Q 介護問題を抱える社員から、「介護のため勤務時間を短くしてほしい」「残業を免除してほしい」旨の申し出がありました。会社は対象社員の勤務時間を短縮し、残業を免除しなければならないのでしょうか。
A 「育児・介護休業法」が平成29年1月1日より改正されたことに伴い、会社は「介護のための所定労働時間の短縮措置等」について、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上利用を認める必要があります。また、あわせて今回の改正で「介護のための所定外労働の制限(残業の免除)」が新設されたため、会社は社員が希望した場合には対象家族1人につき介護が終了するまで、残業の免除を行う必要があります。
日常的な介護ニーズへの対応を目指して
介護離職を防止する目的で、介護が必要な家族を抱える労働者が、介護休業や柔軟な働き方ができる制度をさまざまに組み合わせ、介護サービスなどを十分に利用できるよう「育児・介護休業法」が改正されました(平成29年1月1日施行)。今回の改正により、介護休業の分割取得が可能となり、介護休暇の取得単位の柔軟化や、介護のための所定労働時間の短縮措置等の拡充、介護のための所定外労働の免除制度の新設などが行われます。
所定労働時間の短縮措置等について(選択的措置義務)
会社は、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者に対し、対象家族1人につき、次のいずれかの措置を選択して講じなければなりません。
①所定労働時間の短縮措置
②フレックスタイム制度
③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
しかし、必ず「①所定労働時間の短縮措置」を行わなければならない訳ではなく、①~④いずれか一つの措置を行えば問題ありません。これらの選択的措置は、改正前は介護休業と通算して93日の範囲内での取得が可能でしたが、改正後は対象家族1人につき介護休業とは別に、利用開始日から3年の間で2回以上利用できる措置としなければならなくなりました。
なお、制度利用開始日から3年の間において2回以上の利用が可能な措置であれば、1回に申し出できる期間の上限(1回につき最大1年間までなど)は設定しても問題ありません。また、改正前に選択的措置を利用したことがある労働者については、改正前の利用状況にかかわらず改正後に初めて制度の利用を開始する日を起算日として計算します。
所定外労働の制限(残業の免除)について
改正前まで「育児・介護休業法」に介護のための残業の免除に関する規定はありませんでしたが、改正後は対象家族1人につき、介護終了まで利用できる制度として新設されました。
なお、労働基準法41条2号の管理監督者に該当しない管理職は、介護のための所定外労働免除の対象となりますが、該当する管理職は労働時間に関する規定が適用除外のため、所定外労働免除の対象にはなりません。
(社会保険労務士・吉川 直子)
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