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テーマ別企業事例 事業継承待ったなし! M&Aか? 後継者マッチングか?

事例3 「オール川崎」が連携し、事業承継をバックアップ

川崎商工会議所(神奈川県川崎市)

東京湾沿いに広がる川崎の工場夜景は、定期的に観光ツアーが開催される川崎市の人気スポット

2017年9月、川崎商工会議所と川崎信用金庫が中小企業支援強化や経済活性化を目的に、包括連携協定を結んだ。同所が金融機関との間で包括協定を結んだのは、これが初めてで、その3カ月後には川崎市、川崎市産業振興財団とも連携協定を締結。〝オール川崎〟で、市内の中小企業の事業承継を全力でサポートしている。

モノづくりのまち川崎の根幹をテコ入れ

150万人都市に名を連ねる川崎市は、人口増加率が高い。特に若い世代の転入が多く、工業地帯よりベッドタウンとしてのイメージの方が強い。深刻だった公害を官民一体となって克服し、情報サービス業と学術・開発研究機関で働く人の割合が1・64%(2014年の経済センサス基礎調査)と政令指定都市の中で断トツの高さになるなど、研究開発都市へと生まれ変わりつつある。

一方、川崎は製造業が盛んなまちとしての歴史がある。製造品出荷額は大都市の中ではトップクラスで、生産力の高さがうかがえるが、製造業の事業所の減少は歯止めが利かない現状がある。建設業、製造業の中小企業経営者の多くが70歳を超え、長寿企業としての歴史に幕を閉じる企業も少なくない。

「川崎の今の主要産業は、不動産業や賃貸業に変わっています。信用金庫の融資に占める製造業の割合は1割にも満たない状況です」

そう説明してくれたのは、川崎商工会議所中小企業振興部長の中野雅之さんだ。川崎信用金庫(かわしん)から二十数年ぶりの出向者として昨年4月に着任し、同所とかわしんの包括連携協定に向けて奔走したキーパーソンである。

「中小企業支援という共通の目的を持ちながら、信用金庫の役員、職員、そして私自身も商工会議所が何をしているところか全く知りませんでした。10年ほど前に信用金庫で事業承継の支援事業を立ち上げたのですが、うまく軌道に乗らなかった経緯があります。その時に商工会議所と連携していれば結果は違っていたかもしれません」と苦笑する。

昨年1月、同所の山田長満会頭が成長戦略の一環として「KAWASAKI事業承継市場」の設置を年頭あいさつで掲げたことで、事業承継を支援する動きが同所の中で活発化していった。

「中小企業を応援したい」気持ちを一つに4者が連携

「KAWASAKI事業承継市場」(事業承継市場)の創設に向け、中心的な役割を担った中野さんは、かわしんとの包括連携協定に向けて行動に出る。かわしんの役員に商工会議所の取り組みを伝え、信用金庫側の支援窓口である「お客さまサポート部」の協力を得るなどして、協定締結にこぎ着けた。

「出向して分かったのは、商工会議所はありとあらゆる事業者とつながっており、すさまじいマッチング力があることです。商工会議所の情報収集力とネットワークを生かせば、信用金庫にとって顧客サービスの向上につながります。一方の商工会議所は、信用金庫の300人以上はいる営業担当が持つ情報を共有でき、会員増強も図れます。両者が連携すれば、事業承継に悩んでいる企業、諦めている企業を迅速かつ的確にサポートすることができるようになるのです」

そして昨年9月29日に両者の包括連携協力に関する協定書を締結する。同所が金融機関と包括連携協定を結ぶのは初めてで、さらに川崎市と川崎市産業振興財団にも働きかけ、約3カ月後の12月12日には4者による「中小企業者の事業承継支援に関する協定」が実現した。かわしんと連携して行う取り組みは主に五つで、①創業、新規事業展開、経営革新などの支援、②企業間連携支援、③事業承継支援、④海外ビジネス展開支援、⑤事業者支援に関する同行訪問を含む相互協力。現在、国を挙げて事業承継支援ネットワークを構築中だが、川崎市はいち早く「川崎版」を築いたことになる。

小規模企業存続の一隅を照らす

事業承継市場として、最初に実施したのが事業承継に関するアンケートだ。回答率は低かったというものの、集計結果から見えてきたのは、後継者の不在や、後継者がいても継がせる気がないという状況で、やむを得ず廃業を選択する企業が多いことだった。

そこで2018年5月に事業承継市場主催で「事業承継キックオフセミナー」と題した無料セミナーを開催すると、定員100人に対し150人の応募が殺到するほど好評を博した。続いて6月より事業承継支援の専門家を講師に招いて全4回の「KAWASAKI事業承継塾」を開講したところ、こちらも大盛況だった。

「同塾は経営者、後継者、支援者の3者がそろっていることを条件としています。経営者と後継者に分かれて互いの考え方の違いを〝見える化〟するグループワークを行ったり、経営者と後継者が一緒に事業承継計画を作成したり、事業承継に関する具体的な知識やノウハウを参加型かつ実践形式で伝え、将来の経営革新を考える機会を提供しています」と中野さん。同塾は、今後も年2回ペースで開催予定だ。

さらに、10月には&Biz(15頁参照)との連携協定をいち早く結び、廃業を阻止する手段としてのM&Aで、従業員数人程度の小規模な企業の存続にも道を照らしている。

「事業承継市場は、税理士や民間M&A仲介会社などの外部支援機関とも連携し、事業承継の啓発活動だけではなく、経営者の相談に乗れる承継アドバイザーの養成にも力を入れていきます」

市場の名が示す通り、あらゆる悩みの解決策がそろう。そんな体制が着々と整いつつあるようだ。

会社データ

名前:川崎商工会議所

所在地:神奈川県川崎市川崎区駅前本町11-2

電話:044-211-4114

HP:http://www.kawasaki-cci.or.jp/

※月刊石垣2018年11月号に掲載された記事です。

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