Q 当社は毎年、この時期になると、インフルエンザなどに感染する社員が増えるのですが、いったん流行し始めると短期間で一気に周囲に感染し、業務にも影響することがあります。社員がインフルエンザなどに感染した場合の対応について、会社はどのような点に注意すればよいでしょうか?
A まず、予防策として予防接種の促進があります。次に、インフルエンザに感染した社員が出てしまった場合、該当社員を自宅待機とするには、労働基準法や安全衛生法の定めに制限がないため、就業規則などでの定めが必要となります。特に、自宅待機期間の賃金の取り扱いについては、トラブルになりやすいので、あらかじめきちんと定めておきましょう。
会社ができる予防対策
冬はウイルスが活発になる季節です。毎年、インフルエンザやノロウイルスなどが流行します。
事前に会社ができる予防措置としては、正社員を中心に、予防接種を促進することです。最近では、希望する社員全員に対し、会社が費用の全額を負担しているケースも増えていますし、費用の一部を補助することで、予防接種を促すケースもあります。
その他にも、うがい・手洗い用の消毒液を社内に配置している会社も多く見られます。まずは、自社で実施可能な順に予防対策を見直してみましょう。
感染した社員への対応
インフルエンザは法定感染症です。主な感染ルートは、「飛沫感染」と「接触感染」です。一般的に、インフルエンザの発症前後の3~7日間はウイルスを排出するといわれており、その期間中は、外出を控える必要があります。
少なくとも、感染が確認されてからおおむね5日間(学校保健安全法の規定を参考に算出)は、該当社員に自宅で待機してもらいましょう。
「仕事への責任」から、無理に出社してしまう社員もいるかもしれませんが、感染を周囲に拡大させてしまう恐れがあります。
また、排出期間の長さには個人差があるので、一般的なウイルス排出期間が過ぎても、せきやくしゃみなどの症状が続いている間は、不織布製マスクをするなど周囲への配慮が必要です。
社員の家族が感染した場合には、たとえ社員本人に感染の自覚がなくとも、マスクの着用を推奨しましょう。
自宅待機期間中の賃金の扱い
自宅待機期間の賃金の取り扱いですが、法定感染症の場合、就業規則などで「特別休暇」「疾病休暇」などの取り決めをあらかじめ行うべきです。万一、行っていないようであれば、次の順番で検討されることを提案します。
①特別休暇とする
②休業補償をする
③本人の申し出により、②休業補償か有給休暇の使用のいずれかとする
③は、②休業補償が平均賃金の6割であるのに対し、年次有給休暇が、平均賃金または所定労働時間を働いた場合に支払われる通常の賃金を支給するため、社員としては有給処理の方が有利になる場合を指します。
自宅待機期間中の賃金取り扱いについては、トラブルになりやすいため、あらかじめ自社の就業規則などで運用方法をきちんと定めておきましょう。 (社会保険労務士 土屋 留美)
インフルエンザを「広げない」ようにするための4つの心得
①ワクチン接種から、抗体ができるまで2週間ほどかかるため、早めの接種を社員に勧める。
②会社の入退室の際にはウイルス対策のアルコール消毒剤、うがい薬を用意し、手洗いとともに習慣づける。
③家族がインフルエンザに感染した社員には、発熱などしていなくても、マスクの着用を呼び掛ける。
④担当業務を休めない人ほど、感染していなくとも人混みの中では、マスクを着用するよう呼び掛ける。
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