が期待できない場合には、行政に相談してもよいでしょう。
(弁護士・軽部 龍太郎)
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