現在、経済産業省は、太陽光などの再生可能エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度(固定価格買い取り制度(FIT))の終了を検討しているという。
2011年3月の東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生し、国内の電力供給は混乱した。この事故は、原子力発電のリスクと社会・環境への影響を抑えた持続的なエネルギー源を確保することの重要性をわが国に突き付けた。
12年、政府はFITを導入した。制度のポイントは、一定期間、事業者が発電した電気を固定価格で売ることができることだ。通常、市場の〝価格メカニズム〟に基づいて需要と供給が均衡する。資本主義経済において、状況の変化にかかわらず価格が一定ということは基本的に無理があるが、FITは発電事業者に対して固定価格を保証した。事業者に求められるのは、期間損益を計算した上で、収益を確実に得られる事業規模を実現することだ。その条件を満たせば、実際に太陽光パネルを設置して発電を行い、固定価格で売電することで安定的に利得を得ることが期待できる。
具体的には、固定価格制度の下で各電力会社は、太陽光発電などの事業者から電気を買う。電力会社は家庭や企業に、その電気を売る。電気使用者は電力料金と合わせてサーチャージ(再生可能エネルギー発電促進賦課金)を電力会社に支払う。これを原資に電力会社は太陽光発電などの事業者に決められた料金を支払う。重要なことは、国民の負担によってFITが運営されてきたことだ。12年のスタート時点の太陽光発電の買い取り価格は40円+税金(1キロワット時当たり、調達期間は20年)と設定された。それにより、わが国では太陽光発電が急速に増加した。資源エネルギー庁の報告によると、12年以降の設備容量の年平均伸び率は26%に達し、特に、事業用(非住宅用)太陽光発電が急増した。環境エネルギー政策研究所が公表した『自然エネルギー白書 2017』によると、太陽光発電全体に占める事業用のシェアは、12年半ば時点で10%を下回っていたが、16年度末には全体の80%近くまで膨張した。この資源配分はゆがんでいると言わざるを得ない。基本的に電力の需要は経済成長に連動する。経済成長率が低迷しているわが国で、このような太陽光発電の増加は行き過ぎだ。ある地方では、空き地などにびっしりと太陽光パネルが敷き詰められた光景が出現し始めた。特に、まとまった面積を確保しやすいとの理由から、かなりの事業用太陽光発電施設が北海道と九州に偏っている。こうした地域では、基本的に人口が減少しており、電力需要は低下傾向にある一方で、電気の供給能力は需要の2倍程度もあるといわれている。過剰な供給能力は、FITが生み出した“ゆがみ”の顕著な例だ。FIT導入は、結果的に一部の事業者の利得確保につながりはしたが、経済全体にプラスの価値をもたらしたとは言えないだろう。
政府は価格メカニズムによる効率的な資源配分を目指すべきだ。民間事業者は、資本コストを上回る期待収益率を確保しなければならない。新しい発想の導入やコスト低減への取り組みなどを通して、競合相手よりも有利な価格で財やサービスを顧客に提供し利得を得ようとする。政府は、こうした価格メカニズムに対する意識を活用することにより、民間事業者の創意工夫やチャレンジを引き出し、より効率的かつ持続可能な経済資源の配分を目指すことができるはずだ。その上で、民間事業者に過度なリスクが及ばないよう、部分的に価格の維持制度などを導入すればよい。太陽光発電への参入急増の結果、メンテナンス不備による安全面への懸念や、景観の悪化などの問題も表面化している。加えて40年ごろには、太陽光パネルの廃棄問題も深刻化する恐れがある。そうした課題を解決するためにも、政府は価格メカニズムに基づいた民間事業者の競争を促し、持続可能な再生エネルギーの活用を目指すべきだ。
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