Q 「コーポレートガバナンス・コード」の概要と株主総会への影響について、教えてください。
A 実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、基本原則、原則および補充原則の多重構造で構成されています。
株主総会への影響は、①権利行使にかかる適切な環境整備、②招集通知における情報の適確提供の工夫と早期発送、電子的公表、③総会開催日の適切な設定、招集通知の英訳、信託銀行との協議についての検討の必要性が挙げられます。また、情報開示の充実が求められていることも、広い意味で株主総会へ影響を与えるものといえるでしょう。
コーポレートガバナンス・コードの意義
東京証券取引所(以下「東証」といいます)および金融庁は、有識者会議にて議論を重ね、平成27年3月に「コーポレートガバナンス・コード原案」を確定・公表しました。
本コードでは「コーポレートガバナンス」について「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」と明記されています。
また、「コーポレートガバナンス・コード」とは「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるもの」と考えられるとも明記されています。もっとも、コーポレートガバナンス・コードは、厳格な法規範ではなく、いわゆるソフトローに属する規範です。
なお、コーポレートガバナンス・コードは、わが国の証券取引所に上場する会社を適用対象とするものです。この策定を受け、東証では、必要な制度整備が行われ、27年6月から適用されています。すなわち東証において、上場会社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則について『Comply or Explain』(実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)が求められることとなりました。
そして、実施しない場合の理由の説明は、コーポレート・ガバナンス報告書に記載するものとされました。初年度においては、27年6月1日以後最初に開催する定時株主総会の日から6カ月を経過する日までに報告書に反映させて提出するものとされました。
なお、マザーズまたはJASDAQの上場会社に対するコーポレートガバナンス・コードの適用に当たっては、基本原則のいずれかを実施しない場合に、その理由を説明するものとされています。第一部または第二部の上場会社と比較して一定の考慮がなされています。
株主総会への影響
基本原則1を受けた原則1‐2では、「株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を行うべき」とされています。そして、その補充原則により、招集通知における情報の適確提供の工夫、招集通知の早期発送、TDnetや自社のウェブサイトによる電子的公表について検討の必要性があります。また、株主総会開催日の適切な設定、招集通知の英訳、信託銀行との協議についても検討の必要性があるといえるでしょう。
また、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされていること(原則4-8)、監査役には財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべきであるとされていること(原則4-11)、経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続などの情報開示の充実が求められていること(原則3-1)も、広い意味で株主総会へ影響を与える事項といえますので、会社はこれらについて対応する必要があるといえます。 (弁護士・早川 篤志)
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