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テーマ別企業事例 東日本大震災から7年 今、手を携えて販路拡大へ

事例5 地域連携で販路を開く 地産地消のアイデアスイーツで6次産業化を推進

あきた食彩プロデュース(秋田県秋田市)

青々として香りが強く、枝豆本来の味わいを持つ「あきた香り五葉」

秋田県は減反対策の一環で枝豆の栽培を奨励してきた。それを活用して6次産業化を進めるべく、設立されたのがあきた食彩プロデュースだ。地域が誇る食材でスイーツを開発し、新たな秋田土産として県内の要所で販売する一方、仙台商工会議所が展開する「伊達な商談会」への参加を通じて、県外への販路拡大にも力を注いでいる。

“出荷量日本一”の枝豆を加工品としても活用

「ドラジェ」とは何かご存じだろうか。ヨーロッパで婚礼、出産、洗礼など慶事の際に配られる糖衣菓子のことで、アーモンドを砂糖でコーティングしたものが一般的だ。そのアーモンドを枝豆に置き換え、チョコレートでコーティングした「青豆のドラジェ」が今人気を集め、新たな秋田土産として認知されつつある。

同商品を開発・販売しているのは、あきた食彩プロデュースだ。平成24年に地元金融機関の北都銀行が6次産業化支援を目的に設立した会社で、農業を通じて地域を元気にする事業を展開している。

「かつて県内の農家は、稲作だけで十分生活が成り立っていました。ところが近年では、農家の高齢化や後継者不足、減反などの影響で活気が失われつつあります。それに危機感を抱いた県が、米に代わる作物として農家に枝豆の栽培を奨励したんです」と同社営業部長の渡部裕康(ゆうこう)さんはそもそもの発端を振り返る。

その結果、枝豆の生産量は年々増加し、東京都中央卸売市場への出荷量日本一を達成するまでになる。しかし一方では、枝豆は足が早いため、遠方への出荷コストがかさむことや、生食用ではさやに3粒入ったA品しか引き取ってもらえず、それ以外は廃棄せざるを得ないなどの問題が浮上。加工品としての活用を見出すことが急務だった。

「農業の6次化が盛んに言われますが、農家はつくるので精いっぱい。たとえ商品開発に意欲があっても、ノウハウがありません。ならばそれをお手伝いしましょうというのが当社なんです」

「おいしくてかわいい!」秋田土産として認知

枝豆を使った加工品を開発するに当たり、当時の開発担当者は野菜スイーツで知られるパティシエの柿沢安耶氏に相談した。すると「枝豆を使ったスイーツにしたら?」とアドバイスされる。

「アーモンドを枝豆に変えてドラジェにしたら、意外にハマるんじゃないかと言うんです。そこで人気の茶豆にチョコレートをコーティングしてみると、これがおいしくない。ほかの品種をひと通り試したところ、『あきた香り五葉』ならチョコの味に負けず、絶妙な味わいになることが分かりました」

あきた香り五葉は在来種を品種改良したもので、豆が青々として香りが強いのが特徴だ。早速商品化し、25年3月に「青豆のドラジェ」の名で発売すると、新しい味と見た目のかわいさが受けて瞬く間に完売してしまう。すぐに増産したかったが、青豆は病気に弱く、晩生で収穫が稲刈りの時期と重なるため、当時は生産量が少なかった。そこで同社は、栽培した青豆を全て買い取ることにして生産農家を増やすと同時に、回転釜などを購入し、全て県内で製造できる体制を整えていった。

「チョコレート菓子なので、バレンタインデーからホワイトデーまでの期間が最も売れますが、秋田土産として定着させたいという県のバックアップもあり、JR東日本系列の土産物店や秋田空港のショップなどで扱ってもらえるようになりました。おかげで年末年始など帰省時期の売れ行きも良く、特に若い女性から支持を集めています」

そうした人気を受け、28年には全日空国内線の機内販売に採用され、9300個が完売。翌29年には1万2000個が売り切れ、着実に認知度を上げている。

「伊達な商談会」参加で県外への販路を開拓

県内では一定の売り場を獲得したものの、県外への展開は未開拓だった。実は発売当初に仙台や盛岡にある百貨店から引き合いはあったが、商品数が少ないため対応できず、そのままになっていたのだ。ちょうどそのころ、「伊達な商談会」の存在を知る。東日本大震災以降、失った販路の回復と開拓を目的に、仙台商工会議所が展開している復興支援事業だ。震災後の風評被害もあり、商工会議所の会員企業であれば、仙台への出張費用などの補助が出ると知り参加したところ、東北各地に拠点を置く百貨店や小売り・流通会社に商品を紹介する機会を得る。その後も継続的に参加し、県外への新たな販路を獲得していった。

「伊達な商談会に参加して強く感じたのは、どんどん情報発信しなければいけないということでした。秋田の商品情報は仙台にさえ届いていません。他県のバイヤーからすれば、もっと知りたいと思っているのに、どうも秋田の会社は自社商品の売り込みなどに消極的なようです」

もし、情報発信の方法が分からないなら、「ぜひ私を利用してほしい」と渡部さんは言う。同社は社名にもある通り、商品を開発して売る会社ではなく、商品の売り方をプロデュースするのが本業だ。

「『青豆のドラジェ』のおかげで、商品開発や売れる仕組みについて多くの経験を積むことができました。そのノウハウや販路を使って、秋田に新たな商品が誕生し、広く知られるようになれば、地域の活性化につながります。それこそが当社の役割だと思っています」

会社データ

社名:株式会社あきた食彩プロデュース

所在地:秋田県秋田市中通5-1-51

電話:018-836-4931

HP:http://www.assp.co.jp/

代表者:阿部博昭 代表取締役

従業員:27人

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