日本商工会議所は11月16日「事業承継税制の抜本拡充推進大会」を都内で開催した。大会には、全国の商工会議所から会頭・副会頭ら約350人が参加。事業5年間継続後の納税免除制度を実現することなどを求める決議文を採択し、来賓として出席した自由民主党の宮沢洋一税制調査会長と城内実経済産業部会長に手交した。日商の三村明夫会頭は、「今年は商工会議所の要望を実現する大きなチャンス。中小企業の総意である事業承継税制の抜本的見直しの実現にぜひとも尽力いただきたい」と述べた。
日本の中小企業数は、経営者の高齢化と後継者難などによる廃業で、この5年間で40万者減少していることに加え、間もなく団塊世代の経営者30万人が70歳を迎える「大事業承継時代」に突入する。一方、企業努力により成長するほど、中小企業の自社株評価は上昇し、自社株を引き継ぐ後継者に重い相続税負担が発生し、経営の大きな足かせになっている。
決議文では、「このまま事態を放置すれば、価値ある事業が失われ、わが国経済の基盤であり、大きな強みとなっている中小企業の衰退を招きかねない」と強調。「今こそ、円滑な事業承継によって、後継者が事業の発展に注力できるよう、諸外国並みの事業承継税制の実現に向け、抜本的な拡充が必要」としている。具体的には、事業5年間継続後の納税免除制度の実現、深刻な人手不足を踏まえた雇用維持要件の撤廃、対象株式総数3分の2制限の撤廃、代表者・筆頭株主要件などの撤廃を求めている
三村会頭は開会のあいさつで、「商工会議所としても、長年、政府・与党へ抜本的見直しを求めてきたところ、少しずつ改善されてはいるが、わが国の事業承継税制は、依然として、諸外国に比べて、大きく劣後している」と指摘。近年の中小企業減少の主な要因が経営者の高齢化、後継者難などによる廃業である点に触れ、「廃業した企業の半数は黒字であり、その中には、わが国の将来に貢献できる素晴らしい企業があったに違いない。また、事業承継で代替わりした企業の方が、IT化など経営革新に取り組み、高い収益率を上げているといったデータが示すとおり、価値ある事業が次世代に引き継がれることで、中小企業が活力を取り戻し、わが国の成長に大きく貢献することは間違いない」と事業承継税制の抜本的見直しの必要性を訴えた。
臨席した自民党の宮沢会長は「事業承継は待ったなし。しっかり議論して、希望に沿えるような結果を出したい」、城内部会長は「抜本拡充に向け、職責を懸けて頑張りたい」と応じた。
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