FTAの使い漏れを解消
TPP発効に向け、企業はどう備えたらよいか。本稿では短期的な影響の大きい「関税」分野に関し、企業が取り組むべき3つのアクションについて説明する。
一つ目は、「FTA(自由貿易協定)使い漏れ」の解消。FTAにより、締結国間の輸出入において、通常より低い関税率が適用できる。
これを使い漏れている例が、ほぼ全ての企業で見られ、TPP発効によりさらに拡大することが懸念される。主要拠点間の取引だけで年間数千万円、中には年間1億円以上の使い漏れも見つかっている。
日々、生産現場では、数円、数銭単位で、血のにじむようなコスト削減を積み重ねている。一方で、「FTAの使い漏れ」は、そのような努力を吹き飛ばしてしまう。この使い漏れを一刻も早く解消することが必要である。
再構築が必要な サプライチェーン
次は、「サプライチェーンの最適化」。今や企業活動は日本国内にとどまらず、世界各国に広がっている。FTA、さらにTPPによる関税障壁の緩和などにより、この動きは一段と加速する。例えば、TPPにより、マレーシアや日本製の部材を、メキシコで組み立ててアメリカに輸出するという数カ国にまたがるサプライチェーンも競争力を持ってくる。
人件費や輸送費、リードタイムだけでなく、FTAによる関税率の変化や、取引先のサプライチェーン変更も加味し、調達ルートや生産拠点の配置を検討する必要がある。逆に、FTAの分析なしには、コスト面のブレが大きく、投資計画の立案もままならない。
転ばぬ先のコンプラ対応
最後3つ目は、税関当局からの検認に備えたコンプライアンス(法令順守)対応である。
TPPでは、企業自らが輸入品の原産性を証明する「自己証明制度」が導入され、手続きコストや時間が短縮される。一方、当局からは厳しく検認がなされる。また、累積原産地規制適用のため、取引先から、製造原価や部品表などの情報を、整備・提供することが求められる。
これらコンプラ対応の失敗による被害は甚大である。対応不備により、当局から数千万円、数億円規模の追徴課税が課される。また、取引先との取引停止にもつながりかねない。企業としては、リスク面にも目を向け、対応策を講じる必要がある。
自社でどのアクションに注力すべきなのか。診断チェックリストの12の質問で確認し、確実な備えを講じてほしい。TPPへの備えは、どの企業においても必要なものである。
(西村健吾・デロイトトーマツ コンサルティング マネジャー)
=おわり
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