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テーマ別企業事例 東日本大震災から7年 今、手を携えて販路拡大へ

事例4 地域連携で販路を開 伴走型支援のノウハウを結集した「伊達な商談会」が高い成約率を上げる

仙台商工会議所

個別型商談会ではサプライヤー(左手前)の隣にコーディネーターが座り、商談をサポートする

東北の復興が少しずつ進み、被災地の生産者・食品メーカーの生産が軌道に乗るようになると、仙台商工会議所には販路回復・開拓に関する相談が多く寄せられるようになった。その声に応える支援策が平成25年度から始まった「伊達な商談会」だ。中小企業支援部部長の佐藤充昭さんに、商談会の経緯と成果、解決すべき課題などを聞いた。

専属コーディネーターが商談成立まで売り手に伴走

「震災直後から職員たちは会員事業所の支援に奔走しました」と佐藤さんは振り返る。安否確認に始まり、経営や資金繰り、雇用の相談、グループ補助金制度(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)の活用など「やれることはすべてやりました」。その中でも特に東北六県商工会議所連合会(事務局は仙台商工会議所)が運営主体となり、被災した事業所に対し遊休工作機械などを無償で提供する「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」は3266件もの大きな成果を上げた。

全国の商工会議所会員事業所からの温かい支援を受けて、事業が再開するにつれ、「新たな声が聞こえてきました」。それは失った販路の回復と開拓に力を貸してほしいというものだった。

「そこでまず行ったのは仙台商工会議所内に復興支援専門の部署を設置して、販路開拓のネットワークを持つ地元百貨店や専門商社のOB3人を専門コーディネーターとして常駐メンバーに加えた体制づくりでした。その上で、全国の商工会議所のネットワークを活用し、百貨店・スーパー・卸商社・通販などのバイヤーを招き、『伊達な商談会』をスタートしました」

商談会開催前には成約率を高めるべくコーディネーターが双方のニーズを把握して商談に臨む。商談は大きく分けて「個別型」「バスツアー型」「集団型」の3タイプがあり、バイヤーの種別やサプライヤーの状況に合わせて選択する。「個別型」は仙台商工会議所内で定期的に月に2、3回程度行っている事前予約制の商談会。「バスツアー型」は複数のバイヤーを直接被災地へ招き、復興状況の視察や展示・商談を並用して行う。「集団型」は同じカテゴリーの複数のバイヤーが展示ブースを設置して商品をPRする展示商談会形式だ。

当日に成約が決まらず継続案件となったものの多くは、バイヤーから「改善課題」が示されるので、コーディネーターが第三者の目で改善点を明確にし、サプライヤーにアドバイスする。サプライヤーが商談の場で十分アピールできなかったことをコーディネーターからバイヤーに伝えることもある。

このようにコーディネーターは事前、当日、事後に手厚いフォローをしながら、バイヤーに魅力的な商品をサプライヤーと一緒につくり上げていく。さらにサプライヤーが商品の特性をきちんと伝え、納得のいく条件で契約できるよう、「販路開拓塾」という講習会も開催し、商談スキルを磨く場としている。 その成果を28年度のケースで見てみよう。3タイプ合計の商談件数と成約額は1218件、6億114万1000円。4年間の平均成約率は21・8%と、一般的な展示商談会の平均5%を大きく上回る。

商談会でのノウハウを全国の商工会議所に提供したい

佐藤さんは伊達な商談会を「商工会議所らしい事業」と捉えている。「私たち職員とコーディネーターとがサプライヤーと一緒に課題を探り解決策を見つけるという商工会議所らしい伴走型の支援が実現できました。商談会参加の経験を重ねることで、明らかにサプライヤーさんの商品力・プレゼン力が上がり、自信を持って商談に臨んでいると感じます」。その上で今後は「東北は魅力ある水産物や農産物などが豊富にある“食の宝庫”ですので、伊達な商談会は『こうした東北の素晴らしい商品と出合える場ですよ!』と国内や海外へ継続してPRし、風評被害対策についても東北一丸となって根気よく取り組んでいきたいと考えています」と言う。

一方で、東北のサプライヤーが力をつけるにつれて、次に取り組むべき課題も浮き彫りになった。佐藤さんは次の3点を挙げる。

①人口減少・流出、人手不足など社会的構造の問題がある中、サプライヤーの人材確保・育成による営業力やIT力の底上げが必要。

②昨今のサンマ・イカ・サケなどの記録的不漁により、原材料や船の燃料が高騰し、水産加工業者の収益を圧迫。これらに対する適正な価格転嫁や量目変更、新たな主力商品開発などへの対応が求められる。

③社会の流通スキームが大きく変化し、雑貨や衣類などは若い人を中心に店舗からネットでの購入へシフトしている。生鮮食品までも通販サイトで購入するなど小売店への影響が懸念される。その動きに対応した販路開拓と商品開発の進め方。

佐藤さんは今後も伴走型の支援を続けていく中で解決策を見つけたいと考えている。「販路開拓に特効薬はなく、正解もひとつだけではない。いろいろな事を走りながらやり続けることが大切」と力を込めた。さらには、「伊達な商談会を通じて仙台商工会議所が蓄積したノウハウを、“仙台方式商談会”として東北はもちろん全国の商工会議所にも提供していきたい」という。

それが、やがて会員事業所の商品開発力・販路開拓力の底上げになると信じているからだ。

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