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テーマ別企業事例 〇〇産がブランドになる 「産地名」にこだわるものづくり

事例2 地域の特色を生かした「岐阜シャツ」誕生の狙い

岐阜商工会議所(岐阜県岐阜市)

織田信長の陣羽織がモチーフの通称「ノブ襟」が特徴的な岐阜シャツは、柏屋商事が持つ抗菌防臭性に優れたキトサン加工技術を取り入れ、100回洗ってもその効果が持続する

岐阜市は、東京、大阪とともに日本三大繊維産地と称される「繊維のまち」だ。だが基幹産業である繊維産業にかつての勢いはない。そこで岐阜商工会議所の呼び掛けで地元企業が立ち上がり、「Made in Gifu」の新ブランドを誕生させた。その名も「岐阜シャツ」。常識を覆すアイデアと地元愛で、繊維のまち・岐阜の復権を目指す。

クールビズのシャツで〝繊維のまち〟を再起

年々、日本の夏は過酷になっている。猛暑、酷暑、熱中症のキーワードがちまたを飛び交い、国を挙げてクールビズを提唱して久しい。だが、フォーマルな場にノーネクタイや半袖で出席することを躊躇するサラリーマンは多く、高温多湿な岐阜市も例外ではない。そのような中、軽い、涼しいと話題の「岐阜シャツ」が平成28年6月に誕生した。手掛けたのは26年4月、岐阜商工会議所の呼び掛けで結集した地元企業5社による岐阜シャツのプロジェクトチームだ。

「シャツやジャケットは西洋でつくられたもので、そもそも日本の風土には合いません。クールビズ仕様で、蒸し暑い岐阜でも快適に過ごせるシャツがつくれないかと考えたのが始まりです」とプロジェクトの発起人、岐阜商工会議所常務理事の河尻満さんは語る。

もともと岐阜市は、紡績、織物、染色仕上げ、縫製、小売りなどが半径約10㎞圏内にあり、国内はもとより海外でも珍しい繊維産業の集積地だ。太平洋戦争後、焼け野原だった今のJR岐阜駅を中心に、北満洲(中国北東部)から引き揚げてきた人々が、衣類を売り始めたことに端を発し、「ハルピン街」と呼ばれる繊維問屋街が形成された。昭和24〜28年に問屋街は飛躍的に発展し、日本三大繊維産地と呼ばれるまでに成長した歴史がある。今も岐阜駅の周辺には数多くの問屋がひしめいているが、よく見るとシャッターを下ろす店が多いのが現状だ。

衰退する地場産業のブランド力向上につながる支援事業として、このプロジェクトは始まった。その意義に賛同して名乗りを上げたのが、地元の繊維関連企業の二代目、三代目の〝若手〟経営者だった。

織田信長の陣羽織や美濃和紙を生かす

当初集まった企業は5社で、繊維の総合メーカーであるカワボウ繊維、レディスフォーマルウエアメーカーのラブリークイーン、呉服・寝具問屋の柏屋商事、服飾繊維資材専門商社の吉岡、アパレルメーカーの三敬。ここに岐阜出身の服飾デザイナーの小林隆臣さんがコーディネーター役として加わり、月1回ペースで勉強会が開かれた。

繊維業界は分業制で、川の流れに例えて、糸や繊維を生産する「川上」、製品をつくる「川中」、小売業などを「川下」と呼ぶ。互いに売り手、買い手として連携は取れているが、一緒にものづくりをすることはない。このプロジェクトそのものが異例尽くしだった。

「従来のやり方では立ち行かなくなる。その打開策を求めて参加しました」と柏屋商事の代表取締役、武藤昭成さんが参加動機を語る。小林さんも「岐阜の知名度を上げるブランドをつくりたいという共通の思いで集まったメンバーです」と各社の得意分野や意見を整理し、シャツづくりの方向性を示していったと続ける。

ゼロからのスタートだったが、プロジェクトが動き出した同年に、岐阜の名産品、美濃和紙の中でも一級品の本美濃紙が日本の手すき和紙技術としてユネスコ無形文化遺産に登録された。カワボウ繊維ではすでに美濃和紙を織り込んだ生地を開発していた。さらに岐阜という地名の名付け親である織田信長の服装といえば陣羽織だ。これをモチーフに、ウイングカラーとイタリアンカラーが融合したような縦襟にし、ノーネクタイでもフォーマルな雰囲気が漂い、カジュアルな着こなしも決まる、画期的なデザインを生み出していった。

デザインパターンが決まるまでに1年の月日が流れ、生地づくりだけでも3カ月はかかる。プロトタイプをつくっては試行錯誤を繰り返す岐阜シャツに、28年2月、大きな転機が訪れる。共同展示会「feel NIPPON 春2016」への出展だ。

国内外に岐阜シャツブランドを拡散したい

feel NIPPONとは、各地の商工会議所と会員企業が連携して取り組む「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」(中小企業庁の補助事業)で、日本商工会議所が取り組みを支援するものだ。この一環で出展したことで岐阜シャツの軸足が決まる。

「美濃和紙100%と、ポリエステル50%、美濃和紙50%のコストを抑えたシャツをつくっていたんです。どちらが人気だったと思いますか? 断トツで100%の方です。美濃和紙100%の生地づくりは非常に難しく、リスクも生地のロスも高いため、コストも跳ね上がります。チーム内では50%の方が現実的だと読んでいたんですが、この結果で美濃和紙100%に舵を切りました」(小林さん)

同年4月にはクラウドファンディングサイト「Makuake」で美濃和紙100%の岐阜シャツを限定100着、目標金額100万円で販売する。すると、わずか2日で目標金額に達し、3日で完売、総額227万5000円となった。その後もシャツの柄や色のバリエーションを増やし、「岐阜ポロ」というポロシャツも開発する。さらにスピンオフとして参画企業の柏屋商事のオリジナルブランドである岐阜シャツの和装タイプも発売した。

29年1月にはイタリアを視察し、海外への販路を模索中だ。海外でつくって国内で売るアパレル産業とは真逆の発想で、ブランド展開に挑む。

「陣羽織や美濃和紙を単なるキーワードとしてシャツに取り入れたのではありません。清流、長良川の川湊として提灯や団扇などの紙製品の製造が盛んであり、さらにさかのぼれば織田信長による楽市楽座で自由な商取引が行われた地です。関西、関東の結節点だったからこそ、戦後、地域が一丸となって繊維産業の集積地にもなり得ました。各社の強みを生かした大同団結で発展した地域性を岐阜シャツに込め、またこれをきっかけに地域復興を図れたらと思います」と河尻さん。岐阜シャツのブランドストーリーは、まだ序章にすぎない。

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