今月は、国の伝統的工芸品にも指定されているヘラブナ釣り専用の竹竿「紀州へら竿」をご紹介します。
昭和初期、大阪の竿職人・竿五郎(さおごろう)氏のもとで修業した、師光(しこう)氏と源竿師(げんかんしし)氏が、その技術を和歌山の橋本に持ち帰りました。これが紀州へら竿の元祖になったとされています。現在では橋本市でつくられるへら竿が、全国シェアの約90%を占めています。
紀州へら竿は三種類の竹で構成されています。最も太い部分は矢竹(やたけ)、次に高野竹(こうやちく)、そこから先のよくしなる細い部分には真竹(まだけ)を使用。それぞれの特徴を見極めて組み合わせることで、竹の反発力を最大限に生かした、機能的で美しい竿がつくられます。
竿本来の魅力に加え、漆(うるし)を塗り、ときには蒔絵(まきえ)を施して完成する芸術品ともいえる紀州へら竿は、ヘラブナ釣り愛好家にとって憧れの逸品。しかし、幼いころから竿職人になることを目指していた紀州製竿組合の名竿職人・東峰(とうほう)氏は、あくまで釣り道具として、機能性を高める努力を続けています。
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