寄付額の約6割税負担が軽減
地方創生に取り組む地方公共団体に対する国の支援策の一環として創設された「企業版ふるさと納税」。2016年にスタートし、各地で活用が広まりつつある本制度を紹介します。
■どのような仕組みなのですか。
「納税」と銘打っていますが、実際には、企業から地方公共団体への寄付に対して講じられる税制措置であり、具体的には、国が認定した地方創生プロジェクトに対し企業が寄付を行った場合に、寄付額の3割を当該企業の法人関係税から控除する仕組みです。これにより、従来からの損金算入による税の軽減効果(寄付額の約3割)と合わせて、寄付額の約6割が軽減されることになります。
ただし、本社のある地方公共団体や、東京都や東京23区などの地方交付税の不交付団体への寄付などは制度の対象外となっています。
■活用事例にはどのようなものがありますか。
航空宇宙産業が集積している岐阜県各務原市においては、次世代の担い手たる技術者の育成・確保が課題となっています。アジア市場の拡大などで景況が明るい同産業の強みを最大限生かすべく、岐阜県とも連携しながら、企業版ふるさと納税を活用して航空宇宙科学博物館をリニューアルし、小中学生、高校生、就業者への切れ目ない人材育成を行うプロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトに対し、航空機を製造する川崎重工業航空宇宙カンパニーなどの企業が寄付を予定しています。
また、基幹産業である農業の衰退が深刻になっていた島根県奥出雲町は、機能性食品として注目され、食用油の原料ともなるエゴマの栽培に乗り出し、現在では全国トップの産地となっています。これに弾みをつけるべく、地域ブランドを確立し、6次産業化につなげることを目的として、企業版ふるさと納税を活用してエゴマ専用の収穫機などの導入や新規の商品開発・販売促進に取り組み始めました。このプロジェクトに対し、油を販売する専門商社のカネダが寄付を決定しています。
このように、自社が展開する事業に関連する地方創生プロジェクトに寄付を行う事例のほか、「会社の創業の地である」「支店や工場を構えている」といった地方公共団体との「縁」をきっかけに寄付を行う事例もあります。
地方創生を企業として支援
■寄付を行うメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
税の軽減効果がこれまでの2倍、寄付額の約6割になることから、実質的な企業負担が約4割まで圧縮されるほか、近時注目されているCSR活動の一環として行っていただくことにより、「社会貢献に積極的に取り組む企業」としてのPR効果が期待できます。また、寄付を通じて、地方公共団体との新たなパートナーシップの構築にもつながります。
■どんなプロジェクトがあるのでしょうか。
現在、地域産業振興、人材育成・確保、移住・定住促進をはじめとして、バラエティに富んだ387もの地方創生プロジェクトが認定されており、内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」(https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html)において、事業分野別、地域別に対象事業を公開しています。10万円という小口の寄付からチャレンジしていただくことが可能ですので、志ある企業の皆さまにおかれましては、ぜひ制度を活用して地方創生の取り組みをご支援いただきますようお願いします。
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