二条大橋から東へ三筋目。知らないと通り過ぎてしまいそうな小さな漬物店は、朝から次々と訪れる客で活気に満ちている――。
ナスを細かく刻んだしば漬けの「あじしば」、キュウリ、ミョウガ、ショウガ、ナスに昆布を加えた「みより漬」などなど。40~50種類の自家製漬物がずらりと並ぶ。
「先代が創業時から自社畑で菜の花を育て、花が咲く前のつぼみを浅漬けにした〝菜の花漬け〟を考案。リヤカーに積んで、ぎをん街や木屋町などの花街に売りに行ったそうです」と話すのは、二代目の加藤孝造社長。その鮮やかな黄色とシャキシャキした食感の「ちりめん菜の花漬」が、旦那衆などの間で話題になり、昭和35(1960)年、『暮らしの手帖』に掲載され、広く知られるようになったという。
薄味でありながらも内に含んだ塩味、醗酵(はっこう)の酸味、野菜の甘みや苦味などが至極自然に立ち上ってくる漬物は、星の数ほどある京漬物の店のなかでも唯一無二。支店も委託販売もなし。まれに百貨店のイベントに出店することもあるが、あとは通販か店に行って買うしかない。ああ、また味を思い出し、無性に食べたくなってきた。
Data
社名:株式会社加藤順漬物店
住所:京都府京都市左京区二条大橋東入る大文字町165-2
電話:075-771-2302
Information
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