事例2 日本のおいしいきびだんごを世界の方々に食べてほしい
廣榮堂(岡山県岡山市)
お土産では珍しいハラル対応にチャレンジ
安政3(1856)年に創業し、岡山名物「元祖きびだんご」で有名な老舗の菓子店廣榮堂。同社は平成26年12月、きびだんごなど、主力8商品に対してハラル認証を取得した。いくつかハラル認証機関がある中で、同社はドバイへの和牛輸出などで実績がある宗教法人日本イスラーム文化センター(本部=東京)から認証を受けたという。
きっかけは昨年9月、岡山県中小企業団体中央会から、「東南アジアイスラム文化市場対応商品開発支援事業」への案内を受け、参加したことから、早速取得しようと社内数人で動き出した。 「例えば、梅肉と書いてあるけれど、『これは豚肉ではないのか』と言われたりもします。イスラム圏の人からすると日本語表記には独自のものがあり、判別が難しいわけです。ハラル認証を取得し、マークがあれば、そういうことを気にせず食べてもらえる。来日されるムスリムの方に、安心しておいしいきびだんごを召し上がっていただける機会が増えればと考えました」(伊東さん)
スタッフの意識を同じ方向に向けることが大切
ハラル認証を取得するには「原材料の安全性を証明する」「つくる工程をハラルの基準にする」「人材育成」の三つを実施する必要があった。「ハラル認証は、宗教的な禁止事項だけではなく衛生面、品質面でも安全なものでなければいけない。そこをクリアにするための作業からスタートさせました」と伊東さんは振り返る。
「まずは原材料です。もともときびだんごは江戸末期の植物性の食べ物。使用しているのは、きび、もち米、黒糖など植物由来のものばかり。ですから原材料には、特に問題はありませんでした」
次は「つくる工程」だ。認証機関の担当者が製造ラインに審査に訪れ、清潔で安心できるシステムであることを確認。問題なくクリアできたという。
「新規の設備投資が必要なかったのは幸いでした」
最後に「人材育成」。これが廣榮堂として最も力を入れた施策だ。いったん完全に工場をストップさせ、製造スタッフと営業担当者を集めて研修を実施した。そこでは「なぜ、何のために、廣榮堂がハラル認証を取得するのか」から始まり、イスラム文化やイスラム教徒について研修を行った。
「イスラムといっても何かわからないという印象を持つ従業員もいたと思います。でも、研修後、偏見を持たないことの大切さが分かったと言ってくれました。スタッフの意識を同じ方向に向けることも認証取得には大切なことだと思います」
ハラル認証を取得した商品にはマークを貼り、分かりやすくしている。導入して間もないので、まだどの程度の効果があるかは定かでない。しかし、「日本伝統のお菓子を世界へアピールし、発信する好材料になることには間違いない」と確信している。
会社データ
団体名:株式会社廣榮堂
住所:岡山県岡山市中区藤原60番地
電話:086-271-0001(代)
代表者:武田 浩一 代表取締役社長
創業:安政3(1856)年
従業員:140人
※月刊石垣2015年4月号に掲載された記事です。
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